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プレゼントを贈ろう!〜第二弾〜④

1月24日 午前9時21分更新



「…きっかけは6年前だね。大きな学会で魔物学の卒業論文を発表する機会が当時『グリンベイ大学』の学生だった私に巡ってきた。…私は『人類と魔物の共存』を題材に…モンスターが害悪な存在だって定説を覆そうって論文を作成したんだ」


「……」


「…でも、行き着いた結論は…『モンスターは人類にとって不必要』って真実だったの。…だって膨大なモンスターの被害例に反し共存できたと思われる事案は圧倒的に少ない。…どれも伝承やお伽話ばっかで証拠にならないものばかりだもん。…皮肉にも必死に集めた資料が決定的な裏付けの証拠だったってわけね〜」


「結局、私が発表した論文はモンスターの危険性を再認識させ根絶する必要性を訴えた内容になった。…その卒業論文は評価され賞まで貰ったけど…ぜんぜん嬉しくなかったわ。でも…」


マリーさんは誇らしげに言う。


「持論を論破しようって目標ができた瞬間でもあったね!…にゃはは!前例が無いなら自分が見つければいいだけだもん」


「……」


「そ・こ・で!…大学を卒業して直ぐにモンスターハウスに就職し今に至るってわけさ。募集の空枠が受付嬢しか無かったし兼務が必須で最初は大変だったけど……ここは最高だよ。私にとっては楽園だね!」


「…もしや俺の血液や精液を欲したのは」


「うん。…契約者はモンスターと心を通わせた稀有な存在だし私の()()()()()()とは趣旨が違うけど研究のヒントになると思ってお願いしたんだ」


「そういう理由だったんですね」


「うんうん!あわよくば契約のメカニズムを解明し発表して…後援者たちから研究資金を巻き上げよう…なーんて微塵も思ってないよ〜」


「…うわぁ」


「……あ。ま、待って待って!今のなし!…く、くそ!せ、せっかく協力してくれそーな雰囲気だったのにぃ…」


残念過ぎるほど自分に正直な人だなぁ。


「でも素敵な目標ですね」


「素敵、ねー。べつに笑ってもいいんだよ?…いい歳して子どもみた」


「笑いませんよ」


「…へっ?」


「理想を追い続けるのって相当な覚悟と信念がなきゃ無理でしょ。それを笑うなんて俺にはできない」


「……」


「先駆者はいつだって理解されないもんです。…赤の他人の声は気にせず頑張って下さい」


俺は夢や目標に向かって頑張ってる人が好きだ。


馬鹿にする連中は夢を叶える度胸も実力も無いって露呈してるのと一緒だと思ってる。


暫しの静寂。


無機質な音が響く。


お!昇降機内から見える地層の様子が変わったな。


大分、降ったみたいだ。


「……にゃ、はは。そんな風に言ってくれるとは予想外だなぁー。照れちゃうね〜」


そう呟いたマリーさんの頰は少しだけ赤く染まっていた。


「体液を寄越せって要求は絶対に嫌ですが…モンスター関連で手伝えることがあれば俺宛に個人指定依頼(ソロオーダー)を依頼して下さい。微力ですが力になりますよ」


「…え!マジで?」


「はい」


ここまで聞いといて知らん振りってのも薄情だし。


「やっふーい!…助かるよ〜!…Sランクの冒険者…しかもめちゃくちゃ強いって評判の黒永君なら他の冒険者が無理って断る高難度の依頼をお願いしても大丈夫そーだし」


「お、俺に達成できる範囲内でお願いします」


「え〜。黒永君は()()()感じ『氷の女帝』と同程度…ううん!彼女より強そーだし大丈夫だよ〜」


「触った感じ?」


「私は『触診』のスキル持ちでね〜。触れた相手の内包魔力と状態を視れる閲覧系統のスキル保持者なんだ。…ステータスは覗けないけどマギ・ディテクトよりは鮮明に分かるよ」


最初に握手した時か。


「…なるほど」


「にゃはは!私自身の戦闘力は超絶皆無だけどね!…でも黒永君も色々と大変なんでしょ?詳しくは知らないけど冒険者ギルドの設立とか初回献上金とか〜。そんなんで依頼して大丈夫?」


