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僕と私の英雄。②

7月17日午前7時18分更新

注)サブタイトルを変更しました。




〜午後14時 八階 GM執務室〜


「ーーうん…うん…。討伐依頼の魔物種別統計書に不備はないね」


「良かった。他に書類はあるか?」


「これで最後だ。悠は仕事が早くて助かるよ」


ラウラに完成した書類を点検して貰った。


「またあったら言ってくれ」


「地球で管理職をしてただけあるよ。僕も休憩にするからお茶でもどう?」


「…お茶はいいや。コーヒーをたらふく飲んだから」


もう胃が悲鳴をあげてる。


「わかった」


ソファーに座り一息つく。


「ふふ。他のランカーやS級にも見習って欲しいよ」


「人には向き不向きがあるさ」


あの社畜業務で培った経験が異世界で活きるとは思わなかった。


「僕は一緒に仕事ができて嬉しいけどね」


それでもラウラの仕事量から比べれば微々たるものだ。…依頼に行く暇もないだろうに。


「ラウラは依頼に行ったりしないのか?」


「僕?…そうだな…最近は滅多に行ってないね。SSランクのクエスト依頼となるとSランクのクエスト依頼以上に発注されないからね。仮に僕がランク以下の依頼に出向けば運営業務が滞るしAランク以上は高位冒険者報奨金ランクボーナスで金銭の保証はされてるけどBBBランク以下はされてないんだ。他のメンバーの仕事を奪っちゃ申し訳ない」


「ふむふむ」


「ギルドに所属すると無所属フリーに比べ…依頼の受注優先度・PTの編成・生存率の向上が段違いだ。安全に労働の対価を受け取る為の所属でもあるんだよ」


「なるほど」


…俺もラウラを真似てSランク以下の依頼を受注するのは控えよう。お金には困ってないしGランク依頼やソロオーダーで充分だ。


「悠は金銭的に困ってないし単独依頼ソロが多いから馴染みがないよね。変わらず孤児院へ寄付を続けるぐらいだもん」


「ああ。貯金には余裕があるぞ。『巌窟亭』や『オーランド総合商社』に行けば仕事もあるし」


なんてたって所持金が一億Gを超えてるからな!


「ふふ。そうだったね」


雑談を楽しんでいるとギルド職員が入室する。


「…失礼致します。今年の『獅子祭』の件でベルカ商工会会長がお見えになりました。四階会議室でお待ちになってますが」


「そうか。今、行くと伝えてくれ」


「畏まりました」


「俺も行くよ。邪魔したな」


「うん。また今度ね……って言い忘れてた。ガンジとソーフィから君宛に約束してた依頼が来てるんだ。個人指定依頼扱いでフィオーネに話をしてある。詳細は彼女から聞いてくれ」


「わかった。約束だし受注しとくよ」


「くれぐれも勧誘には気を付けてね。…特に『リリムキッス』は第7区画の歓楽街で…所謂いわゆる、色街の一等地にある冒険者ギルドだ。……()()()()店も多いけどGMの依頼だし浮かれちゃ駄目だよ」


