責任と追求。④
〜闘技場前 広場〜
広場へ行くと十三等位の他、金翼の若獅子に所属する所属登録者達が集まっていた。
ミミちゃんにネーサンさん…あれはダンさんか。
他にも見覚えがある顔が勢揃いしている。
「おぅ。遅かったじゃねーか」
人集りの中心で仁王立ちするゴウラさん。
「すみません」
「べつに責めちゃいねぇさ。なぁ?」
「いえ。『灰獅子』と『舞獅子』から今後について聞いていた筈です。…情報の漏洩防止のため迅速に行動する必要があるわ。自分の立場を分かってますか?」
隣で待機するゼノビアさんは違った。
「…ごめんなさい」
「謝れば良い訳ではない」
き、厳しい。
「あー、もう小言は良いだろ。…ちゃんとラウラに話は聞いたんだな?」
「…ええ。しっかりと」
この言葉の応酬の意味を知るのは俺達二人だけ。
「じゃあよー…法律や条例…契約者の人権と制度やらの細けぇ話はいらねーだろ。俺もよく覚えてねーし」
「マスター」
「いちいち怖い顔すんなって……まぁ、とりあえずだ。呼び出すまで家で大人しくしてろ。周辺は交代でSランク以下Aランク以上のギルドメンバーが見張っから。…それと転移石碑も使用不可な。転移許可証は預かるからよこせ」
素直にカードを渡した。
「現場の総監督はベアトリクスだったな?」
「はい」
ベアトリクスさんが返事をする。
「よろしく頼むぜ」
「分かりましたわ」
「…黒永悠。マスターと他数名の十三等位は考えが違いますが私は貴方を危険人物だと判断しています」
「……」
「自宅からの外出・帯同したベアトリクス・メリドー以外の十三等位及び冒険者ギルドのメンバーとの接触はミトゥルー憲法第69条と冒険者ギルド法第19条違反と見做し生死問わず身柄を拘束する。一緒に暮らしている彼女は……特別に接触事項を不問としますが同じく監視対象となります」
「…はい」
「契約者に対する一般的な見解は脅威。それが大前提です。如何に義人であろうと関係ない。留意しなさい」
…辛辣な待遇は過去の事件や歴史的背景も関係しているのだとは思う。
亡国フェミアムを滅ぼしたのも契約者の暴走だってラウラが演説で言っていたのを覚えてるし。
「…ねちねちうるさい『霊獣族』のばばあ。まじふぁっく。自分の行き遅れ具合を留意したほーがいい」
「フルフニー」
ルウラの一言に耳聡く反応したゼノビアさんが呪文を唱える。
「…ん!?んんんーー!!」
強制的に口を閉ざされたようだ。ま、魔法か…?
「静かになりましたね。さぁ、移送車に乗りなさい」
用意された移送車は魔獣馬車と言ってベルカで利用される移動手段の一つ。
前にベルカ孤児院への移動で乗ったモータン馬車も魔獣馬車の一種である。
…こちらは囚人の護送車みたいだけど。
「よぉ『辺境の英雄』。ぜひ違反行為をしてくれヤ。…そんときゃ先陣切ってテメェの討伐に行くからヨォ」
「お前には負ける気がしないけどな」
軽口に嫌味で対抗する。
「カカカカっ!上等ォ……って」
ヨハネの肩を掴み諌めたのは…。
「ケンカダメ。ヤクソクマモル」
「チッ。ただの悪ふざけだっつーの『魔人』」
序列第3位のランカー…デルポ・ポポロ。
遠目では分からなかったが近くで見ると…。
「シジマモル。ハヤクバシャノル」
メタリックブルーの洗練されたアイアンボディ。
節々から排出される煙と駆動音が鳴る。
胸のプレート部分に金翼の若獅子のエンブレムが縁取りされていた。…電子音声みたいな喋り方とこの風貌はどう見てもロボットじゃん。
子供の頃に見た戦隊アニメの合体ロボを思い出す。
うーん…か、かっこいいかも!
「悠?」
「あ、ああ」
先に馬車に乗ったベアトリクスさんが呼ぶ。
…機会があればあのボディを触らせて貰おう。
魔獣馬車に乗り揺られながら第6区画へ向かった。




