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押しかけ女房! ②

3月17日 午後19時5分更新

3月18日 午前8時30分更新



〜夜21時 マイハウス〜


新たな一員が我が家に加わり食卓は一層賑やかになった。


オルティナの食欲は中々…いや…結構……うん。


控え目に言っても大食漢だ。


以前、見て知ってたとはいえ予想を超えてる。


…あれだけ食べて太らないのは摂取した栄養が全て胸の成長を促してるからかも知れない。


『人風情に負けられにゃいわー!』


…よく分からん対抗心をアルマは燃やしていたが頼むから負けてくれ。


後生だから…!


オルティナはアルマが喋る事を普通に受け入れた。


寧ろ緋の英雄譚の魔王が実在する真実に喜び根掘り葉掘り質問をして…アルマは上機嫌で答えてたっけ。


俺は余り興味がなく聞き流してたけど。



〜マイハウス 二階 空き部屋〜



「ここを自由に使ってくれ」


「ありがとうございます〜」


案内したのは広さ十畳程の洋風の部屋。創造魔法で増築したお陰で使ってない部屋が沢山ある。


「綺麗な部屋ですね〜」


「家具は揃ってるけど足りない物があったら遠慮せず言ってくれよ」


「いえいえ〜!暖かい寝床に美味しい食事…これ以上は望んだら贅沢ですよう〜」


「望むも何も此処はもう君の家だ。…変に気を遣わなくていい」


「……」


急に畏りオルティナは深々と頭を下げた。


「…本当に…本当に…ありがとう〜」


「気にしないでいいって」


「気にします〜」


真剣な表情だった。


「…ユウさんは私の命を救い窮地に陥ったのに責める訳でもなく…また手を差し伸べてくれました〜」


「それは」


「…誰の所為でもない、ですよね〜?」


心を読まれてるぅ。


「うふふ〜!本当に優しいですね」


「……」


照れ臭いので頭を掻いて誤魔化す。


「…私がどこまでお役に立てるか分かりませんが〜…精一杯頑張ります!」


「あまり気負わなくていいぞ」


「むー…折角やる気を出してるのにぃ〜」


頰を膨らませプンプンした仕草が可愛い。


「ははは!悪い悪い……でも無理はしないでくれ」


「べつに無理なんて〜…」


俺は自分の思いを喋る。


「…家族に裏切られ故郷を追われ…挙句、仲間とも離れ離れなんだ。()()()()()()()()


「…それは…」


「気丈に明るく振る舞うのも心配を掛けさせたくないから……だろ?」


「……」


沈黙は肯定の証だ。


「今までGMとして沢山の重荷をその小さな背中に背負って歩いた…押し潰されるのを堪え必死に…ただ必死に皆の為にな」


辛かったと思う。


況して有名な冒険者ギルドのGMとなれば想像も及ばない重圧と責任があっただろう。


「…その頑張りが報われずこんな結末を迎えて落ち込まない奴はいない」


「ぐすっ…」


気付けばオルティナは鼻を啜り泣いていた。


涙の滴がカーペットに落ちる。



「……今度は俺がGMとしてオルティナを背負うよ。…辛い時も悲しい時も楽しい時も……全部一緒だ。…君は一人じゃない。俺とアイヴィー…キューもアルマも…エリザベートもラウラもルウラも……皆がいる。この先、色んな出逢いがオルティナを待ってるんだ。恩返しなんて義務感に支配されなくていい…自由に君らしく生きてくれたら…それが一番の恩返しだ」


「…ひっ…えっぐ!う…えぇ…うぇーーん!!」



大粒の涙が嗚咽と一緒に溢れ出す。


誰だって泣きたい夜はある。


俺は黙って背中を優しく摩り続けた。


溜め込んだ涙が全て枯れ出し尽くすまで。


……面倒を見るってのは()()()()()()だよな。



〜夜22時 マイハウス 庭先〜



あれから一時間後。


オルティナは泣いてすっきりした様子だった。


今は部屋でベッドに横になり休んでいる。


…心労や疲労が溜まってたんだなぁ。


俺はタバコを吸い一人の時間を満喫していた。


「ふぅ」


野菜畑を眺めながら紫煙を吐き出す。


大量に保管した野菜もこのペースなら順調に消化出来そうだ。苗を肥やしにして…次は胡瓜…とうもろこし…蓮根…この辺りを植えよう!


毎度、思うが日本に馴染み深い食材が多くて非常に助かる。


…もしかしてたこ焼きや鯛焼きとかもあんのかな?


