プレゼントを贈ろう!〜第二弾〜①
1月17日 午前7時26分更新
〜扉木の月19日〜
翌日、俺は金翼の若獅子に来ていた。
前よりも色んな人に声を掛けられる頻度が増えたなぁ。…有難いことだけどちょっと大変。
今日はかねてより意中の人達へ製作していたプレゼントを渡そうと思ったのだ。
謝礼も併せナイスタイミング!
早速、キャロルから渡してこっと。
〜午前11時 金翼の若獅子 二階 空中庭園〜
空中庭園に二人っきり。幸い他に誰も居なかった。
「急に呼び出して悪いな」
「いしし!気にすんなって〜。うちとユーの仲じゃんか。…ま、『金獅子』と闘ったとか…冒険者ギルド設立すっとか…初回献上金3億Gを納めなきゃいけないって話を聞いた時には……口から心臓と耳から脳みそが飛びでるぐれー驚いたけどな!!」
「…すまん。色々と成り行きでな」
「心配する身にもなれっつーの。…ユーは秘密が多いんだから用心しなきゃさ〜」
秘密とは俺の出自にまつわる話だろう。
「気を付けるよ。…それで呼び出した理由なんだが」
キャロルにプレゼントの品を渡す。
「箱?」
「開けてみてくれ」
「兎のピアス?…わぁ…きれいじゃん」
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ハッピー・ネフライト
・翡鉱石と重魔鉱石を細工し小さな兎を模して作ったピアス。装備者の魔力に呼応し金運を上昇させる。黒永悠がキャロルへ日頃の感謝の気持ちを込めて製作した特別な贈り物。
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「あ!ふっふっふ…もしやフィオーネに渡すやつの相談かぁ〜?」
「キャロルへのプレゼントだ」
見る見る表情が変わった。
「…え、え…?」
珍しく狼狽してる。
「前に欲しいって言ってたろ」
「…あ、はは…マジでうちに作ってくるとは思ってなかったわー…」
「今回の嘆願書の件も含め普段からキャロルにも世話になってるし誠意を込めて作った自信作だ。…受け取って欲しい」
「せ、誠意ってべつに…。うちはうるさいだけで…フィオーネみたく…美人でもないし…プレゼントを貰うなんて柄じゃないってゆーか…」
「違う。キャロルはキャロルだ。フィオーネと比べても意味はないじゃないか」
「……」
「俺にとって大切な友人で特別な一人なんだ」
「ユー…」
大体、その容姿で卑下する要素は一つもない。
芸能人風に例えるとフィオーネは女優でキャロルはアイドルって感じ。
綺麗系と可愛い系みたいな違いだ。それに滑らかな褐色肌は健康的なエロスを…ってごほん!ごほん!
「…あのさぁ…」
「?」
「…そんなん言われたら…この立ち位置に満足できねーじゃんか……」
切なそうな表情で呟く。…急にどうしたんだろう。
「立ち位置?満足?」
返事はなく口を結び顔を伏せてしまった。
ややあって顔を上げる。
「……いししし!気にすんな!」
見慣れた笑顔だ。
「…もしかして迷惑だったか?」
「バカ。…はぁ…ユーは女心を勉強して欲しいわー…そのうち背中を包丁で刺すぞ〜」
「え、えぇ」
突然の殺害予告!?
「痛っ…ひさっびさに外したな〜」
右耳のピアスを外した。
代わりにハッピー・ネフライトを着ける。
「おぉ!」
派手なデザインじゃないけど良質な鉱石を元に作ってるので市販品とは光沢が一味も二味も違う。
小さな兎の形にするのは骨が折れたが……うんうん!
大満足の出来栄えだ。
「どーよ?」
「よく似合ってるよ。素敵だ」
「…へへ…ユー…すっげー嬉しいよ!」
とびっきりの笑顔が見れて俺も嬉しい!
「良かった。作った甲斐があったよ」
「…でさ…お願いなんだけどちょっと屈んで」
言われた通りに屈む。
「こうか?」
「ん」
「!?」
互いの鼻と鼻が触れ合う。キャロルの息遣いを感じ心臓の音が激しくなった。
びっくりして息を止め声も出せない。
「…よしっと」
「キャ、キャロル。今のは……?」
数秒の出来事がとても長く感じた。
「兎人族の女は……あはは!大切な男に鼻を合わせて感謝の気持ちを伝えんの」
「……そうなのか。知らなかった」
素晴らしいスキンシップの習慣だぜ。
「…うちも争奪戦に参加するって…遠慮はしねーって決めたから!ユーも覚悟しとけよな!!」
兎耳を揺らしながら快活に笑う。
「お、おー」
争奪戦って言われても…。
うーむ。誰と何を競ってんだろう。
ま、いっか。上機嫌なんだし。
仕事に戻っていくキャロルを見送った。
さてと……次はエリザベートとルウラにベアトリクスさんだな。
ベアトリクスさんの分は追加製作したのだ。
今回の件でずいぶん世話になったしね。
三人を探して完成した武器とプレゼントを渡しに行こう。




