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忙しくも楽しい毎日を謳歌しよう!⑫

4月9日 午後23時53分更新


焦土を駆け粉塵を抜けた。


ーー…!


MPを消費し撃ち続ける無数の弾丸は饕餮の防御()を破りダメージを負わせる。


ーー…ぐっ…が…!?


…怯んだ!この隙は絶対に逃さない。


持ち手を握り直し跳躍した。


「おおぉっーーー!!」


雄叫びと同時に大鎌の刃を饕餮に目掛け縦に振り下ろす。


風圧で再び土煙が舞い俺と饕餮を包む。


ーー…………。


「………」


激しさの後の静寂。次第に土煙は晴れていく。


血走った饕餮の眼が俺を凝視していた。


刃に付着した赤い血を払う。



ーー…()()()()()()()()()



小さく唸り饕餮はその場に力なく伏せた。


鮮血が地面に止め処なく流れていく。


……内臓まで達した深い斬傷は致命傷だろう。


不死耐性で傷が治ると言っても万能ではない。


瞬時に癒えるわけじゃないからだ。


流血した血は再生しないし況してLv2じゃ…。


饕餮は荒い呼吸を繰り返す。


……一思いに楽にしてやらなきゃ。


金剛鞘の大太刀に持ち替え首に剣を当てがった。


ーー……頼み…がっ…ある…。


「…言ってみろ」


ーー……我が骸は…妻との()()()()()()()()()っ……。


「……」


ーー……埋め…てくれ…。


死を悟りプライドも捨てて頼む最期の願い、か…。


「分かった」


ーー…この奥に……。


「約束する」


その言葉を聞いて饕餮は安堵したのか瞼を閉じる。


穏やかな貌だった。


ーー……そ…うか……。


剣を振り上げる。


「…あの世で家族と仲良くしろよ」


そう言って饕餮の首を撥ねた。


噴水の様に血飛沫が流れる。


辺りから澱んだ空気が霧散していくのが分かった。


この森は饕餮の影響で魔窟化してたのかも知れない。


……言葉が解る俺には考えさせられる闘いだったな。


不意にマリーさんの言葉を思い出した。


「命の価値は単純じゃない」


…精一杯、生きよう。


殺したモンスターは無駄死にじゃない。俺の血となり肉となり(経験値)となるのだから。


「ーーうっし!」


頰を叩きセンチメンタルな気分を取っ払う。


〜クエストを達成しました〜


「……お?」


ーーーLv1→Lv2へLevel upーーー

・戦闘数値・非戦闘数値が上昇しました。

・戦闘技『剣者の理』を習得しました。

・戦闘技『獣狩りの技法→忿怒荒神流』に変わりました。

・呪術『神樂蛇→真神樂蛇』に変わりました。

・神魔との親密度が上がりました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:黒永悠

性別:男

種族:人間

称号:約定の破壊者

職業:禍災の契約者 Lv2


戦闘パラメーター

HP380000 MP20500

筋力14000 魔力3000 狂気18000

体力6490 敏捷10000 信仰-9999

技術10000 精神3000 神秘7500


非戦闘パラメーター

錬金:180 鍛冶:200

生産:150 飼育:140


・耐性

狂気の極み

不朽の極み

聖奪の極み

不死耐性(Lv5)

神秘耐性(Lv Max)


・戦闘技

忿怒荒神流←

剣者の理←

簒奪技


・奇跡

骸の呼声

蛇縄絡

逆誄歌


・呪術

禁呪・真神樂蛇←

禁呪・淵嚼蛇

禁法・縛烬葬

禍面・蛇憑卸


加護:アザーの加護 夜刀神の加護

神魔:祟り神のミコト(親密度120%)


・固有スキル

鋼の探求心

鍛治師の心

閉心

兇劍

顕魔

魔人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦闘技

忿怒荒神流ふんぬこうがみりゅう

数多の深淵の獣を斬殺した封印されし女神の戦闘術。

②剣者の理

発動すると物理攻撃力が上昇し防御力と魔法攻撃力が減少する。


呪術

①禁呪・真神樂蛇まかぐらおろち

契約した祟り神の力。血とMPを代償に真の力を解き放った三匹の妖美なる白蛇を召喚。術者との円滑な意思疎通が可能になった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次々と表示されるメッセージウィンドウ。


「…上がるまで長かったなぁ」


レベルアップは修行以来だ。


戦闘数値バトルパラメーターが飛躍的に上昇してる。…戦闘技も変わり忿怒荒神流…新たに剣者の理を習得っと。


うん!ヨハネとの喧嘩(依頼)を前にいい感じだ。


……でも禁呪・真神樂蛇の真の力を解放がちょっと分からないな。意思疎通が容易くなったみたいだが…?


「おいおい確かめるとすっか」


先ずは亡骸を埋めなきゃ…この奥って言ってたっけ。


首と胴体を淵嚼蛇で掴み奥へ進んだ。



〜午前7時10分 祓われた森 最深部〜



「ふぅ」


額に伝う汗を拭う。饕餮の亡骸を地面に埋めた。


「………」


盛り上がった土に野花を添え拝む。


「ここなら穏やかに眠れるな」


鳥が囀り小川で水浴びをしている。


優しく差し込む陽射しが温かい。


素敵な場所だ。


先程の激闘の余波で破壊されずに済んで良かった。


……これで依頼は完了っと。


これでこの街道も平和になるはずだ。


「ふぁ〜」


欠伸を噛み締める。


…寝てないしちょっと疲れたな。


テオムダルに戻って少し休も……ん?


