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トモダチトモダチトモダチトモダチ ①

2月24日 午前21時11分更新


〜午後16時 第21区画〜


あれから勇猛会を出て第21区画に移動した。


ちょっと長居しちゃったかな。


現在、トモエが宿泊してるホテルへ向かっている。


…しかしなんだ。


この区画はお洒落とゆーか…金持ちが多そうとゆーか…冒険者(おれ)みたいな格好なりをしてる奴が一人も居ない。


富裕層の居住区って感じだ。


区画を一つ隔てるとガラッと印象が変わる。


ベルカから離れればモンスターに怯え暮らす人々が沢山いるのに…。


「まぁ…あれは冒険者かしら?」


「奥様。声が大きいです」


「だってぇ〜『21(プレミアム)区画(ストリート)』で冒険者を見るなんて珍しいじゃなーい」


…庶民の俺にはこの雰囲気に馴染めなそうもないな。


 

〜第21区画 最高級ホテル ファンタジア〜



15分後、目的地に到着した。


「……はぁー」


正門をくぐり目に飛び込むは浩渺たる敷地。


整備が行届き塵一つ無い園庭には淡い紫色の花を咲かせた花木が並ぶ。


ホテルの外観はまるで城だ。


…もしかしてシャトー・ホテルってやつかな?


突っ立ってても仕方ない。中に入ろう。



〜ファンタジア エントランス〜



「止まって頂こうか」


「へ?」


「貴方は宿泊客には見えませんが…何用か?」


二人の守衛が立ち塞がる。


武器を()()()()()()()()のは威嚇か…牽制か…。


「宿泊してる客に用があって来たんですけど」


訝しげに大柄の守衛が俺を見詰めた。


「…いや、ちょっと待てよ。見覚えがある顔だ……あっ!…口を覆うマスク…珍しい狩人装束…もしや君は『辺境の英雄』ではないか?」


「まぁ、はい」


その異名で呼ばれるのあんま好きくない…。


「この人が…あの…へぇ!先輩はGMと『舞獅子』との代理決闘を観に行ったんじゃなかったっけ?」


代理決闘を観に?…あの日、闘技場に居たのか。


「ああ。まさか此処で会えるとは思わなかった」


「お二人はもしかして」


「私達も君と同じ冒険者だよ。…『傲慢なる(ルシファーズ)鉄槌・ハンマー』のギルドメンバーさ」


やっぱり同業者か。


「なんで冒険者が守衛を?」


「うちのギルドはファンタジアと業務契約を結んでてね。…周辺警護・宿泊客の護衛・ボディーガードが主な仕事さ。ホテル内にも仲間が配置されてるよ」


「へぇー」


色んな依頼があるんだなぁ。


「予期せぬ来訪者を排除するのも仕事だけど…この人相手じゃ無理ですね。『金翼の若獅子』の有名なS級共を一人でぶっ飛ばした化け物っすもん」


「止せ。…彼は凄い人だぞ。化け物なんて失礼だろ」


この大柄のお兄さんは人柄が良さそうだ。


「褒めてんですって!」


化け物って褒め言葉じゃねーけど!


「…話が逸れたな。確か宿泊客に用があると言ってたが……名簿を確認しよう。誰だ?」


「トモエです」


二人の動きが止まる。


「…先輩。今、この人ってばトモエ殿下を呼び捨てにしましたけど…?」


「ふむ…」


「一応、友達です」


「……と、友達…?」


あ、信じてねーなこいつ。


「…一先ず、此処で待ってくれるか?支配人から姫に確認させよう」


「構いませんよ。多分、悠が来たって言えば会ってくれると思います」


「分かった。そう伝えよう」


暫しエントランスで待機する。



〜15分後〜



「あ、先輩」


戻って来た。


「……君は余程、姫と知己の間柄のようだな。丁重且つ早急にお通しせよとの御達しだ。既に支配人が中で待機してる。後は彼の案内に従ってくれ」


「うっは!マジ?」


「ありがとう」


「…君とここで会ったのも何かの縁かもな。私の名はボーンボルトだ」


差し出された右手。


「こちらこそ」


素直に握手に応じる。


「…ふふ、ギルドの仲間に自慢するよ。あの『辺境の英雄』と握手したってね」


「…えっーと…あはは!それじゃ」


自慢になるわけないやん。


挨拶もそこそこに中に入った。



〜数分後〜



「…想像してたより普通の人でしたねー」


「ああ。…ただ、表の評判に反し裏じゃ『阿修羅』って呼ばれてるらしいぞ」


「『阿修羅』?」


「…彼は自分の仲間・友人に危害を加えた輩に一切、容赦しないそうだ。…それこそ同棲してる義理の娘…『常闇の令嬢』に対する侮辱には酷く激怒するらしい。実技試験管を努めたジムが言ってたよ」


「あー…先輩って『ケイドムの堅者』と友達っすもんね」


「…職人達の間じゃ『巌窟亭』の後継ぎになるって噂だしな」


「え、えぇー…?」


「『オーランド総合商社』の『鉄仮面』とも懇意で…兎も角、彼の独立はどの()()()()()も注目してる。今の内に顔見知りになって損は無い」


「先輩ってそーゆーとこ抜け目ないっすね」


「世知辛い世を生き残る術ってやつさ」


「…しっかし…こっちじゃ広まってないけど…本国じゃ『月霜の狂姫』って()()()()の殿下様と友達って…」


「……」


「あたしなら金貰っても嫌っすわ」


「…気持ちは分かるが大声で言うな」


「へいへーい。…あ、先輩!今日、家行ってもいいっすか?」


「断る」


「はっや!」


「どうせ金欠で飯を食べさせろってだろ?」


「お見通しっすね〜!…実は防具を新調したばっかで困ってんですよ…昨日もろくに食べてなくて〜」


「……今回だけだぞ。ルパ」


「やりぃー!先輩のそーゆー優しいとこ大好き!」


「………」


誰も来ないエントランスを警備する二人の会話。


「ん…曇ってきたな」


「夜は雨っすかね」


何かを暗示するように雲が夕陽を遮る。


…この日の夜、予報にない嵐がベルカを襲う。


それは()()()心情を現すような嵐だった。



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