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僕と私の英雄。⑧

注)サブタイトルを変更しました。



〜午後15時20分 第7区画 歓楽街〜


煌びやかなネオンの装飾が施されたアーチを潜る。


「活気がすごいな」


第7区画は中央区画に負けない賑やかな区画だった。

商店や飲食店…()()()()()()も所狭しと並んでる。


雑居建築ビルが多く不良やチンピラじみた輩が闊歩していた。


あっちでは客引きが看板を掲げ呼び込みをしてるな。


…新宿の歌舞伎町みたいな所だ。


周囲を観察しながら歩いてるとサングラスのド派手なシャツを着てる犬耳のお兄さんに声を掛けられる。


「へいへーい!帽子とマスクが決まってる兄さん!」


「ん?」


「うちの店で遊んでかなーい?…爆乳で激かわの犬人族ダックスの女の子達がぁ〜天国へ連れてっちゃうよぉ」


「いや、俺は」


「見たらわかるってぇ。…兄さんは第7区画に…歓楽街ベヴンズセブンには初めて来たっしょ?タチのわる〜い奴に騙される前にうちに決めちゃいなよ。『雌犬館ビッチ・ハウス』では初回の新規さんのみ…なんと破格の4000Gぽっきりでプレイ可能!…オプションを色々付けても1万5000Gは超えない良心的なお値段だ。女の子も一級だぜぇ〜?」


「…だから」


「わーってっから皆まで言うなって。その格好ナリを見りゃピーンっときちまった。冒険者で仕事一筋……さぞ女っ気がねぇ生活なんだろ?…その歳で未経験だって誰も笑いやしねー。うちのかわいい嬢たちがやさしぃ〜く!快楽の高みへ連れてってあげっから」


「……」


「蓄えた体力と漲る性欲を解放しちゃいなよ〜」


ピースサインでポーズを決める犬耳のお兄さん。


「…すまないが俺は仕事で来たんだ。冒険者ギルドの『リリムキッス』に用がある」


その一言にあからさまに落胆し肩を落として溜め息を吐いた。


「……ハァ〜…はいはい。『リリムキッス』ねぇ〜。有名だもんねぇ〜…新しい客を見つけっか」


「そんなに有名なのか?」


「とーぜん!…『リリムキッス』は歓楽街セヴンスベヴンの華さ。冒険者ギルドへの依頼者以外でも女目当ての客で常に賑わってっし。兼業してる接待クラブの『妖精の唇(フェアリー・キッス)』は超有名だぜ。いろんな種族の美人が選り取り見取りってやつぅ?ママのソーフィは歓楽街ここの顔役の一人だし」


思いがけない追加情報を手に入れた。


「場所を聞いてもいいか?」


「まーっすぐ行けば『夜蝶の集い』って歓楽街の中央広場に着く。その一帯を占めてるでっけぇ看板の店が入り口だから行けばわかるよ」


「ありがとう」


「どーいたしましてぇ〜…ちっ…タバコが切らして」


「一箱やるよ。道案内の礼だ」


タバコを投げ渡す。


「…おぉ〜!サンキュ〜。兄さんさぁー…次はうちにも遊びきてよぉ。サービスすっからさ!オイラはジョッシュ。覚えといて」


「俺は黒永悠だ。またなジョッシュ」


夜蝶の集い…もとい中心広場を目指し歩いた。



〜数分後〜



「…ん?クロナガ…クロナガユー…どっかで聞いた名だな…。たしか……え!マジか」


ジョッシュが呟く。


「あれが噂の契約者で…Sランクの冒険者の…!?うわぁ〜……超有名人じゃん。くっそ!大物を逃しちまった」


タバコをふかしぼやく。


「…にしても冒険者かぁ。()()()()()()()()()は元気かねぇ。…風の噂じゃ『金翼の若獅子』に所属してBランクになったっつー話だけど」


揺らぐ煙を眺めながらジョッシュは呟いたのだった。



〜午後15時40分 第7区画 夜蝶の集い〜



「へぇー…綺麗じゃん」


ぼんやりと光る不思議な花木(かぼく)を囲む噴水設備。


色鮮やかな蝶々が周りを浮遊している。


時間で噴出される水と蝶の共演は幻想的で恋人との待ち合わせ場所には最適な印象だ。


…実際は露出が激しい女達と客っぽい男達で溢れ返っているけど。


正面の建物に掲げている蛍光の装飾が施された看板には流暢な筆記体でリリムキッスと文字が羅列されている。…夜になればさぞかし光って目立つだろうなぁ。


中に入ろう。


ドアボーイの二人が会釈し扉を開けてくれた。



〜リリムキッス エントランスホール〜



「おぉー」


大理石を磨き敷き詰めた床。


天井にぶら下がる絢爛豪華なシャンデリア。


…目が眩みそうになる。


壁には女性キャストの顔写真のパネルが貼ってありジョッシュの言う通り美人揃いだ。


金翼の若獅子とは違う方向で豪華なギルド……ってかやっぱりキャバクラじゃん!


