忙しくも楽しい毎日を謳歌しよう!⑤
3月26日 午前7時18分更新
〜ミコーの研究室〜
「こ、これは」
強い薬品と油の臭いが鼻を刺す。
…本・実験器具・半壊した機械・魔導具……様々な物で部屋が溢れ乱雑としている。
ルウラの部屋とは別方向で汚い。壁は煤や油膜でべっとりだ。
うあーー!掃除してぇええぇ!!
「ん…?…おぉ…黒永くんじゃないか」
「どうも」
「依頼を受けて…くれたんだねー……」
くたびれたソファーに寝転んでいたミコーさんが起き上がる。
「まぁ…こっちに来て座りなよ〜…」
どこに?
「えっと座る場所が」
「…イス…イス……あれぇ…確かここに…あったあった…どうぞ〜…」
それ椅子ちゃう。壊れた鉄箱やん。
「ふぅー……いまお茶を淹れるにゃーん…」
「お、お構いなく」
軋むし硬いし座り心地は最悪だった。
〜数分後〜
「………」
差し出されたビーカーに注がれた黒い液体は湯玉が沸きどっぷりしていた。
「…ボクにゃん特製の…タールコーヒー…眠気がぶっ飛ぶよ」
眠気どころか意識がぶっ飛びそう。
色々と突っこみたい。
「あちっ…氷…氷…」
ミコーさんが用途不明の機械のレバーを下げると大粒の氷が排出口から落ちてきた。
自分のビーカーに氷を入れ飲み直す。
「…あー…適温にゃん…」
猫舌なんだなぁ。この人は猫人族か?
仕草や動きがどことなく猫っぽいし語尾もにゃんって言ってるし……ま、いいや。
気になったのは機械の方だ。
「それは製氷機ですか?」
「……へぇ……よく知ってるねぇ…君の言う通り…これは帝国で発明された魔法の力を応用せず…電気で…水を冷却し…氷を造る機械なんだ」
やっぱりそうか。
「帝国の…機械工学は門外不出の知識と技術…ボクにゃんの伝手を使ってぇー……手に入れた物さ……」
「ガルバディアは機械文明が発展してるんですね」
「……」
ミコーさんの猫耳が動き尻尾が揺らぐ。
「簡潔に聞くけどさぁー…」
「?」
「君は…本当にロスリット国の出身なのかい…?」
「!」
「…この機械を見て…驚きもしないし戸惑いもない……一目でこれが製氷機と看破できるのは…ボクにゃんと同じ科学者か…帝国の人間だけにゃん……そもそもぉー…魔導具の精製技術が発展し普及してる帝国以外の国家じゃ…電気の力と言われても…ピーンっとこないはず……なのに君は納得も理解も早い…」
ミコーさんには嘘を見抜く能力がある。
…下手に喋ると拙いな。
「実はね…ボクにゃんには…人の深層記憶を垣間見る…天眼って才能がある…」
「深層記憶…?」
「過去を視れるってことにゃーん」
おうふぅ!!や、やべぇ…厄介過ぎる力だ…!
「この両目を覆う目隠しは…強力な天眼の感知能力の負担を軽減し普段は力をセーブするため……外せば…力は発揮される…言いたいことわかるよねー…?」
外せば……あっ。
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『……ふぅー……』
ミコーさんが目隠しをずらすと白い十字の瞳孔の双眸が露わになった。綺麗で不思議な瞳だ。
…ってかめっちゃ美人じゃん。
目隠しで顔を隠すのが勿体ない。
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あの日、面接した時点で既に詰んでたじゃねーか!?
「黒永くんの記憶で…ボクにゃんは帝国を凌駕する科学文明を視た……動く鉄の箱…巨大な塔…眩く輝く光……蟻のように歩く…ヒューム…」
あ、あうあう!
「…ずいぶん…おっきな秘密があるみたいだねぇ〜」
目隠しを外し露わになった十字の瞳が俺を真っ直ぐに捉えた。
「えー…えっと!それは…つまり…あー…」
慌てて狼狽する。
「にゃふふ」
ミコーさんが目隠しを戻し笑う。
「勘違いしにゃいでぇ〜……黒永くんの過去には非常に興味が湧くしぃー……契約者に至った経緯も知りたいけどぉー…ボクにゃんは別に…秘密を暴きたいってわけじゃにゃーい…」
「え」
「暴くつもりならぁ…とっくに…緊急査問会の時に言ってるはずでしょー…?」
「確かに…」
この人の狙いが全く読めないぞ。
一体、何が目的なんだろう……。
「君には…ふぅー…ボクにゃんの研究にぃ…協力して欲しいの…」
「協力?」
「…そーそー…」
「協力って……自慢じゃないが頭は良くないですよ」
学のない俺が役に立てるとは思えない。
「頭の良し悪しじゃないさー…大事なのは…常識に囚われない柔軟な姿勢だから……」
「?」
疑問が浮かぶ。
「面倒だけどぉ…ちゃんと説明するねー…」
「はい」
〜10分後〜
「ーーってなわけにゃーん」
「成る程…」
彼女の話の内容はこうだ。
魔導具・魔法・錬金術の利便性は異世界で幅広く浸透し造詣の深さと応用力は高水準を保っている。
…但しその技術の習得は容易ではない。
例えばアイテムパックの魔導具の作製にはパラメータの技術・錬金・生産の高い値が必要で材料の調達もそれなりの難易度を誇る。
その分、販売価格が高く一定の所得者しか入手できない。世間一般に普及されてるとは言い難いのだ。
結果、色んな面で貧富の隔たりが顕著になった。
でも、帝国はそれに当て嵌まらない。
長年の物理学・無機科学の研究が実を結び魔法に頼らずとも豊かで安定した生活を享受できる産業革命を実現させた。
…そして魔導具と機械を融合させた超技術…『機械魔導術』を産み出し他国より頭一つ秀でた軍事力を手中に収める。
頻繁に領土侵犯を起こすのもそれが原因なのだ。
基本的にヒュームはデミより戦闘力が劣る種族だが帝国は違う。…機械魔導術で足りない差を補い国力は五代国家間でも郡を抜いているらしい。
……ちょっと話が逸れちまったな。
兎に角、ミコーさんは帝国が保有し独占する技術のアクセシビリティーに着目しミトゥルー連邦でも機械が普遍化すれば文明が発展すると確信したのだ。
しかし、哀しいかな。
…長く根付いた文化は新しい風を好まない。
人々の理解は得られず逆に帝国に倣うのを良しとしない風潮がミトゥルー連邦には蔓延している。
度重なる侵略行為により帝国ガルバディアは憎むべき対象となっているのだ。
……こればっかりはいかんし難いよなぁ。
いかに『天秤』と名高い有名な彼女でも思想に賛同する協力者と理解者は少ない。
研究資金の資金繰りも芳しくなく自身のランクボーナス・特許料・研究所の顧問費を費やすも焼け石に水だそうだ。
金翼の若獅子内の派閥勢力も他の十三等位に比べ遥かに弱く戦闘従事者の数も雀の涙……挙げ句の果てに変人扱いされる始末。
ミコーさんが俺に目を付けた理由は…過去の記憶から推察し科学への免疫と適正があると踏んだらしい。
資金援助・開発協力・宣伝に是非、協力して欲しいとミコーさんは言った。
……以上が今回の依頼の全貌だ。
作者のキキです(。ゝω・。)ゞ
いつも読んで下さり有り難う御座います!
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モチベーションや創作意欲に繋がりますので宜しくお願い致しますヽ(*^ω^*)ノ