「にゃっこらっしょ」


「アルマか」


木造りの長椅子に座っている俺の隣に登る。


「…悠はことある毎に庭でタバコ吸ってるわよね」


「静かな夜に煙をたゆませ物思いに耽る……大人の時間ってやつさ」


ちょっとダンディな雰囲気を醸し出してみる。


「ぷぷっ!似合わなすぎでしょ」


「……否定はしない」


俺にこっち(イケオジ)路線は向かないようだ。


「悠は原始人らしく猛進すりゃ良いのよ」


「人を猪みたく言ってからに…」


「わたしが支えるから」


「………」


毛繕いしながら当たり前のようにアルマは喋る。


…不意打ちは卑怯だぞちくしょー!


「…おー」


嬉しくて…照れ臭くて…ぶっきら棒に返事をしてしまった。


「まぁオルティナもいい子よね〜」


「弟想いの優しいだよ」


「ふーん」


…だからこそヨシュアとユーリニスは許せない。


遠くない将来、改めて決着をつけなきゃな。


「気に入ったしアイヴィーと一緒に鍛えてあげようかしら」


「…マジか」


あの地獄レッスンにオルティナを誘うつもりかよ。


既に十分、強いのに。


「……にゃふふ!このまま配下を増やしゆくゆくは世界征服してもいいかも〜」


「うわぁ」


「あんたは…そーね〜…わたしの()()()()料理人に任命してあげる」


「永久かぁ」


「そっ!」


「…ふふふ」


意外と悪くないかもな。


「まぁ冗談は置いといて」


若干、本気に聴こえたけどぉー!


「ちゃんとあの子達を守ってやんなさいよ」


「勿論だ」


「男は女を守ってなんぼだかんね」


アルマにしては意外な考えだ。


「それならアルマもだな」


「…へっ?」


「アルマも()()()だろ」


「…………」


暫し黙って俺を見詰める。


「…素で簡単にそう言っちゃうのが…あんたらしいってゆーか…無自覚ってゆーか…」


「?」


「何でもないわよ()()()()()


「えぇ…」


酷く納得がいかない言い草だ。


…尻尾をご機嫌に左右に振って嬉しそうだから良いけどさ。


アルマとゆったりした時間を過ごした。


今夜は良い気分のまま熟睡できそうだ。


歯を磨いて寝るとしよう。



〜同時刻 マイハウス オルティナの部屋〜



「……」


ベッドに腰掛け窓から外を見るオルティナ。


綺麗な横顔だ。


突如、控え目にドアをノックする音がする。


「どうぞ〜」


返事をするとドアが静かに開く。


「…まだ起きてる?」


「あら〜」


パジャマ姿のアイヴィーだった。


「どうしました〜?」


「今日はオルティナと一緒に寝てあげる」


「まぁ」


アイヴィーは返事も聞かずベッドに潜り込む。


破顔しオルティナは答えた。


「……うふふ〜!一緒に寝ましょうか」


「ん」


灯りを消してオルティナも隣に横になる。


「…オルティナ」


「はいな〜」


「…いつでも一緒に寝てあげるから」


「………」


悠とオルティナの会話をアイヴィーは隠れて聴いていた。


「……アイちゃんはあったかいですね〜」


優しく抱き締める。


伝わってくる体温と鼻を擽る髪の匂い。


傷ついた心を癒すように安堵感に満たされた。


「オルティナはふかふか」


「ふふふ〜」


それはアイヴィーも同じだった。


母と一緒に寝た記憶が蘇り郷愁に駆られる。


少し沈黙が続きオルティナが先に口を開いた。


「分かった気がします〜」


「ん」


「ユウさんが皆に好かれる理由が…」


「最高にかっこいいお義父さんだから当然だよ」


「…アイちゃんもユウさんが大好きなんですね〜」


「オルティナもそうでしょ?」


「私は…」


返答に詰まる。


彼に対する感情と想いは父や弟に向ける愛とは違うかも知れない。


…自分には過去に許婚がいた。


ギルドの同盟を結ぶための政略結婚…相手は冒険者ギルド『ギガース』のGMの息子。


結局、破談したがその許婚にこんな気持ちは一切抱かなかった。


…それはつまり…?


「あら〜」


「すーすー…」


小さな寝息。


「…ふふ」


考えてる間にアイヴィーは寝てしまっていた。


可愛い寝顔だ。


悠が溺愛する気持ちが分かる。


「…()()()()()()()()()()()()


急ぐ必要はない。


この気持ちが本当なのか…一時の感情なのか…。


答えはこれから分かる筈だ。


…瞼を閉じ眠る。


不安と喪失感で眠れない夜が続いたが今夜は違う。


きっと()()()()()だろう。



いつも読んで頂き有難う御座います( ゜Д゜)ゞ


作者のキキです(。・w・。)


感想・評価・レビューを頂けるとモチベーションが上がります!


お手隙ですがして頂けたら幸いです(。ゝω・。)ゞ

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