忙しくも楽しい毎日を謳歌しよう!⑨
4月6日 午後12時41分更新
〜深夜3時40分 ワーガー街道〜
ベルカ出発から約3時間後。
未明の時間帯に目的地付近に到着した。
「あれがテオムダルだな」
街道の先にぽつぽつと都市の灯りが見える。
城を中心に城下町を城壁が覆う。規模はベルカより劣るが大きな都市だ。
街道は正門に続いてるみたい。
「ここで大丈夫。ありがとな」
三匹を労い頭を撫でる。名残惜しそうに消えた。
「…帰りに美味い飯でも食わせてやろうか」
モンスターの丸焼きとか!
そのまま街道沿いを進み正門に向かった。
〜テオムダル 正門〜
「ーー止まれ!!」
槍を携えた門兵が立ちはだかる。
「こんな時間帯に入都とは何者だ」
「旅人か?」
ぞろぞろと警備兵が集まり始めた。
「俺は」
「…旅人なら悪いことは言わん。引き返せ」
「違っ」
「『宝都』に行きたいのだろうが…しかし現在、テオムダルは指定危殆種のモンスターの危機に晒され宝都に続くワーガー南街道は閉鎖中だ。……討伐が完了するまで行けん」
話を最後まで聞いてぇ!
「…宝都に行きたい訳じゃない。俺が用があるのはその指定危殆種のモンスターさ」
「……なに?」
「『金翼の若獅子』の連中が何人か討伐に来てるだろ?」
「…あ、ああ…かの有名な『霄太刀』の部下が討伐に乗り出してるが…」
「俺はカネミツさんに依頼され駆除の助太刀に来たんだよ」
「…Sランクを筆頭にハイランクの冒険者達の助太刀って……君は何者なんだ?」
「俺は黒永悠。彼等と同じ冒険者さ」
「!!」
その場に居た兵が皆、驚く。
「…君が…ベルカで噂の契約者…?」
門兵の一人が訊ねる。顔が強張っていた。
「どんな噂か知らないけどそーだよ」
「…風の便りでは…鬼神が如き従魔を従え禍々しい蛇を操ると…」
まぁ的外れって訳じゃないな。
「『金獅子』に喧嘩を売るほど命知らずの戦闘狂…その実力が『金獅子』に認められ…次代の最強國家戦力と評されている…」
…んー?
「……どんな魔物もその姿を見れば震えあがり装束は血で黝く染まった…魔物の骸の山を背に立つ姿は正に修羅の化身…」
別にモンスターの血で染まってないし!
これはモーガンさんに貰った自慢の一張羅だし!
「…もっと化け物みてぇーな男を想像してた」
「バカ!よーく見ろよ…飢えた獣でもああまで凶暴な貌にはなんねーだろ?」
「た、確かに…身が竦むよーな鋭い眼光…」
普通に眠いだけだしぃ!
「うぉっほん」
俺はわざと大きく咳払いした。
「…兎に角、だ。分かって頂けたみたいだし中に入れて貰えるか?」
「…全員、持ち場に戻れ!」
一人の号令に集まった門兵達が引き上げて行く。
「騒がしくてすまなかった」
「いえ」
「…色々と初対面で失礼だったが…なんせ指定危殆種の討伐なぞ我々の手に余る急時で混乱してきてね。…心強い助っ人の来訪を歓迎するよ」
「先に来ている冒険者は?」
「市長が用意した宿で休んでる。案内しよう」
門を潜り城下町に入った。
〜テオムダル 城下町〜
城を中心に中世ヨーロッパ風の建造物が目立つ。
朝も早いし人もまばらだ。
ベルカとはまた違った雰囲気がある。
「テオムダルに冒険者ギルドはなく我々は市に雇われた民兵なんだ」
「へぇ」
「…ベルカと宝都…そして浮遊都市へ続く道の中継都市として機能している。陸路の物流にテオムダルは避けて通れないので運送業者・旅人・傭兵などに重宝されてるのさ」
中継都市って言う割には立派だ。
城もあるし。
「三都市の冒険者ギルド・騎士団と協定を結んでいるが相手が悪過ぎた。…武力に乏しいテオムダル警備隊では危険なモンスターに抗う術はない。…今月だけで数十人以上の市民と旅人が犠牲になってる」
「…ふむ」
「『霄太刀』の活躍で退けたあのモンスターがこうもテオムダルに執着するとは……」
そう呟く彼の横顔は暗い。
「自分の縄張りとでも思ってるのかも」
「だとしたら迷惑な話だよ。流れ者の凶悪な指定危殆種が居つくなんて……宝都との物流は途絶えベルカ北街道は舗装中…このままじゃ都市が機能しない」
「…なるほど」
「一年前はもっと大勢の人が犠牲になった。その中には市長の一人娘も含まれてる」
「……」
「…凄惨な悲劇を繰り返さない為にも…どうか宜しく頼むよ」
悲痛な願いだった。
「任せて下さい」
自信満々に答える。
「おぉ…!」
これが俺本来のスタイル…いや、するべき事なのだ。
弱きを助け悪を挫く。
モンスター退治にいざ行かん……ってな!
そうこう話している内に件の宿屋へ辿り着いた。
「ケドールの湖亭……此処に彼等は滞在中だ。テオムダルで一番の宿屋だよ」
一番というだけあって煉瓦建築の良さげな宿屋だ。
「…名前をまだ言ってなかったな。俺はテオムダル警備隊北城門の警備隊長ウヌバだ」
「ありがとうウヌバ」
礼を言って中に入った。
〜早朝4時15分 ケードルの湖亭〜
「お」
袴姿の冒険者がロビーに集まっている。
カネミツさんの門弟達だろう。
大小問わず怪我を負っている。…血が滲む包帯が痛々しい。
その中心にいるのは『風切鋏』ことゲンノスケ。
俺と同じSランクの冒険者だ。
「おーい」
「ーーしてからに陣形を分け…むっ!」
ゲンノスケの話を遮って悪いが声を掛ける。
全員がこちらに注目した。
「…実技試験以来だな」
唇の端を吊り上げ彼は笑う。
「お久しぶりです」
「此奴っ…よくもゲンノスケ様の前に……!」
華奢なポニーテールの女の子が刀を構えた。
犬人族の亜人なのか犬耳と尻尾が逆立つ。
……このパターンは鉄騎隊の時と同じだなぁ。他の連中も良く思ってないのが伝わって来る。
「スズ」
「……」
諌められ刀を仕舞う。
「ユウ殿」
俺に歩み寄る。
「…其方が此処に居る理由は凡そ予想が着く。助力を願った我らに師が手筈したと御見受けするが?」
「その通りだ」
『!?』
「なっ…なんでっ……よりによって…此奴に…」
「…ゲンノスケ殿を散々に痛めつけた憎き男だぞ」
「師父は何をお考えか…!」
むっちゃ嫌われてるやん。
「暫し黙れ。失礼であろうぞ」
騒ぐ門弟に厳しく言い放つ。
「俺は気にしてませんよ。…あ、そうそう」
ポケットから手紙を取り出した。
「カネミツさんから手紙を預かってます」
「御拝見させて頂こう」