ベルカから少し離れた農村との格差がすごい。


…ファンタジーな異世界ではこれが普通なのか?


内装に圧倒されつつ受付に足を運ぶ。



〜 リリムキッス 受付カウンター 〜



洒落た制服を着た苦味走る中年の亜人デミの男性。


執事か支配人って言葉がしっくりくる。


「いらっしゃいませ御客様。本日の御用件は冒険者ギルドへのご依頼でしょうか?」


「違います」


「フェアリー・キッスでキャストの接待をご希望でしょうか?…生憎と開店時間は午後19時からと決まっておりまして」


「いえ。ソーフィさんからソロオーダーを受注して来ました。名前は黒永悠です」


「……おぉ!貴方様が有名な『辺境の英雄』の…これは失礼致しました」


「……」


辺境の英雄って呼ばれるのが恥ずかしい。


「GMから話は伺っていますよ。二階が冒険者ギルド『リリムキッス』の正式なギルド施設となっています。右通路を進み階段を登って下さい」


「わかりました」


「申し送れましたがわたくしは冒険者ギルド『リリムキッス』並び『フェアリー・キッス』の総合案内人を務めているギルド職員のミネレと申します。…以後、お見知り置きを」


丁寧なお辞儀に釣られ会釈する。


リリムキッスの本拠地であるニ階へ向かった。



〜リリムキッス 二階〜



「こんにちわー…」


階段を登り扉を開ける。


中には様々な種族の亜人デミの女性達が居た。


勇猛会は和風で…例えが悪いが暴力団の組事務所みたいな印象が強かったがリリムキッスは違う。…お洒落なカフェとゆーか…依頼書の張り紙や掲示板もポップで…家具や備品も女性向けだ。


上手く表現できないが男厳禁の女の花園みたいな?


…それにしても目のやり場にも困るな。


肌の露出した布面積が少ない体のラインを強調したミニスカートの制服。各々、独特のアレンジで制服を改造してるのも特徴的だが…それがまた男を惑わせる悩ましい官能エロさを醸し出しているのだ。


この空間に男一人だけってのが辛い。


俺を見てひそひそ話をしてる。


「あらぁ〜。悠ちゃ〜んってばぁ…よーやく来てくれたのねぇ〜。んもう!お姉さんを焦らしてぇ…い・け・な・い・子」


黒のミニドレスに身を包んだ魔性の美女…リリムキッスのGMであるソーフィさんが現れた。


「…は、はは。ご無沙汰してます」


「演習場での活躍ぅ…見てたわよぉ。…それにぃ…エンジちゃんも救ってくれたってねぇ〜。…私もぉー…ガンジとはぁ…長い付き合いだからぁ…感謝するわ」


「そうなんですか?」


「えぇ」


…二人とも独立する前は金翼の若獅子の十三等位だったってラウラが言ってたな。


「もっとぉ悠ちゃんとぉ…お話ぃー…したいしぃー…ソロオーダーの依頼詳細もあるからぁ…こっちきてぇ〜」


「はい」


奥の個室へと案内された。



〜リリムキッス 二階 来客室〜



「座ってぇ」


促されピンクのソファーに座る。


「はーい。入ってきてぇ〜」


ソーフィさんが二回手を叩くと制服を着た二人の女性が入室した。


「初めましてぇ!リリムキッスの副GMをしてる狐人族フォックスのエイル・セバスチャンですよぉ」


エイルさんはセミロングのパーマが似合う狐耳でふさふさの尻尾が特徴的なダイナマイトボディの美女。


「あたしは『猫人族(キャッツ)』のシャーリィ・ニャルトラテップ。リリムキッスのNo.3っス」


シャーリィちゃんは猫耳で尻尾が生えた青い長髪にメッシュが入っている美少女。


…ほんっと女の人は美女と美少女ばっか。


なんなんだ異世界パルキゲニア


毎回だが顔面偏差値の基準が高過ぎなんだよ!


「失礼しますよぉ」


「となりに座るっスね」


俺の両隣に座る二人の距離がやたら近い。


「お酒注ぐっス」


「どうぞですよぉ」


断る間も無く慣れた動きで琥珀色の高そうなお酒をグラスに注ぎ手渡しされる。


…っつーかグラスと酒瓶はどこから出した?


