クエストに行こう。②
〜午前7時10分 南ベルカ街道〜
転移石碑で移動して早々に討伐対象のバロウルフと遭遇。
「ダーク」
放たれた黒球が当たると唸る間も無く倒れた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…」
依頼は五匹だが十匹のバロウルフを討伐していた。
徒党を組んで襲うタイプのモンスターだが神樹の森のモンスターより弱い。
ーーバロウルフ×10を討伐ーー
ーークエストを達成しましたーー
メッセージが表示されクエスト依頼の達成を告げる。
死骸と素材アイテムを腰袋に収納し次の依頼に向けマップを確認した。
「薬草と鉄鉱石は…と」
マップ上には無数の青いマークが確認できた。
「先ずはFランクの依頼から達成してGランクだな。近場の所へ行ってみよう」
〜午前8時 南ベルカ街道 森〜
森に入り雑草が茂ったマーカの位置まで行くと見慣れない草が生えている。
「…これが薬草?」
鑑定してみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
薬草
・どこにでも生える薬の材料になる草。
他の素材と調合し回復薬になる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「当たりだ!」
薬草の根元をナイフで切り採取した。
〜15分後〜
「こんなもんだろ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
・薬草×15
・ベルカの薬草×6
・ベルカの薬蕾×3
・ベルカの薬花×1
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー薬草×15を採取ーー
ーークエストを達成しましたーー
鋼の探求心のお陰で次々と薬草を発見できた。薬草の他にもアイテムを見つけたし。
「ベルカの…まあ、いいや」
最後は鉄鉱石だ。
〜午前8時40分 南ベルカ街道 森の岸壁〜
マーカーはこの岸壁を示している。
とりあえず掘ってみよう。
「ケーロンさん。ピッケルを使わせて頂きます」
岸壁にピッケルを振り下ろす。すると鈍い色をした石が壁から顔を覗かせた。
取り出して鑑定をしてみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鉄鉱石
・岩盤や岸壁を掘ると見つかる鉄を含んだ鉱石。
さまざまな用途に使える素材。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よしよし。この調子で掘るぞ」
〜30分後〜
「これでよしっと」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
・石ころ×30
・銅鉱石×4
・鉄鉱石×9
・魔鉱石×4
・魔石(中)×2
・ベルカルビー(小)×2
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーー鉄鉱石×9を採取ーー
ーークエストを達成しましたーー
鉄鉱石以外のアイテムも多数拾った。
Fランクの依頼はこれで終了だ。対象外のアイテムはあとで鑑定しよう。
次はいよいよGランクの依頼だ。難易度が高いらしいし頑張らなきゃな。
村の位置を確認する。
「ここから近いのはプーカ村か」
先にプーカ村に行く事に決めた。
ーー特製ポーション×15を納品ーー
ーークエストを達成しましたーー
「…お。あのポーションでも大丈夫だったんだな」
特製ポーションも納品されクエストを達成できた。
よかったよかった。
〜同時刻 ギルド総本部 金翼の若獅子〜
「ーーはい。ではベルカ孤児院までの配送をよろしくお願い致します」
配送業者に特製ポーションが梱包された箱を渡すフィオーネ。
「フィオーネさんおはよー!」
「メアリーちゃん。おはようございます」
「うーっす」
「おはようございます。今のは配送業者ですか?」
「ラッシュ君にボッツさんもおはようございます。…ええ。実はーー」
〜5分後〜
「えええええ!!ユウさんが一人でGクラスのクエストにっ!?」
事情を聞いたメアリーが叫ぶ。
「……はい」
「マジかよ。ソロで行くとか半端ねぇ」
「起きたらいなかったので冒険者ギルドにいると思ってましたが……アルカラグモの説明はしたんですよね?」
「ええ。止めたのですが…やるだけやると仰って行かれました。……実は皆さんにお聞きしたい事があって…。悠さんからGランクの依頼で万能ポーションの代わりに納品されたポーションがあったのですが…鑑定士に鑑定を依頼した結果、錬成品のポーションで非常に薬効が高いポーションでした。そんなポーションを15個もすんなり用意出来るとなると…錬成師か錬金術師の方としか思えません。何か伺ってますか?」
「俺も初耳です。自分のことを聞かれるのが嫌みたいで…ただ…田舎者だと」
「ユーさんってちょっと変だよな。ギルドカードは知らねーのにモンスターディッシュも作れたりさ」
「…魔物料理。…調理できたのですか?」
「昨日、作ってくれたぜ。めっちゃうまかった」
「それよりアルカラグモだよ!ユウさん一人じゃ…」
「ですので…私からも副GMに経緯と事情を説明し高位ランクの方に救難依頼を出しました」
「…無理はしないでユウさん」
そんな心配を露知らず悠はプーカ村へ向かっていた。
〜午前9時50分 プーカ村〜
プーカ村の第一印象は素朴な田舎の村。しかし畑を見ると作物が無残に食い荒され酷い状態なのが分かる。
