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僕と私の英雄。⑦

7月25日午前7時45分更新

注)サブタイトルを変更しました。


〜扉木の月10日〜


ガンジさんの依頼を達成した翌日。


昨晩、顛末をアルマとアイヴィーに説明した。アルマは性別が変わった事に驚いてはいたが…。


『命が助かったんだから良かったじゃない』


…あっさりとしていた。そんなもんだろうか?


因みにエンジが俺の弟子となった経緯を喋ったら大爆笑。アイヴィーは…。


『その子は私のおとうと弟子みたいなもの。面倒を見てあげなくちゃ』


嬉しそうだった。エンジの方が歳上なんだけどね…。


約束通り奮発して準備した夕飯は瞬く間にアルマとキューの腹に消えた。本当に健啖でよく食べる。


俺もすっかり家事全般が得意になっちまったなぁ。


…っとそうこうしてる内に金翼の若獅子に着いたな。


依頼達成の報告に…あれ?


フィオーネが走ってきた。



〜午後14時 金翼の若獅子 一階フロア〜



「ーーーゆ、悠さん!」


随分、慌ててる。


「緊急事態か?」


「いや…その……ある意味、緊急事態なんですが…兎に角、私と一緒に執務室に行きまし」


「あ、来たぞ!」


「…おぉ。あの人が…急げ!先を越されるな!」


「ユウ様ぁ〜」


冒険者メンバー達がこぞって此方へ走って来る。


「え」


「お、おれはDランクの冒険者でヤンって言います!おれもユーさんの…『辺境の英雄』の弟子に!」


…はぁ!?


「炊事洗濯家事雑用…なんでもする〜。だからあなたの一派に加えて下さいな〜」


一派…!?


「ユウ様のご活躍は昔から知ってます…どうか…どうか…あたしを導いて!」


導く……!?


混乱する俺を尻目に皆がやいやい騒ぐ。


「こほん」


フィオーネが咳払いをする。


全員が注目した。


「皆さん。悠さんは副GMギルドマスター個人指定依頼ソロオーダーの件でお話が御座います。…ここは一度、出直して頂けますか?」


「わ、わかりました」


「それは…うん」


「ちぇ」


渋々だが去っていく。


丁寧な口調と優しい笑顔でああ言われたら退かざるを得ないよな。


「…今のは一体…?」


「…えーっと…あはは。取り敢えず執務室に行きましょう。ラウラ様もお待ちです」


フィオーネと一緒に昇降機に乗って移動した。



〜午後14時15分 八階 GM執務室〜



「悠さんをお連れしました」


「あ、来たね」


「くくく。来たぞ」


「はろー」


ラウラだけでなくルウラとエリザベートも居る。


「よう」


「昨日、午後にガンジが報酬金を持って来てね。…悠が家族を救ってくれたって言ってたよ」


「あー」


「その点で不明瞭な点が多くてさ。…息子が娘に変わったとか…魔漏病なんて病気はなかったとか…渇流放魔体質って特異体質だったとか…君が娘を弟子にしたって…べた褒めだったんだけど……状況がいまいち分からないんだ。説明してくれるかな?」


「うむ。魔漏病は不治の病と聞く難病だ。それを治療したとなると一大ニュースだぞ」


「ゆーが弟子をとったって大騒ぎぃ。それってなんの木ぃ?気になる木!」


どっかで聞いたことがあるキャッチフレーズ。


「…それはだなーー」



〜数分後〜



四人に経緯と顛末を説明した。


神樹やアルマについては伏せる。アルマも騒がれるのは嫌いっぽいし。


いつか話したい時に自分から話すだろう。


「…驚きだ。魔漏病の原因を解明して…性別すら変える薬の錬成…。歴史に名を残す著名な錬金術師でさえ成し遂げてない偉業だよ!」


「違いない。その薬はまた作れるのか?」


「んー…どうだろ。アイヴィーに手伝って貰ったし…偶然の産物ってゆーか…」


エリザベートの問いに言葉を濁す。


「…立証できないのが残念だな。さすれば更に名を轟かせたろうに」


「今でお腹いっぱいだよ。…あ!さっきの一階の件って…もしかしてそれが関係してるのか?」


「えっとですね。…実は昨日、自分の娘が悠さんに弟子入りしたとガンジ様が職員や知人の所属登録者ギルドメンバーに…その…自慢されまして。すぐ噂になって広まっちゃったんです」