「ど、ども」


「うふふぅー。緊張してるのぉ?」


「まぁ…」


「やだぁ!かーわいいですよぅ」


「強いのにウブなんて素敵っス〜」


……やり辛い。


「悠ちゃんはぁ世間知らずってぇ…噂はぁー…本当かしらぁ?」


「はい。田舎育ちなもので」


「気ぃを〜悪くさせたらぁごめんねぇー。…でも色々とぉ…不思議ちゃんだからぁ。鍛治職人としてのぉ…ウェポンバフの武器製作ができるぅ技術力…とぉーっても効果の高いポーションを何個も作っちゃう錬金術の知識量…今まで話題に上がらない方がぁおかしいでしょう?」


「……」


「二ヶ月前にポッと現れてぇー…これだけぇー…有名になるぅんだものぉ〜。気になっちゃうわぁ〜」


「別に普通の男ですよ」


俺の顔を真っ直ぐ見るソーフィさんが唇の端を上げ微笑む。


「悠ちゃんってぇ隠し事が下手ねぇ」


「…はい?」


「気にしないでぇ。これ以上のぉ…余計なぁ詮索はぁ…嫌われちゃいそぅだしぃー…もうやめとくわぁ〜」


気になるわい。


「なんでそう思ったんですか?」


「うふふぅー…経験かしらぁ。何百、何千と男にお酒を注いで相手をしたからぁ〜…嘘と隠し事ぉにはぁー…敏感なのよぅ。…悠ちゃんは()()()()()の秘密がありそうなぁー…匂いがするのぉ」


……この人も只者じゃないな。


「まぁまぁ〜。警戒しないでお酒を飲んでくださいですよぅ」


「そーっスよ!女が注いだ酒を飲まない男は男じゃないっスよ〜?」


触れるか触れないかの距離で二人が甘く囁く。


「……」


一気に飲み干した。


「おぉ〜!いい飲みっぷりっスねぇ」


「おっとこらしいですよぅ」


……まぁ、いい。俺は依頼を果たすだけだ。


「…そろそろ依頼の詳細を聞かせてくれますか?違法薬物が関わってるって聞いてますが」


「ふふぅ〜。せっかちさんねぇ…シャーリィ」


「はぁーい!実はですねぇーー」


シャーリィさんが説明を始めた。



〜10分後〜



「ーーってなわけなんですよぉ」


「……」


依頼の詳細はこうだ。


リリムキッスは冒険者ギルド兼接待クラブを運営する女性冒険者メンバー中心の希有なギルド。


特性上、客や他冒険者ギルド所属の冒険者から情報が集まり易く秘密裏に第ニ騎士団と協力し犯罪者を摘発する特殊な依頼も請け負っているのだ。


今回の問題はそこ。


…ここ最近、歓楽街セヴンスヘブンでは新種の違法薬物…『RレッドSシグナル』と呼ばれる『違法薬アビス・ポーション』が蔓延している。


地球でいう麻薬や覚醒剤ってとこかな。


その薬を飲むと天にも昇る快感と引き換えに酷い幻覚・幻聴を伴った中毒症状を患う。


原材料が不明な新種の違法薬で従来の治療方法や薬物療法では効果がなく高価な万能薬を使っても一時的に症状を和らげる程度。


中毒者はR・Sを買うお金を作ろうと犯罪行為に走り…またR・Sを買って飲む…その悪循環の繰り返し。


最初は少額で売り捌き段々と値段を釣り上げていく手口は地球で起きる麻薬販売の手口と同じだ。


…元々、良くない治安は更に悪化し遂には幼い子供もR・Sの餌食となってしまった。


早急な問題解決が求められるが騎士団が歓楽街を巡回すれば売人は表に出なくなってしまう。


しかし、数日前に事態は好転する。


違法薬であるR・Sの売買に関わる組織の幹部達をリリムキッスのメンバーが突き止めたのだ。


そいつらはR・Sが歓楽街に出回り始めた時期から毎夜、フェアリー・キッスでキャストをはべらせ豪遊していた輩共。幹部数人はただのチンピラで大した事はないが…厄介な複数の傭兵と用心棒バウンサーを雇っているそうだ。


何故、それが分かったか?


