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プレゼントを贈ろう!〜第二弾〜⑨

2月6日 午後12時54分更新


〜扉木の月20日 第6区画 騎士団本部〜



翌日、午前9時。


シーにプレゼントを渡そうと騎士団本部へ。


到着次第、警備中の騎士に敬礼される程度に俺の評判は良いらしい。


最初、来た時とは雲泥の差だ。


用件を伝えると隊長室へ案内された。


以前は詳しく知らなかったけど階級が隊長以上の騎士は個別でオフィスがあるらしい。


案内してくれた職員が教えてくれた。


シーの部屋の正式名称は…第三騎士団『竜』所属第壱竜騎士部隊隊長室……長っ!!



〜騎士団本部 2階 第一竜騎士部隊長室〜



ノックして部屋に入る。


「よっ」


「久しぶりね」


既に連絡を受けていたシーが待っていた。


今日も眼鏡が決まってるな!……って冗談は無視されそうだし言わないでおこう。


「座って話しましょう」


促されソファーに腰を下ろす。


「急に訪ねてすまない。大丈夫だったか?」


「問題ありません。…今回の()()()について直接、話をしたいと思ってました」


「あー…色々とお騒がせしました」


「謝ることはないです。…騎士団内でも貴方の処遇の是非に様々な意見が飛び交ったけど…悠を肯定する意見が多数だったわ」


「それは有り難い」


「レムレース討伐とR・S(レッド・シグナル)事件の解決で貴方は高く評価されてますから」


「第二騎士団との協定をシーは知ってるんだな」


「ええ。隊長格以上は全員、知ってるわ」


「ふーん」


「…それより『金獅子』と闘い冒険者ギルド設立を認められたと噂で聞いてるけど」


「概ねその通りだよ。経緯は…まぁ…自業自得ってゆーか…誰のせいでもないかな」


「詳しい経緯を知りたいの」


「それはちょっと」


「………」


眼鏡の奥の双眸が細まる。


警察で取調べを受けてる気分だ。


「…無理に聞いても貴方は答えないでしょうね」


「ほっ」


暫しの静寂。


「…それと…怪我はしてませんか?大丈夫ですか?」


先に口を開いたのはシー。


さっきとは違い労わるような口調だった。


「大丈夫だよ。もう治ったから」


「そう」


柔らかな微笑み。


「…ふふ」


「何か?」


「笑顔を見れて嬉しくてさ。…入室した時からずっと難しい顔をしてたろ?」


「!」


俺から顔を逸らす。照れたのかな。


「べ、別に…そんな事は…」


…クールな女性が時折、見せる笑顔…。


いいよね!グッとくるぜ。


シーも寸分漏れず綺麗な女性(ひと)だし。


「……こほん。悠の用件を聞きましょうか」


「あ、照れて誤魔化した」


「違います」


「シーは美人だし普段から笑った方が男にモテるぞ」


「………」


「そんな仏頂面しな」


「これ以上、言うと侮辱罪で逮捕しますよ」


唐突な逮捕宣言だった。


「褒めたのに!?」


「…貴方に美人と言われると()()()()()()から…」


ぷいっと横を向いてしまう。


ざ、騒つくって…女心が難し過ぎるよぉ…!


「あはは…た、大した用事じゃないんだけどな!…えーっと…はい!」


乾いた笑いで誤魔化しつつプレゼントを手渡す。


「え?」


「俺からシーへのプレゼントだ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

龍紋の籠手

・黒永悠が鍛えた籠手。龍鉱石と重魔鉱石で鍛えられ薄い装甲だが見た目に反し非常に頑強。『堅牢ソリドゥム』の紀章文字の効果でダメージを軽減する防御壁を常に展開する。但し一度、装備した持ち主に依存しバフ効果は第三者へ適用しない。


・黒永悠がシーに製作した特別な贈り物。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「この軽鎧の籠手が私へのプレゼント…ですか?」


「ああ」


「…金属を加工したとは思えない薄く滑らかで…美しいガントレットね」


「龍紋の籠手って防具だ。…本当は鎧一式をプレゼントしたかったけど騎士団は専用の装備があるからさ。籠手なら大丈夫かなって思って」


デザインもその点を意識して凝った物になってる。


「…それは大丈夫ですが」


「この籠手には堅牢の紀章文字のバフ効果でダメージを軽減する防御壁が常に展開される。…仕事柄、怪我も多そうだし是非、活用して欲しい」


シーは驚いて目を見開く。


「き、紀章文字を刻んだ防具は極めて希少なのに…無償で貰う訳には…」


「遠慮しないで」


「でも…」


あまり嬉しくなかったかなぁ。


「……そもそも何故、私なの?悠と親しい人は他に幾らでも居るでしょう」


「それは君が特別だから」


「!!」


一緒にレムレースを討伐した仲だし。


「と、と、と、特別!?」


みるみるシーの頰が紅潮していく。


「うん。友達だし」


「……ああ、()()()()()()ですか」


他にどんな意味があるんだろ。


「これからも仲良くしたいからさ」


数秒の間。


「ふふふ…」


「…俺、変なこと言ったかな?」


「いいえ…でも、どうして付き合いの浅い悠に…こうも惹かれてしまうのか…少し分かった気がします」


「?」


「貴方は()()()()()()()()()()…寄り添いたいと願わせてしまうのね。…完璧ではない無防備な甘さが…まるで毒のように心を蝕むの」


眼…口元を手で隠し…視線を斜め下に向け…濡れた甘い声色で囁く。



「特別なんて言われたら…貴方の一番になりたくなるに決まってるじゃないですか…」



艶かしい表情と仕草に胸の鼓動が自然と高まった。


「と、友達に上や下はないぞ?」


一瞬で無表情に逆戻り。…いや、怒ってる?


「…誤魔化しではなく素で言ってるのが腹立たしい…一度、拘留してやろうかしら」


「ふぇっ!?」


ふ、不当逮捕だ!


「冗談よ」


目が本気だった気が…。


「それと…」


龍紋の籠手を手に取り微笑む。


「…プレゼントをありがとう。大切にするわ」


「おー!受け取って貰えて嬉しいよ」


「今度、私も悠にお返しがしたいのだけれど…」


「気にしなくていいって。()()()にも贈ったけどお返しは期待してないし」


「……」


「どうしました?」


「絶対、お返しは用意するので受け取って下さい」


断固たる強い口調だった。


「……で、でも」


「返事は?」


「は、はい!」


「…競争率は激しいでしょうし…ぶつぶつ…ここで一歩でもリードを……」


難しい顔で独語を呟くシー。


…睨まれて内心、びびったとか…怒らせたら怖そうとか…そんな理由で返事をしたんじゃないぞ!



〜5分後〜



「……さてと用事も済んだしそろそろ行くよ」


「もう帰るのですか?」


「これ以上、シーの仕事の邪魔をしちゃ悪いし」


「そうですか…」


「また遊びに来るよ……あ、それと手配書ビンゴブックを」


ノックする音と同時に扉が開く。


「シー隊長。御歓談中、失礼致します」


入って来たのは騎士団の騎士だった。


「用件は?」


「ジークバルト団長よりクロナガ殿を団長室にご案内せよ、と御命令が」


マジか。


「分かりました。私が案内します。貴方は業務に戻って構わないわ」


「はっ」


敬礼して退室する。


「…悠、済まないけど」


「ああ。行くよ」


丁度、良かったかも。


アレッサさんの墓の件を聞こう。


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