…自慢しちゃったのかー。俺に師事したなんて自慢にならないだろうに。


「ふふ……それで噂に尾ひれがついて話が大きくなったんだね」


「尾ひれ?」


「いえす。遂にゆーが自分のギルドを設立するって噂がわさっぷ。めんばーを募集してっから弟子や希望者を募ってるめーん……って感じ」


誰も募集してないし独立もしないメーン。


「エンジが弟子になったのは流れってゆーか…約束ってゆーか…とにかく!俺は今まで通りだ」


「あははは。悠の口から直接、聞けて安心したよ。気が早いことにギルド設立に関して市役所や各関係機関からも問い合わせが殺到してたんだ。僕から断っておくね」


広まるの早すぎぃ!……噂って怖い。


「……くくっ。にしても弟子か。まあ、悠ほどの実力者ならば可笑しくはないが…新たな勢力が誕生かと他の上位陣の連中は気が気でないだろう。…特に『瑠璃孔雀』と『魔人』辺りは」


「弟子一人ぐらいで大袈裟だろ」


「……当然、自覚は皆無でしょうが…契約者で上位級トップランカークラスの悠さんとAAランクのアイヴィーちゃん…。それに『勇猛会』のGMと懇意となった段階で最早、一介の無所属登録者フリーメンバーの域は逸脱してます。……ラウラ様とルウラ様とエリザベートさん…騎士団に『巌窟亭』と…『オーランド総合商社』とも内外問わず信頼されてる冒険者は悠さん以外に居ません」


「君のこれまでの活躍はしっかり評価されてるんだ。影響力が無い筈がないよ」


フィオーネの言葉にラウラが同調する。


全くもって興味がない。


「まぁ、わかった。この話はもういいだろ」


俺の辟易した顔を見てラウラが笑みを浮かべた。


「……ふふ!わかったよ。忘れない内に報酬金を渡しておく。4000万Gだ」


四つの鋼鉄製で鍵付きのケースを目の前に置かれる。


………。


「…『家族の命を救ってくれた恩人には幾ら支払っても足りない。もっと欲しかったら言ってくれ』…だってさ」


「多過ぎだよ」


金銭感覚がバカになりゅう…。


「黙って貰っておけ。金があって困る事はないぞ」


「そりゃそうだが……って反論しても仕方ないよな。断れないし有り難く受け取るよ」


もう気にしないようにしよ…。


ふむ。貯蓄にはかなり余裕があるし……業務用の裁縫魔導具でも買って服とかも自作してみよっかな。レイミーさんに言えば紹介してくれるだろう。


四つのケースを腰袋にしまった。


ーーーーーーーーーー

所持金:1億4250万G

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

冒険者ギルド

ランク:S

ギルド:なし

ランカー:なし

GP:10000

クエスト達成数:51

ーーーーーーーーーーーーーー


生活費も食事代が嵩む程度だもんなぁ…。金の使い道に困るなんて昔なら考えれない贅沢な悩みだ。


「ゆー」


「ん?」


「武器はどんな感じ?ずっと待ってる」


「もう少しで完成だ。エリザベートのもな。時間がかかって済まないが……その分、二人とも気にいると思うぞ。楽しみに待っててくれ」


雪結花に負けず劣らずの渾身の出来になると自負している。


「やふーい!」


「うふふ。ルウラ様ったら嬉しそう」


手放しで無邪気に喜ぶルウラを見てると和むな。


「ほう。期待度が高まるな」


「ごめんね。ルウラは依頼もしてないのに…」


「いいさ」


ラウラも急にプレゼントを渡されたら驚くよなぁ。


……ふっふっふ!楽しみだ。


「お礼はルウラの魅惑のすぺしゃるぼでぃ。お金より価値があるとれじゃー」


「そのまな板に宝の価値を見出すのは悠に酷だぞ。せめて吾程度に成熟した肢体ではないと」


「……前も言ったけど時代はすれんだー。ふぁっとなエリザベートは認めたくないりある。うぇいとがやべぇぜどらぐにーと」


「くくくっ。幼く貧相な獅子族レーベのルウラには脂肪と豊満の区別も付かぬか。医者に眼を診て貰ったらどうかね?」


「どーやら耳まで脂肪で塞がってる。わんすもああげいん?」


火花を散らすルウラとエリザベート。


…みんなちがってみんないい…って有名な格言を二人に贈りたい。


用事も終わったしリリムキッスに行くか。


「そろそろ行くよ。次はソーフィさんの個人指定依頼だな」


「気を付けて行って来て下さいね。…聞けば違法薬物が関わっている案件だそうです」


「違法薬物…」


「確証はないが用心してね」


「わかった」


「それと」


「うん」


「…浮かれて変な遊びはしないようにね。Sランクに相応しい毅然とし慎みある行動を」


「うふふふふ」


「わ、わかってるって」


……釘刺されまくるなー。


ラウラの笑顔とフィオーネの笑顔には圧を感じる。


金翼の若獅子の転移石碑テレポーターから第7区画に移動した。



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