……それは突き止めた女の子は瀕死の状態で見つかったからである。


彼女の名前はネム。


Aランクの猛者で相当な実力者にも拘らず、だ。


…現在はあろうことか輩共に第ニ騎士団と協定を結んでる重大な秘密を知られ脅迫も受けている。


仲間がやられ黙ってる訳にはいかないが迂闊に手を出し秘密を暴露されたら今後の運営に影響してしまう。


そこで第三者の協力が必要となった。


……白羽の矢が立ったのが俺。


筋書きはこう。


明日の夜20時から連中はフェアリー・キッスを貸切りパーティをするそうだ。


無所属の俺が()()に貸切と知らずパーティを楽しむ連中と鉢合わせ。


全員をぶちのめし第ニ騎士団へ引き渡す。


単純で雑な作戦だと思ってしまうが組織全員が揃い優位に立ってると勘違いした奴等を一網打尽にするにはこの機会しかない。


…当初の予定では店の用心棒を個人指定依頼で頼みたかったが来るまでの間に状況が一変したそうだ。


「どうかしらぁ。受けてくれるぅ?」


ソーフィさんが聞く。


「…重大な秘密まで話してくれたのは俺が断らないって分かってるからですよね?」


「うふふぅ〜…演習場でぇ言ってたじゃなーい。悠ちゃんはぁ…困ってる人は見捨てないんでしょお〜?」


お見通しってわけか。


「わかりました。この依頼をお受けします」


糞みたいな悪党を見過ごせないしな。


「やぁーん!助かるわぁ〜…正直に言うとぉ断られたらぁー…すっごい困ったことになってたからぁ〜」


両手を合わせ喜ぶ。


「ソーフィさんは元『金翼の若獅子』の上位級ですよね。厄介な相手でも難なく勝てそうな気がしますが…」


「うふふぅ〜…いい女には秘密がつきものなのよぉ〜。…悠ちゃんが所属してくれるならぁー…話してあげるわぁ」


「いえ、大丈夫です」


「即答なんてぇ意地悪ぅー…ショックぅ〜」


「えー!でもユーさんってぇすっごく強い契約者なんですよねぇ〜。私ぃ…一緒に働いてみたいなぁ〜?」


「あたしもっス。…頼れる男がいなくてぇ…みんな心細いんっスよぉ」


上目遣いで甘える口調と男心を擽る一つ一つの仕草。


自分達の魅力をよく理解してる。


「……」


…しかし、だ。


普段からアイヴィーの純真無垢な笑顔や仕草に慣れてる俺には通じない…うん。通じないぞ。


「す、少し離れてくれ」


「…もしかして照れてますぅ?…かーわいい〜!えへへ〜。お兄さんに甘えちゃっおかなぁ」


「エイルばっかずるいっスよ〜。あたしも〜」


…ちくしょう可愛いじゃねぇか!?


貢ぐ男の気持ちがわか……っていかんいかん!


しっかりしなきゃ。


「…俺は客じゃない。君たちも普段通りで構わないぞ。わざわざ気を遣わなくていい」


その一言に二人はちらっとソーフィさんを見る。


「うんうん〜。悠ちゃんがぁ…そぉー言うならぁー…いいんじゃないかしらぁ」


愛想良く笑ってたエイルさんが眉間に皺を寄せ離れる。


「あー…だるっ!笑ってんのも疲れるわぁー。…あぁ〜?なに見てんだよおっさん」


…え!?


凄い勢いでソファーの端まで後ずさるシャーリィ。その顔は怯え汚い物を見るような眼で俺を見ていた。


「うぅ…あたしに…ち、近付かないで欲しいっス…」


…は!?


「いちいちビクついてんじゃねぇーっつーの。シャーリィちゃんよぉ〜」


「ご、ごめん!…で、でも…このおじさん…契約者でヤバい人なんっスよね?…や、やっぱ怖いっス!」


お、おじさん…。これが素の彼女達なのか?さっきまでの二人の姿が脳内で音を立てて崩れていく。


「ちっ!タバコ…タバコ…あ。さっきの最後の一本だったわぁ。買いにいくのめんどくせぇー」


「……良かったら吸うか?」


箱を差し出す。


「お!気ぃ利くねぇおっさ〜ん。さんきゅ……プハァ〜」


「え、エイル。女の子なんだし…た、タバコは体に悪いっスよ?」


「うっせ」


な、なんだかなぁ。


…でも、さっきの二人も確かに可愛かったが俺は素の彼女達の方が親しみが持てる。


やっぱ演技は演技ってことだな。


「うふふぅ」


…ソーフィさんは底知れない感じがするけど。



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― 新着の感想 ―
[一言] ニャルトラテップとか何か混沌を呼びそうな名前ですね〜。 いや、確かそれはにゃるらとt..... ここで文章は終わっているようだ...
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