女の戦い ②
3月11日 午前9時40分更新
〜扉木の月24日 午後14時〜
時間は更に遡り場所は金翼の若獅子の二階。
気持ちの良い陽射しを浴びてアイヴィーとオルティナは空中庭園で小休止をしていた。
この後、論争に巻き込まれるとは露知らずに……。
〜金翼の若獅子 二階 空中庭園〜
「ぺろ」
アイスクリームを舐めアイヴィーは頷く。
ーーきゅむ!きゅむ!きゅむ!
キューはチョコミント味のアイスクリームが入った箱に頭を突っ込み舐め漁っている。
どちらもオルティナに買って貰った物だ。
「やっぱり『金翼の若獅子』は広いね〜…前も迷子になった時があったわ〜」
「…ぺろ…多分、世界で一番大きい冒険者ギルド」
「案内してくれてありがとね〜」
「副GMとしてギルドメンバーの要望を叶えるのは当然の義務だから…ぺろ…」
「ふふふ〜」
要望とはギルド内の施設案内。
白蘭竜の息吹に在籍していた時は中々、自由に歩き回れなかった。
良くも悪くもオルティナはGMの責任と役目から解放され自由となる。
新天地で零からのスタート。景色が新鮮に映るのだ。
…馴染もうと努力する事で寂しさを紛らわせているだけかも知れないが。
物憂げな横顔を見てアイヴィーは問う。
「オルティナは…ぺろ…」
「はいな〜」
「家族と離れて寂しくないの?」
返答に詰まり間が空く。
「…寂しくないって言うと嘘になっちゃうかな〜」
何もかも一変したのだ。感傷的になって当然だろう。
「そう。…でも大丈夫」
「大丈夫?」
「悠も私もオルティナを大事にするから」
「………」
「血が繋がらなくても…種族が違っても…大切な絆があるって悠は私に教えてくれた」
静かに風が凪ぐ。
「オルティナはもう何があっても仲間だから」
それは気遣いと慰め。
孤独と別れの辛さを知る少女の言葉には有無を言わせぬ重みと説得力がある。
「あ、りがとう…」
涙を堪えるオルティナの精一杯の一言。
「…ん」
「え、へへ〜…!…本当にアイちゃんは…可愛くて…優しくて…とーっても良い子ですね〜」
眼元を拭いアイヴィーの頭を撫でるオルティナは嬉々とした表情だった。
「…子供扱いしないで」
「まーだ子供ですよぅ〜」
「………」
言葉とは裏腹にアイヴィーの表情は明るい。
…それは亡き母の面影をオルティナに見たのだ。
覚えている母の温もりと笑顔が脳裏に過ぎる。
ソーフィやオルティナの人を和ませ癒す暖かな雰囲気が酷似し心の琴線に触れた。
ーーきゅう!きゅ〜?
「あらあら〜…お口がチョコでベトベトですよ〜」
ーーきゅむむ…。
「アクレッシュ〜」
オルティナが発動させた水の魔法が口元の汚れを滑らかに拭う。
「支援魔法?」
「うん!私は支援魔法や回復魔法が得意なのよ〜」
「ご機嫌ようアイヴィー」
雑談を楽しむ二人の下へ予期せぬ来訪者が訪れる。
「あ」
「こんにちわ〜」
ーーきゅきゅ〜。
白の外套が風に揺れる。
銀の鎧に身を包み疵痕を隠す麗しき剣聖。
「あら?貴女は『水雲の息吹』…オルティナ・ホワイトラン…珍しい組み合わせですわね」
ベアトリクス・メリドーだった。
〜5分後〜
オルティナがギルドに所属した経緯を説明する。
「ーー……という訳なんです〜」
「そうですか。悠のギルドに所属するのですね」
「はい〜」
「彼は人格者で強さも折紙付きよ。…今回の一件で心身共に疲弊してるあなたには良い選択だわ」
「私がどこまでお役に立てるか分かりませんが頑張りますよぅ〜」
「ふふ…謙遜を。『水雲の息吹』の二つ名は伊達じゃないでしょうに」
「『荊の剣聖』に褒められるなんて光栄です〜」
アイヴィーは辺りを見回す。
「ベアトリクスが一人って珍しい」
常に彼女の手足となり働く鉄騎隊が見当たらない。
「…少々、個人的な用事でアイヴィーを捜していたので」
「私を?」
「えっと、実はですね…」
珍しく歯切れが悪い。
「…先日、悠に素敵なプレゼントを貰ったの」
「おぉ」
「まぁ」
「…そのお返しに何か贈ろうと思ったのだけど…悠の欲しい物が分からなくて…」
「なるほど」
「アイヴィーに心当たりはないかしら?」
指先を合わせ悩む姿は普段の凜然としたイメージからは想像できない。
「直接、聞かないの?」
「それはちょっと…」
「悠はどんな物でも喜んでくれるよ」
「そ、そうでしょうか?」
「アイヴィーも前にプレゼントを貰った。このバレッタだよ」
「蝙蝠の可愛い髪飾りね」
「…お礼にアイヴィーが肩叩き券をあげたら泣いて喜んでたから!一生の宝物にするって言ってたよ」
胸を張り自信満々に答える。
実にハートフルなお返しだ。
「それは喜びの種類が違う気が…」
大切な義理の娘が自作した肩叩き券。
アイヴィーを溺愛する悠は大喜びに違いないがベアトリクスが求めてる答えとは違う。
「……違うの?」
「ええ」
「ふふふ〜」
「むー……分かった。悠に何が欲しいか聞いてみる」
「た、助かります!!」
「う、うん」
ベアトリクスが待ち望んでいた返答だ。
余りの剣幕に若干、引く。
「…私の名前は伏せてさり気なく聞いて下さいね?」
「了解」
10歳の子供に頼る大人達。恋は盲目だった。
「…うーん」
「どうしました?」
「他の人にも聞かれる予感がしてきた」
聡い子供である。
「他の、人…?」
「うん。プレゼントを作って渡してるから」
「………それは女性ですか?男性ですか?」
「女の人」
「……………」
「うわぁ〜」
オルティナは眉を八の字に曲げる。
「…アイヴィー」
「うん」
「あなたの欲しい物も併せて教えて下さいね」
「いいの?」
「ええ。将来のむす……こほん!先行投資ですわ」
「?」
他のライバルとの差別化。
意外と計算高いベアトリクス。
勿論、アイヴィーを慕っているのも理由の一つ。
一緒に過ごしたあの数日間で仲良くなったのだ。
三人は暫く雑談を楽しむ。
作者のキキです(。・w・。)
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