クエストに行こう。③
〜午前11時 カナ村〜
「……」
プーカ村より広い村だが閑散としている。村人の顔も暗く沈んでいた。
憔悴した表情で二本角の女性が話し掛けてきた。
「見慣れない方ですが……どちら様?」
「アルカラグモの討伐依頼を受けてきた者です。依頼者はジェシーという女の子ですが存知ですか?」
「まさか…冒険者ギルドの…」
「ええ」
「…嗚呼、ジェシーは私の娘です。本当に来てくれるなんて…詳しい話は家でします。…ついてきてください」
〜カナ村 村長宅〜
自宅に案内されると小さな二本角が生えた女の子とベッドに怪我で寝込む男性が居た。
「おじさんだあれ?」
お、おじさん…だと…。
「…君がジェシーかな?」
「うん」
「俺は依頼を受けたお兄さんだよ」
「…ほんと!?わーい!おかあさん!ぎゆどのおじさんがきてくれたよ!」
お兄さんじゃい。
「そうねジェシー。…すみません。お名前は?」
「悠です」
「…申し遅れましたが私は村長の代理をしている妻のジェシカよ。…この村の外れに洞窟があるのですが…そこに恐ろしいアルカラグモが住み着き……もう何人も村人が犠牲になってます。…主人…村長は…村人と私達を逃すために噛まれて…もう…うぅ…長くないでしょう。冒険者ギルドに討伐を頼む依頼料を集める事もできなくて…まさかこの子が出した無償の依頼を受けてくれる方が居たとは思いませんでした…」
「…そうだったんですね。ご主人の容体を診ても宜しいですか?」
「はい…」
「…う…うぅ…」
旦那さんは苦しそうに呻き声をあげる。…顔色が悪い。噛まれた左肩の箇所が膿み紫色に腐っていた。
「(……すみません。サーチしますね)」
ーー対象を確認。ステータスを表示ーー
名前:ジョン
種族:羊人族
称号:村長
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羊人族の亜人。カナ村の村長。アルカラグモに噛まれ劇毒の異常状態に陥り腐食している。
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…特製ポーションで治るかも。
「ジェシカさん。このポーションを飲ませて下さい。これを飲めば治ると思います」
ジェシカさんが旦那さんの体を起こし特製ポーションを飲ませる。
噛み傷の腐食部分が治癒し顔色は良くなった。
意識が回復したのか薄っすらと目を開ける。
「…あ、ぅ…ジェ……シカ……?」
「…ああ…!!あなた…まさか……こんな…ユウさんありがとう…ありがとう!」
「気にしないでください。俺は討伐対象のいる洞窟へ向かいますので」
ジェシーちゃんにコートの裾を引っ張られた。
「なんだい?」
「…あのねあのね。おじさんおとーさんをたすけてくれてありがと!…じぇしーね…おかねもってないの…」
「……」
「おっかないくもが…みんなをいじめゆの。おじさんね……じぇしーのたからもの…あげゆから…おっかないくもやっつけてくれゆ…?」
それは小さな人形だった。
震える手で俺に人形を差し出す。…しゃがんでジェシーの頭を撫でた。
「宝物なんだろ?…ならお守りに貸してもらえるかな。必ず返しにくるから」
「うん!じぇしーまってゆね!」
…絶対に討伐しなきゃな。
決意を胸に秘め村外れの洞窟に向かった。
〜午前11時15分 村外れの洞窟〜
洞窟は薄暗く多足類の悪い虫が壁面を這う。
奥に進むと人骨が散らばり…食い荒らした肉片が散らばっていた。
…想像したくないがこの肉片は恐らく…。
最奥に到着すると気持ち悪い蜘蛛がいた。
黒く巨大で太い八本の歩脚が伸び膨らんだ腹部がゆるりと動いた。
…八個の目が俺を捉える。
間違いない。こいつが討伐対象のモンスターだ。
ーー対象を確認。ステータスを表示ーー
名前:アルカラグモ
種族:鋏角種 Lv56
職業:人喰い《マンイーター》
戦闘パラメーター
HP198410 MP3000
筋力950 魔力2600 狂気2400
体力850 敏捷1000
技術230 精神600
耐性:闇耐性(Lv5)
戦闘技:産卵・毒八脚・劇毒の一撃・ヴェノムネット
魔法:毒魔法(Lv8)
固有スキル:食人・毒の心得
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薄暗い洞窟に巣食う鋏角種のモンスター。好んで人を襲い一定数の人を食し知性を得た。毒系統の魔法・攻撃を得意としバリエーションも豊富。非常に危険である。
食欲で支配された知性を知性と呼べるのか?