村長宅に向かい依頼主のダダンさんから話を聞いた。
「あぁ…わざわざ…ありがとうございます…」
尻尾の生えたよぼよぼのお爺さん。土と泥で汚れた服が悲壮感を漂わせる。
「この村に…ブードゥラットが現れてから…農作物を食い荒らされ……追い払っても追い払っても……あの悪魔は毎日やってくるんじゃ…。満足にギルドへ依頼料も出せない村じゃが……儂らの大切な村なんじゃ。どうか…どうか…一匹でも多く…」
「…分かりました。全力を尽くします」
「詳しい話は倅のピエールがします……よろしくお願いします…」
〜午前10時 プーカ村 葡萄畑〜
「村で唯一、まだ荒らされてない畑があれでさぁ。村の男が交代で見回りしてっが…ほら」
木の柵の向こうから数匹程、毛のないハゲネズミのモンスターがこちらの様子を伺っていた。
ーーチッチッ。
「あんな風に隙を伺っとるんですわ…。一匹でも殺しゃ当分は畑に近寄らんくなるらしいでさぁ」
「(動きが早いんだっけ…サーチっと)」
ーー対象を確認。ステータスを表示ーー
名前:ブードゥラット
種族:魔鼠 Lv1
戦闘パラメーター
HP10
敏捷2500
戦闘技:瞬足
固有スキル:魔鼠の嗅覚・気配察知・逃げの一手・危機察知
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
世界中に生息してる鼠型のモンスター。
非常に弱いが恐ろしく素早い。大抵の攻撃や魔法
を回避する。危険を察知する能力にずば抜けてお
り一定の距離を保ち逃走可能距離を熟知している。
反面、軽く殴っても死ぬ。また一匹でも仲間が死
ぬとその場所を恐れ当分近寄らない。
群れで生活しており気に入った餌場付近に巣を作る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…糞みたいな害獣じゃん。どうするか…近寄ってもダメだし銃で撃って…ん、待てよ。これはいいかも。
「ピエールさん。皆さんも。家に帰って頂いていいですよ。あとは任せてください」
「大丈夫なんでさぁ?」
半信半疑な目。だが信じて貰うしかない。
「絶対とは言えませんが……見張りを続けてもブードゥラットがいなくなる訳じゃないでしょう?」
「……」
村の男達がピエールさんに促され家に帰っていく。
〜数分後〜
「(よし…誰もいないな)」
「フィアー」
ブードゥラットに向けて闇魔法フィアーを放つ。
ーーチュッ!?
ーーチッチッ?
ーーチーッチーッ!
「おぉ!効いてる」
自分より弱い敵を恐怖で錯乱させる闇魔法。こいつらには効果抜群だ。錯乱状態で怯えた様に動かない。
そしてそこからの…。
「病を呼ぶ霧」
赤い霧が柵の向こうのブードゥラットを包む。
ーー…ヂィッー!!!
甲高い鳴き声を挙げ…一匹、また一匹とマップの赤いマークが消えていく。
霧が晴れた頃には踠き苦しんだブードゥラットの死骸と素材が落ちていた。
ーーブードゥラット×6を討伐ーー
ーークエストを達成しましたーー
ーーーーーーー
MP1480/2000
ーーーーーーー
ファアーと併せてこのMP消費量なら這い寄る白蛇より燃費は良いな。
「…あー…死骸をポーチに入れたくねぇ。…でも見せなきゃ村の人も信じてくれないよなぁ」
渋々、腰袋に収納した。
マップを見ると北に少し進んだ箇所に小さな赤いマークがうじゃうじゃと点滅している。
「巣も駆除した方が村の人も嬉しいよね」
木の柵を越え北に進む。
〜10分後 村外れの林 ブードゥラットの巣〜
林の中で重なった枯れ木の下に巣穴を見つけた。
…流石に穴が小さ過ぎる。どう駆除するか悩んでると錬成炉で精製したアイテムを思い出した。
「えーっと…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
猛毒瓶×11
・錬成炉で錬成した猛毒瓶。
高い毒性があり液体に触れると高確率で猛毒になる。猛毒状態で他者や他生物に触れると猛毒状態が感染する。扱いには注意すること。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…扱いに困ってたが処理するチャンスがきたな。
穴に猛毒瓶を全部、落としてみた。落とした後は穴を大きな石で塞ぐ。
程なくして赤いマークが次々と消えた。
時折、塞いだ石を退かそうとブードゥラットが衝突するが石は動かない。そして最後のマークが消えた。
猛毒状態のブードゥラットが巣で動きまくって感染を広げてくれたのだろう。
「そのまま土の肥やしになってくれ」
さーて…村に戻ろっと。
〜午前10時40分 プーカ村〜
「お…おぉ…!ブードゥラットを退治してくれたんじゃな……」
死骸を依頼主であるダダンさんに確認してもらう。
「北の林の中に巣もあったので巣も駆除しました。これでブードゥラットに悩むことはないですよ」
「…ほ、ほんと…ですか!?」
「え、ええ」
「ありがとぉ…ありがとぉ……!…これで村の者も…安心して農作業ができます…金も…払えんのに…ありがとぉ…」
ダダンさんは俺の手を握り涙を流しながら感謝の言葉を口にした。手は傷と皺に土が染み込み汚れた手…今までの苦労を物語っていた。
「また何かあれば依頼を出してください」
「…旦那ぁ。名前は?」
「黒永悠です」
「……ユウさん。疑ってすみませんでさぁ。親父も俺も…みんなも…この恩は忘れねぇ」
…感謝されるのは嬉しいが照れ臭くなりむず痒い。
村の人に見送られカナ村へ向かった。




