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威風堂々。④

午後14時27分更新



「もともと13位の地位に未練はない。…ルウラはゆーの方が大事。堂々巡りの会議にも飽きた」


「…傍若無人だった貴女が何故、そう彼に拘るか?」


「理由なんてない。ゆーが好きなだけ」


カネミツの問いに迷いなく答える。


この裏表もない単純な回答に周囲は戸惑う。


「…好きってお前……?」


「もちろん友人のらいくじゃない。らぶのほー」


モミジは別の意味で驚く。


「ゆーはわたしをしっかり見てくれた。…地位も…血統も…だでぃも関係なく…ただのルウラ・レオンハートとして」


「…困った顔で笑ったり…真剣な顔でぶつかってくれたり…甘えると頭を撫でてくれる。…はーとがぽかぽかするの。…傍にいたい。ずっと笑っていて欲しい」


まるで幼稚な告白だが茶化す者は居ない。


ゼノビアさえ黙ってしまう。


度々、不祥事を起こし他人に無関心だった彼女が素直に感情を吐露し真剣だったからだ。


「エリザベートが言うようにないすがい。十三翼がゆーを陥れるつもりなら…」


そこでファスナーを下ろした。


「…誰だろうと関係ねー。悠兄ちゃんの邪魔すんなら…I kill all the members!愛の力は無敵なんだよギャハハハ」


言動と雰囲気が一変する。

この状態になるのは久しぶりだ。


「…くくく。気が合うなルウラよ」


「ふん。恋敵には負けちゃいられねぇーし…べつにエリザベートのためじゃない」


「かっかかかか…おもしれぇ…最っ高の展開じゃねぇか…!『串刺し卿』と『舞獅子』と喧嘩できルなら願ってもねーゼ。表ぇでろヤ!」


「…『冥王』。ちょっとたんま……論点がずれてるにゃん……」


「二人とも落ち着いてくれ」


ミコーとラウラが仲裁する。


「『天秤』よぉ邪魔すんナ……俺も会議に飽き飽きしてんダ。平和的に納めようとすっから話が拗れんだろーが!?武力で決着が付くなラ是非もねえだロォ!」



「いい加減になさい」



「うわっ、ちょっ…『零凍アプリュード』はやめてっス!」


「(…さ、寒いっ…!?)」


モミジは体を震わせる。


一触即発だった三人を中心に氷の粒が煌めいた。急激に周囲の温度を下げていく。


「お前らな〜…話はまだ終わってねぇーぞ。ゼノビア」


「はい」


ゴウラが声を掛けると冷気は止む。


「ったく。ーーでラウラ。反対意見は以上か?」


「…最後に僕が残ってる」


ラウラはエリザベートとルウラを一瞥し立ち上がる。その瞳には後は任せろと強い意志が込められていた。


「……」


直ぐには喋らない。


敢えて沈黙することで注目を集める。


これはれっきとした演説の手法の一つだ。


「……ここまで様々な反対意見を皆に言って貰った。職人ギルド…商人ギルド…他の冒険者ギルド…今こうしてる間も『金翼の若獅子』のギルド職員や所属登録者ギルドメンバー…果ては無所属登録者フリーメンバーまで彼のために制裁処置の反署名活動をしている」


静かによく透る声だった。


「決して強制したわけじゃない。…確かに『巌窟亭』にも『オーランド総合商社』にも…ガンジにも…ソーフィにも僕が声を掛けたが皆、自由意志でこの場に来てくれた。これが何を意味するか…答えは簡単だ。悠が信頼できる人物足る証さ」


「仮にこの中の誰かが同じ立場になったらこうまでして貰えるかな。…派閥に関係なくここまで動いてくれると…自信を持って言えるか?」


答える十三等位()は一人もいない。


「ユーリニス。君は脅迫じみた反対意見に感情論と言っていたな?僕も否定はしない。…でもエリザベートにそう言わせてしまう程、悠には価値があるんだよ」


「…ふん」


ラウラの眼差しは冷たい。


「僕が…いや、僕達が言いたいのは彼はこの短期間でずっと困難に立ち向かい…他人の為に尽力したが見返りは一切、求めなかった。…だからこの場で悠に代わり見返りを求める」


「…契約者の身の上を考慮した上でギルド総本部『金翼の若獅子』は寛大な措置をすべきだ!」


「得体の知れない力を警戒する気持ちは分かる……けど!オルティナの命を…身を削って救った悠が非難されるのは間違ってる!…はっきり言うが副GMとして…彼の友人として……この件に関しては断固、引き退るつもりはない!!エリザベートとルウラが言ったように…必要なら袂を別ち闘う覚悟は出来てる」


力強い訴え。


かつてラウラがこうまで自己主張した事はない。


中立、公平、平等。


自分を犠牲にし仲を取り持つのが常。


役職も地位も失っても構わないという意味を込めた上での発言である。


「……くはは。ここまでくると笑えてしまうな。十三翼の内、7位と11位…13位と此処に居ない6位(ベアトリクス)も含めれば四名が彼の虜だ。随分と女ったらしと言うか…人たらしというか…」


小馬鹿にした言い方だ。


「〜〜っ!!…全ての発端は貴様だろうっ!?その軽口を二度と叩けなくしてやるっ!」


「発端?言い掛かりは止めて貰いたいな」


「まてや。エリザベートもユーリニスも黙れ」


ゴウラが二人を止める。


「…ふー。まあよ、たしかにここまで査問会はなしがまとまらねーと結論が決まらねぇしずっと平行線だ。……仕方ねーからこっから先は俺が仕切る。異論はねぇな?」


「最初からそーすればよかったじゃない。…揉めるのは分かってたでしょ〜」


「…普段は好き勝手してっし偉そうに口うるさく言いたく無かったんだよ。ソーフィも察しやがれ」


ばつが悪いのか頭を掻く。


「驚いた。ご自覚があったのですね」


「うっせぇ。黙ってろゼノビア」


「『金獅子』殿。どう裁くおつもりか早う聴かせて欲しいのだが」


カネミツが急かす。


「ん、おう。先に言うけど横槍は入れんなよ。エリザベートもユーリニスも黙って聞け。他の連中もだ。…これはGMとしての命令だからな」


「……分かっている」


「勿論、私は従うさ」


「リョウカイ」


「ケッ…結局、こんな流れかヨ」


「承知」


「…にゃふ…」


全員へ釘を刺す。そして、語り出した。


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