色街かぁ。第7区画も初めて行く区画だな。


「仕事なんだ。浮かれたりしないよ」


…って言っても俺も男だ。興味が無い訳じゃない。


ちょっと楽し…。


「……」


見透かした冷たい眼差しが痛い。


「さ、さーて。フィオーネに詳細を聞きに行かなきゃ!またな」


「…やっ…り…断…き…監視を…」


不穏な独り言から逃げる様に昇降機に乗り込んだのであった。



〜 午後14時40分 一階 受付カウンター 〜



「お疲れ様です」


「お疲れ」


フィオーネが丁寧に頭を下げる。


「…うふふ。この間、ラウラ様が悠さんを褒めてましたよ。仕事が早くて真面目だって」


「この手の仕事は昔に嫌ってほどしたからな」


「…()()()()。そういう事ですね」


事情を知ったフィオーネが頷く。前より気を遣わずに済むし話がスムーズで楽だ。


「ああ。それとラウラから聞いてると思うが個人指定依頼ソロオーダーの詳細を聞かせてくれ」


「はい。お話は伺っていますよ。こちらが今回のソロオーダーになります」


どれどれ…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クエストランク:ー

ソロオーダー名:牛鬼の悩み

依頼者:ガンジ・フォン・ローゴドリ

報酬金:要相談

内容:俺には一粒種の倅が居るんだが頭を悩ませてることがあってな。……聞けばユウは子供の面倒見が良いらしいじゃねぇか?一度、ギルドへ来てくれ。詳しくはそこで話すぜ。宜しくな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ふむふむ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クエストランク:ー

ソロオーダー名:魅惑の唇の悩み

依頼者:ソーフィ・リリー

報酬金:要相談

内容:はぁーい。ソーフィちゃんでぇーす。最近ねぇ〜うちのカワイイ子たちにぃー…チョッカイをかけるぅー…困ったちゃんが多いのぉ。ちょっとぉ悠ちゃんにぃお願いがあるから〜…あ・そ・び・にきてねぇ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……」


…悩みか。少し変わった依頼内容だ。


「ガンジさんもソーフィさんも依頼の詳細については直接、説明するそうです。受注期限はありませんがどうされますか?」


「…二人とは約束してるし受注するよ。明日はガンジさんの所へ行く。ソーフィさんの依頼はガンジさんの依頼を達成してからだな」


「分かりました。私から『勇猛会』と『リリムキッス』にご連絡させて頂きます」


「助かるよ」


「いえいえ。『勇猛会』の冒険者ギルド施設は第9区画に在ります。転移石碑テレポーターの近辺で看板が掲示されてますので」


「了解」


「『リリムキッス』は」


「ラウラに聞いたよ。第7区画だろ?歓楽街で確か…そうそう!色街の一等地って言ってたな」


「……」


俺を睨むフィオーネ。


「ど、どうした?」


「…ちょっと嬉しそうに見えましたので」


「気のせいだろ」


「へぇー…そうですか。悠さんも男の人ですからね。色街で遊びたいですよね」


疑いの目だ。…浮気を疑われた夫ってこんな気分だろうか。


「し、仕事で行くんだぞ。初めて行く区画だし…」


俺の慌てた姿を見てフィオーネが笑う。


「うふふ!御免なさい…ちょっと意地悪してみました。いつもヤキモキさせられるから…つい」


「ひどい」


悪戯が成功した子供みたく笑いやがって。


…可愛いから許すけど。


「悠さんが仰った通り『リリムキッス』は中心部に冒険者ギルドを構えてます。綺麗な女性メンバーが依頼者や一般客の接客をこなす大人気ギルドですからね」


「メアリーも前に言ってたな」


「気に入った女性を指名し一緒にお酒を飲んで喋ったりするのが楽しいと男性職員が言ってましたよ」


キャバクラじゃん。


「…余り大きな声で言えませんがお金を貢ぎ過ぎて破産したり奥さんと離縁した冒険者や職員も居ますが」


…やっぱキャバクラじゃん。


「普段から美女はフィオーネで見慣れてるからなぁ。ギルドに来れば会えるし。俺にはよく分からん感覚だな」


そもそも店で高い金を払ってまで一緒に酒を飲むのが理解出来ない。一人で飲んでも味は変わんないだろ。


「…そんな…美人だなんて…不意打ちはずるいです……もう悠さんったら!」


「痛い!?」


頰を赤らめ背中を叩かれた


「…うふふ…色街のお店に行かなくたって…わ、私も悠さんが望むなら…何時だって…こ、心の…じゅ、準備は出来てますから」


「?」


一体、何の準備だろう。殴る準備かな?…兎に角、依頼の受注が終わった。明日から行動開始だ。


久々の個人指定依頼だし気合いを入れてこう。


その後、家に帰って鍛冶仕事を進めた。エリザベートのウェポンバフ付きの突撃槍製作は完成の目処が立った。


…残るはルウラの武器の創作か。


プレゼントは大体、完成したしあと一息だな。


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