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忙しくも楽しい毎日を謳歌しよう!⑮

4月15日 午前8時更新


〜午前9時 金翼の若獅子 8階 GM執務室〜


頼まれた伝言と依頼達成をラウラに報告した。


「…テオムダルに行って二日足らずで戻って来るって…あの白蛇の移動能力は凄いんだね」


「まあな」


実は更に凄い事になってるのだけど黙っておこう。


「饕餮の討伐協力は助かったよ。指定危殆種は並の冒険者じゃ太刀打ちできないし」


「気にすんなって。俺で良けりゃいつでも依頼してくれて構わない」


「ふふふ!頼もしいよ」


無所属の強みってやつな!


「…でも困ったな」


ラウラが呟く。


「困った?」


「いやね…カネミツの代役を探す時間がなくてさ」


「あー」


んー…仕方ないか。


「俺でいいなら代役をしよっか?」


「え、本当?」


「おう」


「…確かに悠の実力なら全く問題ない…メンバーにも良い経験になる…うん!お願いしようかな」


「何をしたら良いんだ?」


「仕事の内容は『金翼の若獅子』に所属するギルドメンバーの武芸指導さ」


「…武芸指導?」


「そうだよ」


ラウラが微笑み頷いた。



〜午前9時30分 金翼の若獅子 演習場〜



「ーー諸君…大変残念なお知らせだ」


「……」


「本日予定していたカネミツ様の『対人剣術訓練』は諸事情により中止となった」


「………」


「しかし!…ラウラ様が代役としてS級ランク最強と誉れ高いクロナガ様を臨時講師として御招きして下さったのだ!!」


『おおおーー!』


「全員拍手!」


割れんばかりの拍手に胃が痛い…じゃなかった…耳が痛い。


金翼の若獅子に所属するC〜BBランクのギルドメンバー50人が俺を見ている。


その中の最前列には…。


「ユウさーん!」


「まさかのユーさんが臨時講師ってヤバくね?」


「俺たちも運がいいな」


砦の守護者ボッツ・メアリー・ラッシュもいた。


簡単に引き受けちまった自分が恨めしいぜ…。


…ラウラの説明によると金翼の若獅子では定期的にBBBランク以上の所属登録者がC〜BBランクの所属登録者を対象に戦闘技術・座学の講習を行っている。


特にランカーや十三翼の講習は人気があって人数制限が設けられるそうだ。


語る機会が無かったが異世界パルキゲニアに義務教育という制度は存在しない。学校自体は存るものの通えるのはほんの一握り……富裕層や権力者の子供が対象だってキャロルは言ってた。


ちなみにフィオーネは有名な女学校出身のお嬢様…あの育ちの良さを考えれば当然か。…ともあれ学ぶ場を提供するって試みは素晴らしいと思う。


「クロナガ様!講習内容の説明とご挨拶をお願いします」


「…はい」


司会進行を務めるハイテンションなお姉さんは金翼の若獅子のギルド職員で名前はファジー。


ギルドのイベントの企画運営を担当してる。


ガロさんと同じ()()()()だ。


「カネミツさんの代役で臨時講師を務める事になった黒永悠です」


期待の眼差しを向ける冒険者たち。


「あー…」


次の言葉が続かない。


特別なことは何も教えられないしどーしよう…。


考えろ俺…考えろ考えろ考えろ考え…あ!


「…急に稽古ってのもあれだし…質問形式で戦闘に関する質問や悩みがあれば答えれる範囲で答えるよ…?」


情けない講師だよなぁ。


自分で言ってて哀しく……うぉ!?


「はーい!はい!」


「ユーさん!オレ!オレ!」


「ちょっとあんた!手を下げなさいよ!?」


「お前が引っ込めろ!」


予想外の挙手率だった。


…授業参観で無闇に手を挙げる小学生かよ!俺に授業参観に来てくれる親は居なかったけど…。


「えーっと…じゃあ眼鏡の君…名前は?」


「ボクの名前はエレンです!種族はホビットでーー」


指名しつつ質問に答えていくのであった。



〜1時間30分後 金翼の若獅子 ギルド広場〜



「疲れた……」


ベンチに座り空を仰ぐ。


慣れない講師の真似事で精神的疲労が半端ねー…。


「お疲れさま!」


「…おぉ…メアリーか」


「大盛況でしたね」


「ユーさんって教官とか向いてんじゃね?」


馴染みの三人の登場だ。


「…無理」


「…そ〜かな?質問に丁寧に的確に答えてくれたってみんな喜んでたよ」


「ファジーのねーちゃんなんて正式に講師を頼めないか『灰獅子』に打診するって息巻いてたぜ」


絶対に阻止せねば…!


「三人は今から依頼か?」


「そーだよー…もう朝から晩まで依頼でクタクタ〜」


「最近は『砦の守護者(オレら)』を指名してくれる依頼者が増えてんだ!」


「主に輸送依頼ですが嬉しい限りです」


「おぉ!」


頑張ってるみたいじゃないか。


「……()()()()のために級飛ばしでA()()()()()()を狙ってるし頑張らなきゃね」


メアリーが俺を見て呟く。


「Aランク昇格?」


「あっ」


「おまっ…バカ!」


「は、ははは!」


何故か慌てるラッシュと笑って誤魔化すボッツ。


「…あんまり無理はするなよ」


もしもの時は直ぐに助けに行くつもりだけど。


「頑張ってる三人に餞別だ。俺が作ったポーションをやるよ」


竜印のマキシマムポーション×5と超特製エックスポーション×5を渡した。


「…やべぇ…『オーランド道具店』で一本55万Gで売られてる最高級ポーションが10本も…」


「55万G!?」


ラッシュの一言に俺も驚いたわ。


法外な値段で売ってんだなレイミーさん…。


「生産者なのに知らねーの?」


「…うん」


「ユウさんが作ったポーションは高値でも即日完売の人気商品なんだよ!」


「流石にこのポーションを無料で貰うわけには…」


「いいんだって。黙って貰っとけ…な?」


渋るボッツを窘める。


お礼を言って三人は依頼へと向かった。


…俺も帰って少し休むか。


ーーーーーーーーーーーーーー

冒険者ギルド

ランク:S

ギルド:なし

ランカー:なし

GP:16800

クエスト達成数:56

ーーーーーーーーーーーーーー


家に帰ると皆が待ち構えていた。


それぞれにテオムダルのお土産を渡す。


アイヴィーにはテオムダルの歴史を綴った本…アルマは湖獣エッティーの燻製肉…オルティナはリクエスト通り湖海鼠の干物…キューにはエッティーのぬいぐるみだ。


…いつか家族全員で旅行に行きたいな。


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― 新着の感想 ―
[一言] できればキャラクターイラストとその紹介を見たいです
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