「あー…まぁ、はい。ひと段落したら受けますので」


「ならおっけー!皆と相談して依頼内容を吟味しないとなぁ〜。…『ビガルダの毒沼』の奥地に生息する魔鶏獣コカトリスの卵の奪取にぃー…『塩柱』に湧く幻蝶ミスト・モルファの羽根・鱗粉・蛹の入手……うぇっへっへ!今から期待で胸が高鳴るわぁ!」


テンション爆上げのマリーさん。


…どんな無茶な依頼を頼まれるのだろう。


喜ぶ彼女を尻目に俺は若干の不安と後悔の念に駆られたのだった。



〜モンスターハウス 地下6F〜



漸く昇降機が止まる。


「はーい。到着っと」


岩盤を補強した飾り気のない通路。


等間隔で設置されたライトが照らしていた。


真っ直ぐに道が続いてるな。


「この先に巨大地下空洞があるの。そこがヴィーゾフを飼育・管理してるエリアだよ。私はここでお別れかな」


「マリーさんは来ないんですか?」


「うん!戻って他の皆と君へ依頼する依頼内容の検討会をしなきゃ。…『灰獅子』にモンスターハウスが発注する依頼は難度が高いからAAAランク以下の冒険者は受注不可だって言われてるしー……研究が滞っちゃってるからね!」


「…ラウラが明言するって相当ですね」


彼女はにへらっと笑う。


「うぇっへっへ〜。黒永君ならだいじょーぶ!とびっきりの依頼を発注するからよろしくだね!」


「お手柔らかにお願いします…」


こりゃ腹を括っておかないと痛い目に遭いそう。


「はいはーい!んじゃまたね〜」


マリーさんを乗せ昇降機が昇っていく。


見送った後、通路を進んだ。



〜数分後 モンスターハウス 召獣区層〜



目の前に広がる町がすっぽり収まる程、大きな空間。


地底にも関わらず空気はとても澄んでる。


色鮮やかな巨大茸や植物が森となり地下水が流れ落ちる滝崖が川を作っていた。地面は柔らかな芝生…いや、苔で覆われている。


…自然の力って凄い。


「ん?あれは…」


遠くで飛竜が群れてるが騒がしい。


とりあえず行ってみよう。



〜召獣区層 竜の寝床〜



「このふぁっきんどらごん!」


「…だから吾は言っただろう。ルウラには無理だと」


ーー………。


一匹の白い飛竜が憤慨するルウラを睨んでいた。


エリザベートが呆れ顔で嗜めている。


「二人とも何をしてるんだ?」


「…ん?…おぉ!悠ではないか」


声を掛けるとルウラがダッシュで駆け寄ってきた。


「…ゆー!へるぷみー!あのどらごんがルウラを苛める…」


「苛める?」


話が全く見えない。


「…エリザベート。これは?」


「うむ。…実はなーー」


〜数分後〜


事情を聞いた。


発端は昨晩の夕食の席でルウラが…。


『可愛い召獣が欲しい』


…と急に騒ぎ出したのが原因らしい。


一緒に食事をしていたラウラに大反対されたが諦め切れず……無数の飛竜を召獣として従えるエリザベートを頼ったそうだ。


「大変だったな」


「くっくっく…昨晩に散々、強請られて辟易してね。一先ず吾が召獣化した飛竜と対話し適正があるか判断しようとしたが……」



「…へい!捌かれてみーとになりたくなきゃ…ルウラの指示でしっとだうん」


ーー………。


「せいほー!」



白い飛竜は微動だにしない。寧ろ鼻を鳴らし小馬鹿にしてる。


「見ての通りの有様だ」


「あはは…。なんで急に召獣が欲しくなったんだ?」


「前々からがーるとキューが羨ましかった。ルウラも…ぷりてぃでくーるな召獣が欲しい。…なのに…りあるは残酷。…この傷ついた心を癒すにはふぁっきんどらごんを肉団子にする必要がある」


とんでもねーこと言い出した!


ルウラが武器を構える。


「やめなさい」


「あう」


軽く頭を小突いた。


「…全く。落ち着けっての」


「うー!…そのまま撫でるのは卑怯…。おぅ…荒んだ心がけあされるー…」


やれやれ。


「…そもそも竜語を話せん者が飛竜を使役するのは調教師(テイマー)としての才能(スキル)が秀でた者で無いと不可能だ。…もしや適正があるかも知れんと若干、期待してたが…くっくっく!残念な結果に終わったな」



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