大きな樹洞の中に光る物を見つけた。


うろに溜まった葉を掻き出し探ってみる。


「これは…」


見つけたのは綺麗な銀の指輪だった。


リングの裏面には()()が……?


「!」


大事に懐に仕舞う。


……これはベルカに持って帰らなきゃいかん。



〜午前8時19分 テオムダル 南城門〜



「ーー戻って来たぞ!」


「む」


城門前に大勢の門兵と市民が詰め掛け集まっていた。


その中からゲンノスケと門弟達が歩み寄る。


「戻られたか」


「おー」


「凄まじい爆音が鳴り身を案じていたが……ふっ」


そこまで言って笑う。


「姿を見るに杞憂だったらしい」


「まあ…中々の強敵だったよ」


結果を見れば無傷の完勝だが魔法が直撃してれば只じゃ済まなかっただろう。


「…ま、誠に一人で…饕餮を討伐したのか…?」


今度は門弟の一人が問う。


「嘘だ…私たちが総出で敵わなかったのに…」


スズは信じられないって顔で俺を見ている。


「討伐したっつーの!」


「死骸は?」


「それは…こっちの事情で埋めさせて貰ったけど」


「…ふむ」


ゲンノスケは追求しないが市民や門兵も含め皆が半信半疑な眼差しで俺を見ていた。


……面白くない!


「…済まぬがギルドカードをお貸し頂けるか?ログを見れば皆も納得するゆえ」


「分かった」


ギルドカードを渡す。…っつーか専用魔導具も無いのに記録って見れるのか?


「スズよ」


「…はい。開示オープ


受け取ったスズが一言唱えるとカードが光る。


「えぇーー!?」


思わず叫んでしまう。


無数の画像とメッセージウィンドウが空中に広がったからだ。


「ユウ殿はオープを見るのは初か?」


「う、うん…」


「ギルドカードは認識魔導具マギ・プロセスで記録を閲覧し詳細まで確認する方法と簡易的に場面と記録を視る方法がある」


「マジか」


全然、知らなかった…。


「ただ解錠魔法キーレス・スペルの特殊魔法が必要だ。…スズは『金翼の若獅子』でも数少ない使い手の一人よ」


凄いじゃんこの子。


ギルドカードにはデジタルカメラみたいな機能が搭載されてんだな〜。


「… あった…こ、これは…!!」


スクリーンに映すように空中で一枚の画像が大きく展開された。


饕餮の首を切断した直後の血溜まりに佇む俺の姿だった。


…こーして見るとかなりグロい絵面だな…。


大きな歓声と悲鳴が湧く。


「す、すっげぇーー!!」


「ぶったまげた!あのバケモンを…一人で……!」


「…うぷっ…気分が悪くなってきたわ…」


「『辺境の英雄』の噂は本当だったのね…」


「魔物を震わす修羅の化身…血を踏み立つ姿は…正に『阿修羅』だ…」


口々に称賛と恐れを口にする民衆。


割合的に7:3で怖がってる人が多い気が…?


「強いと知っていたつもりが甘く考えていた…」


「ああ…『金獅子』様と競られたとの師父の言葉に…偽りは無かったのか…」


「…指定危殆種を単独討伐なんて…S級を超越してる…」


門弟の俺を見る目が会った時と違う。


敵意は失せ尊敬と畏怖の眼差しを向けていた。


ちょっとは見直してくれたみたいだ。


「だから言ったであろう」


ゲンノスケは自信満々に頷く。


「…おぉぉ…!」


初老の亜人の男性が目に涙を浮かべ近付いてきた。


「ありがとう…ありがとう…!!」


「え、あ、はい」


礼を言われた後、訳もわからず手を握られ戸惑う。


「其の御仁はテオムダル市長マキタ・リンドー殿だ」


見兼ねたゲンノスケが紹介してくれた。


この人が市長か。


「…あの悪魔に私は家族を奪われたっ…!」


「……」


「……一年前に『霄太刀』様が…片割れを倒してくれましたが…あのモンスターが生きてると思うと…一人娘を殺された悲しみで…夜も眠れなかった……」


「…お気持ちはお察しします」


「妻は娘を失い…心労で病に倒れ先立ち…市民は無残に殺され……絶望に打ち拉がれておりましたが…貴方様のお陰で…亡くなった妻と娘も…皆も…報われるでしょうっ!」


大粒の涙が俺の手を濡らす。


「…貴方は英雄だ…!」


徐々に拍手が広がり喝采へ変わる。


…でも素直に喜べなかった。


誤魔化すように話題を変える。


「本当の英雄はあっちですよ」


ゲンノスケと門弟を指差す。


「…ユウ殿?」


「俺は止めを刺しただけで…昼夜問わず闘い続けた彼等のお陰で倒せたんです」


嘘じゃない。


ゲンノスケ達の防衛があってこそ饕餮の進行が遅れ討伐に成功したのだ。


…倒すことよりも守ることの方がずっと難しい。


「礼ならあっちに言ってください」


市民の視線が俺からそっちに移る。


「……ユウ殿!それは違っ」


「ありがとねぇ…ありがとねぇ…」


「ご、御老人」


老婆が拝むように手を合わせ礼を言う。


「ありがとー!!」


「…最近は変な噂を聞いてたが…やっぱり『金翼の若獅子』はミトゥルーの誇りだぜ」


「『霄太刀』の『刀衆』にばんざーい!!」


「ばんざーい!」


「今日は最高の日ね〜…うふふ!お店に来たらサービスしちゃうわよぉ」


市民に囲まれ戸惑うゲンノスケと門弟達。


少し離れた位置で暫しその光景を眺めていた。


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