忙しくも楽しい毎日を謳歌しよう!④
〜10分後〜
未達成の個人指定依頼の依頼書を再確認した。
ふむふむ…。
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クエストランク:ー
ソロオーダー名:科学の発展にぃー…ご協力を…
依頼者:ミコー・フェム・ダルタニアス
報酬金:要相談
内容:やぁ黒永くん…君は科学と呼ばれる未知の分野の…ふぅー……発展に興味はないかい…?詳しくは…ボクにゃんの研究室でぇー……話そうじゃないか…受注しないと……えーっと…寂しいにゃーん。
クエストランク:ー
ソロオーダー名:指定危殆種討伐の任
依頼者:カネミツ・トキサダ
報酬金:要相談
内容:ある指定危殆種の討伐に助力を請う。レムレース討伐を達成した黒永殿の力量ならば安心して門下も任せられようぞ。吉報を待つ。
クエストランク:ー
ソロオーダー名:巨大地下廃道の調査
依頼者:ゼノビア・オプス
報酬金:要相談
内容:ベルカの地下廃道に未確認生物の大群の出没がベルカ下水局より確認された。…貴方に受注する気があるなら連絡を頂戴。
クエストランク:ー
ソロオーダー名:『黒髭』捕縛の共同依頼。
依頼者:ベアトリクス・メリドー
報酬金:要相談
内容:詳細未定。
クエストランク:ー
ソロオーダー名:エキドナの生体資料の奪取
依頼者:マリー・アンソン
報酬金:要相談
内容:君に依頼する内容が決まったよ〜!魔物研究所に在籍する職員全員の悲願…ビガルダの沼地の最奥地…破滅の祭壇を根城にする伝説級のモンスター…エキドナのサンプルの奪取だ!体液・皮膚・毛髪の一部で構わないからよろしくぅ!!因みに生息が目撃されたって話は二百年前の文献の内容からだけど……にゃはははは!大丈夫大丈夫!
クエストランク:ー
ソロオーダー名:幻蝶ミスト・モルファの捕獲
依頼者:マリー・アンソン
報酬金:要相談
内容:またまたマリーだよ〜!…巨獣骨の塩湖の最北端にある塩柱って場所は幻蝶ミスト・モルファの生息地なんだ!成体の捕獲と蛹の入手…もしくは死骸の回収をよろしくぅ!!因みに塩柱付近には魔象ガトゥーシャが徘徊してっから超危険なんだけど……にゃはははは!大丈夫大丈夫!
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「よし!確認終了…っと」
借りたファイルを閉じフィオーネに返す。
「そーいえばこれって受注期間は大丈夫なのか?」
「私の方で期日管理してますので受注期限が迫れば悠さんへご連絡しますよ」
「非常に助かる」
「いえいえ」
…とはいえ複数あるし効率良く取り組まなきゃ。
簡単そうなミコーさんの依頼を先に片付けよう。
次にカネミツとゼノビアさんの依頼を最優先……って感じか。ベアトリクスさんの方は連絡待ちで日程に余裕がある。
最後にマリーさんの依頼…っつーか…文面は物騒だし勢いで誤魔化してる感が半端ないなー。
「ミコーさんの依頼を今日受ける。あとは順番に……って感じだ」
「畏まりました。私から連絡しておきます」
「そーだ」
忘れない内にフィオーネに話さなきゃ。
「この前に話した食事の約束を覚えてる?」
「勿論です」
「そうか…明後日の夜19時に第6区画の『マカロニ』って店を予約したんだが大丈夫か?」
「…這いつくばってでも絶対に行きます!!」
すっげー気合いが入った返事だ。
「うふふふ!楽しみです」
「ははは」
両手を合わせご機嫌に笑うフィオーネ。
やっぱ笑顔が素敵な女性ってのは良い。
一緒に居て楽しくなるし朗らかな気分になる。
「さーて…出鼻を挫かれたがそろそろ俺も仕事に行くよ」
「ミコー様は三階の専用研究室にいらっしゃいます。もし不在ならミミさんに聞いてみて下さい」
「了解」
「頑張って下さいね」
三階に移動した。
〜 午前10時25分 三階 受付カウンター 〜
カウンターの掃除をしているミミちゃん。
俺に気付くと手を挙げて挨拶する。
「にゃ」
「おっす」
「今日はどうしたにゃ?」
「ミコーさんの個人指定依頼を受けてな」
「…ミミが言うのもにゃんだけどよく受けたにゃ〜」
「……」
「ろくでもにゃい依頼に決まってるにゃん」
部下の信用が皆無じゃねーか。
「まぁ…うん…一人だけ無視したら可哀想だし」
「ユーは人が良いにゃ」
「あ」
ミミちゃんに魚料理が食べたいって言われてたっけ。
昼飯に食べるつもりで作ってきた物を渡そっか。
「これ約束の魚料理だ。食べてくれ」
「おおー!!ちゃんと覚えててくれたのかにゃ!」
今、思い出したんだけど黙っておこう。
「フィッシュバーガーと…これは?」
「南蛮漬けって料理だよ。甘酸っぱくて美味しいぞ」
南蛮漬けを食べた事はないのか。
…まぁ異世界の鯵は俺が知ってる鯵とは大きさも形状も違うし調理法も変わるのだろう。
「にゃふ〜〜い!お昼の楽しみができたにゃ〜」
「喜んで貰えて良かったよ」
「ミミの中でユーの印象が良くなったにゃ!…前は少女性愛者の変態契約者だったけど……料理上手の変態契約者に格上げしてあげるにゃん」
「やっぱ返せ」
「ユーの物はミミの物…ミミの物はミミの物にゃ」
どこのジャイアンだ。
「…ったく…ミコーさんは研究室に居るのか?」
「んにゃ!廊下を真っ直ぐ行くとガラク…機材が積み上がった部屋があるにゃ」
「?」
「行けば分かるにゃ」
「案内してくれよ。暇だろ?」
「嫌にゃ」
即答かーい!
「面倒臭いし…あれこれ要求されるし…拗ねるし…ミコー様は自由気ままにさせとくのが一番にゃ」
酷い言われようだ。
…安易に依頼を受けちゃったかな。
ちょっぴり不安になってきた。
〜5分後〜
目的の場所に到着した。
「間違いなくここだろ」
豪華な三階の内装にそぐわない錆びた鉄屑の山。
扉を開ける前から近寄り難い異様な雰囲気を醸し出している。
…もしかしてこれは機械の残骸か?
ネジ…配管パイプ…回路盤……割れた液晶画面。
異世界に来てここまで明確に地球の名残を感じたのは……初めてかも。
「…確か科学の発展がどうとか書いてたが…」
魔導具は科学ではない。
摩訶不思議な技術で製法される便利道具だ。
……魔法も錬金術も理解の範疇を超えてるものばかり。異世界では機械分野の発展の代わりに魔法技術が台頭してるとばかり思ってたが……ふむ。
非常に興味が湧いてきたぞ。
ノックしても応答はない。
「鍵は…かかってないな」
中に居るだろうし勝手に入る事にした。




