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フィオーネの本気!①

4月16日 午前8時43分更新



〜午後18時40分 第6区画 噴水広場〜


待ち合わせ時間より早く着いたな。店は噴水広場から徒歩で数分の距離だ。


…タバコを吸って時間を潰す。


流石の俺も今日は気を遣い、地球で着てもそれなりに違和感がない服を着ている。


現代風の代物もちゃんと売ってるのだ。


パルキゲニアは和洋折衷のファンタジーって感じ。


「…ん?」


「ごめん!待った?」


「もー!おそーい!」


「どっか飯食いに行こうぜ」


「今日も居酒屋って言ったら怒るわよ」


「……」


「おい!」


周りを見るとカップルが増えてきた。


仲睦まじい幸せオーラを撒き散らしてやがる…公共の場でイチャイチャしやがってからに…!


〜10分後〜


「ーー悠さん」


フィオーネの声だ。


「お待たせしました。支度に手間取ってしまいまして…」


「……」


「どうかされました?」


振り向き言葉を失う。


先ず目に飛び込んだのは肩に羽織ったカーディガンと揺れるミニスカートだ。


すらりと伸びた足を覆う黒タイツが艶めかしい。


化粧もいつもと違う。


可愛いピンクの口紅で濡らした唇…薄く赤い頬紅チーク…アイシャドーで涼やかさを演出した目元…どれもフィオーネの魅力を二割…いや四割は増させていた。


美人なのは重々承知していたが驚いた…いやマジで!


「はぁー」


感嘆の溜め息が口から漏れる。


「頑張ってお洒落したのですがもしかして…変ですか?」


「ち、違う違う!」


全力で否定する。


「普段も綺麗だが…今日はより綺麗で…その…びっくりしたんだ」


「ふふ!…悠さんったら…照れちゃいますよ」


両手を合わせ含み笑う。


見慣れた仕草がやけに色っぽい。


さっきから口の中がやけに乾くし頰が熱いな。


……まさか緊張してんのか?


「…うわー…」


「『金翼の若獅子』のギルドガールの子…だよな?」


「すっげー美人…」


周囲の男性諸君もフィオーネに見惚れていた。


隣の彼女の膨れっ面に気付け!


…っと店に行かなきゃな。


「じゃあ行こうか」


「はい」


「…あの…フィオーネさん?」


「何か?」


極自然に腕を絡めてきやがった!


「お店までエスコートしてくれますよね?」


この上目遣いの破壊力よ。断れるわけないやん。


「…おー」


「ふふふ」


周りの注目を浴びつつマカロニに向かった。


…こんな美人と腕を組んで歩くんだ。


優越感に浸るのも仕方ないよな!



〜二等級認定レストラン マカロニ〜



店内にいる客は少ないが廃れてる訳じゃない。


マカロニは完全予約制の創作料理店なのだ。


店内にある意味不明の彫刻や絵画が高級っぽい雰囲気を醸し出している。ギャルソンのサービスも非常に良い。さっきなんてコース料理を頼んだシェフを紹介されたもん。


…値段がそれなりに高い理由にも納得。



〜夜19時10分 マカロニ 店内〜



飲み物を手に互いにグラスを合わせる。


「乾杯」


「乾杯です」


一口啜る。


「…結構甘いな」


「ふふ」


白糖イチゴって果物を発酵させ蒸留したワイン。


薄赤い液体がグラスで揺れる。


「いい雰囲気ですね…」


「そうだな」


()()()()()しちゃいます」


熱っぽい眼差しを俺に向ける。


「期待かぁー。料理は美味いって評判らしいが」


「…そっちの期待じゃありません!」


フィオーネが頰を膨らませる。


「はは!折角の美人さんがむくれちゃ台無しだ」


「うー…またそう無自覚に……悠さんはずるいです」


運ばれた料理と酒に舌鼓を打ち会話を楽しんだ。


〜30分後〜


「お待たせしました。…こちら女王海老のノワゼットソース〜小悪魔風〜になります」


小難しい名前だなおい。


「!」


「おぉ」


「美味しい…」


口に広がる海老の旨味と食感。


…たぶん甲殻類を漉してソースに使ってるな。甲殻類は旨味成分の宝庫って話を聴いた事がある。果物の酸味で上手に味のバランスを整えてるっぽい。


料理をするよーになって舌が肥えたなぁ。


「悠さん」


「ん?」


「…その…地球では恋人がいらしたのですか?」


唐突な質問だ。


「いなかったよ」


見栄を張りたくても張れない悲しみ。


「そうですか」


なぜに笑った…憐み…憐みなのか!?


…はっ!いかんいかん。


30歳で独り身だと被害妄想が激しくなるぜ。


「フィオーネは?モテるだろ」


「一度も男性とお付き合いした経験はありません」


「…え?」


「え」


「男共の目が腐ってたのか?」


「く、腐ってはないと思いますが」


少し困り気味に笑う。


「…えっと…熱烈な告白を受けた経験は何度かあります」


ですよねー!


「アルバートもそうだったもんな」


「…嫌な言い方になってしまいますが私に好意を寄せる方々はあからさまな態度や物言いで迫ったり…周囲の迷惑を顧みない男性ばかりで…きっと私のスキルの影響もあるのでしょう」


「フィオーネのスキル?」


「はい。母は『白狐』と呼ばれる純血種の種族出身で……白狐の血筋を汲む女の子は異性を虜にする魅了(チャーム)のスキルが生まれ付き発現するんです」


「ふむふむ」


「悠さんにはお話しますが…私のスキル『魅惑容姿パフューム』は文字通り私の容姿に魅惑された異性の好意を増幅させます。…強制力のあるスキルではありませんが……告白されても素直に喜べない理由はそれです」


「……成る程なぁ」


女性として非常に恵まれた容姿のフィオーネならスキルの効果が発揮しまくりだろう。


「そんな私を心配して父は『トーデイン女学校』に入学させました」


フィオーネのお父さんの気持ちが分かる。…大事な娘に言い寄る男は許せないよな!


「良いお父さんじゃん」


「過保護すぎてちょっと困っちゃいますが……女学校を卒業したらギルドガールになると言った時は物凄い剣幕で怒られましたよ」


「よく許してくれたな」


「母が父を説得し『金翼の若獅子』か『八尾エイト・テイル』…何方かの冒険者ギルドの受付嬢なら許可すると…」


「『八尾』?」


「父がGMを務める冒険者ギルドです」


「え!フィオーネのお父さんって冒険者!?」


「…実はそうなんです。隠してる訳ではないですが」


驚いた。


「そんな経緯があって私は『金翼の若獅子』を選択肢し今に至ります」


「なんっつーか…まぁ…」


「父はゴウラ様と親友だそうで…『娘に近付く男は全員殺せ』…なんて馬鹿な事もお願いしたそうです…ゴウラ様は笑って無視してたと母が言ってましたが」


娘に近付く男…俺が一番やばいやんけ!


「私がギルドガールになりたかった理由は母に憧れたから…幼い頃から冒険者に寄り添う姿を間近で見て育った影響です」


「そうか」


フィオーネはグラスを傾け一気にワインを飲む。


「…もう少し先に言うつもりでしたが…」


「?」


「この流れで私から悠さんにお願いがあります」


「うん」


真剣な表情で真っ直ぐに見詰める。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が強く成るのが早過ぎの感じは有りますが、大変楽しく読ませて頂きました。 付き神の設定にも他との違いが見えて素晴らしい作品と思います。
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