強者こそ彼等の全て。答えは誰も知らない。
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ーー…ヒト。エサ。
「喋れんのか」
ーーヒト。クウ。コトバワカル。
「…何で人を襲う」
ーーヒト。エサ。オマエエサ。
ーーヒト。コドモ。ウマイ。
ーーヒト。オトナ。ウマイ。
ーーヒト。ヨワイ。ムラ。オソウ。
ーーヒト。ジャマ。オマエクウ。
「……食ってみろよ。這い寄る白蛇ぁ!!」
白い大蛇を召喚しアルカラグモを襲う。だが…。
ーーギギ。イタイ。イタイ。
ーークウ。コロス。コロス。
…避けられた。大蛇の一噛みは脚を二本食い破るが致命傷にはならない。
「…くそ!」
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MP980/2000
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初っ端からMPを削ってしまう。
無数の毒液が飛んでくるが避ける。金剛鞘の大太刀で脚を斬ると緑の体液を撒き散らし脚が空中に飛んだ。
「このまま全部斬ってやる」
振り被った瞬間、鈍い痛みが走った。
「ぐっ…?」
無数の子蜘蛛が脚を噛んでいた。蹴り飛ばすが次々と体に群がり噛み付いてきた。
糸で絡まり身動きが取れない。
「グ…ラビティ…!」
重力の圧を重くするが潰れた死骸を気にせず新たな子蜘蛛が体に噛み付く。
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HP3800/6900
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このままじゃ…噛み殺され…る。
ーーヒト。オマエ。クウ。
ーーモット。ツヨク。ナル。
大きな鋏角が眼前に迫る。
「…なめんなよ。てめぇ」
リッタァブレイカーに持ち替え撃鉄を起こし自分に目掛け着火した。
爆音と焼けるような痛みが全身を襲ったが子蜘蛛は爆破し飛散した。…脚の連撃を避け跳ぶ。
金剛鞘の大太刀を抜いて飛ぶ斬撃が脚を斬り裂いた。
「一刀・閃ッ!……ああああああああっ!!!」
HPを継続で消費し力を溜める。…そして黒蛇が大太刀を纏った。
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HP642/6900
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「…ブレイ…カァァッ!!!」
渾身の一撃を頭に振り下ろす。
ーーーーギャ…ギ…ギィ…!
頭は割れ体の半分が裂け体液が飛散する。それでもまだ動いていた。
ーーーーイヤ。…ィ…シニ。シニ…タク…ナ。
「………」
ケーロンの魔銃の銃口を残った単眼に向け構える。
ーーーータスケ。…ヒト。クワナ。
「おっかない蜘蛛はやつけなきゃな」
弾丸が眼を貫き今度こそ絶命した。
ーーアルカラグモ×1を討伐ーー
ーークエストを達成しましたーー
ーーーLv3→Lv4へLevel upーーー
・戦闘数値・非戦闘数値が上昇しました。
・耐性『不死耐性(Lv4)』を習得しました。
・戦闘技『E・ショット』を習得しました。
・魔法『闇魔法Lv3』を習得しました。
・呪術『黒蛇纏い→禁呪・九墨蛇』に変わりました。
・従魔との親密度が上がりましたーーー
・強敵を倒し固有スキル『侵食』の効果が発動。
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名前:黒永悠
性別:男
種族:人間
称号:穢れを背負う者
職業:契約者 Lv4
戦闘パラメーター
HP8700 MP2700
筋力1270 魔力199 狂気2500
体力650 敏捷800 信仰-750
技術890 精神199 神秘800
非戦闘パラメーター
錬金:45 鍛冶:60
生産:50 飼育:30
耐性:狂気耐性(Lv Max)神秘耐性(Lv Max)
不老耐性 不死耐性(Lv4)←聖耐性(-Lv Max)
戦闘技:獣狩りの技法・ギミックブレイク←
魔法:闇魔法(Lv3)←
奇跡:死者の贈り物・病を呼ぶ霧
呪術:這い寄る白蛇・呪炎・禁呪・九墨蛇
加護:アザーの加護 夜刀神の加護
従魔:祟り神(親密度19%)
固有スキル:鋼の探求心 浸食 冒涜者 閉心
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不死耐性(Lv4)
①傷や病気の治りがとても早くなる。
戦闘技
①ギミックブレイク
・E・ショット…MPとHPを消費し強力な魔弾を放つ。
魔法
①闇魔法(Lv3)
・ダーク・レイ…ダークの上位魔法。闇属性の無数の黒閃を放つ。威力は術者の魔力に左右される。(上位魔法習得しダーク使用不可)
・グラビティ・レイ…グラビティの上位魔法。術者の周囲に重力球を展開する。使用中はMPを消費し続け圧力は術者の魔力に左右される。(上位魔法習得しグラビティ使用不可)
・ナイトメア…フィアーの上位魔法。敵を恐怖と悪夢で錯乱及び発狂させる。自身より弱い相手に効果が高い。(上位魔法習得しフィアー使用不可)
呪術
①禁呪・九墨蛇
契約した祟り神の力。自身の右腕から数多の黒蛇を操りより多彩に扱える。
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「…はぁ…はぁ…」
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名刀・金剛鞘の大太刀
・浸食の効果発動により名刀へ進化。斬れ味・威力・間合いを強化。
破鎚・リッタァブレイカー
・浸食の効果発動により破鎚に進化。威力・爆破を強化。
魔弾・ケーロン
・浸食の効果発動により魔弾に進化。連射機能を強化。
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「…ふぅー…レベルアップ、か。魔法と戦闘技…呪術も増えてる。不死耐性が上がったのはありがてぇ…」
腰袋の口金を開き死骸と素材を集め座り込む。
…危なかった。死にそうになったけど…人形はちゃんと返せそうだ。少し休んでから村へ戻ろう。
噛み傷が痛くて動けそうにない。




