俺も人なり姫も人なり。終
〜数分後〜
トモエと二人で話した内容について問われ答える。
「只の世間話さ。意外と普通の女の子だったよ」
「…普通、か」
「あれが普通って……ゆーはふぁんとむでも見てる?」
ゆ、幽霊って。確かにトモエの取っ付き難い雰囲気や言い草は認めるが…。
「年頃の女の子ってあんな感じだろ?」
呆れ果てる四人。
「…目が腐ってんじゃねぇよな」
「その辺の機微を察するに悠は疎い。微生物程度にしか情緒が発達してないのだろう」
ひっでぇ。
「ははは。…っと僕らは一度、来賓室に戻ろうか。悠はゆっくり休んだ方が良い。かなり眠そうだよ」
「そうだな。帰って休むとするよ」
「しーゆー!武器を楽しみにしてる」
「モミジ嬢よ。後ほど『巌窟亭』に手続きに行くから宜しく頼む」
「おう。待ってんよ」
「悠も無理をすると体を壊す。自愛せよ」
「わかった」
「またね。…制服は返さなくていい。そのまま持ってて。職員には僕から言っておく」
最後にそれだけ言ってラウラ達は来賓室に戻った。
……所属の件、まだ諦めてなかったのか。
「待ってる間に色々話したけどよぉー。想像と違って話の分かる奴らだったぜ」
「仲良くなって貰えて嬉しいよ」
「…ふん」
実は皆に言わなかった事がある。
あれは来賓室を出てホールに向かう途中だった。
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『挨拶がまだであったな。拙者はカネミツ・トキサダと申す』
『えっと…十三等位の方ですよね?』
『如何にも。背後に控えるは門弟なり』
『どうも』
『……』
『(まんま侍って感じの人達だな…)』
『ふむ。噂は誠であったか』
『噂?』
『気に召されるな。此度の昇格依頼では門弟の中でも選りすぐりの兵を推挙致した。ゲンノスケ』
『……無明一刀流が一派…斎蹉跎流高伝ゲンノスケ・イカリ。修行中の身なれど仕合で相見えるのを楽しみにしておるゆえ』
『お手柔らかにお願いします』
『…要らぬ助言やも知れぬがこれも縁。トモエお嬢には注意されよ。箍が外れると止まらぬ』
『たが?』
『あれは可憐な身の内に鬼を秘める者。覚えておくと良い。ではな』
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よく分からん比喩表現だったが…鬼、か。
「…どうした?顔が険しいぞ」
「いや、何でもない。そろそろ行こっか」
「おう…そうだ。ユウよぉ」
「ん」
「大仕事を片づけて成功報酬金がねぇっつーのも変だろ。報酬金代わりに」
「金は要らないぞ」
「……そう言うと思ったよ。これはオレの個人的な礼だ。受け取らねーって言ったら力いっぱいぶん殴る」
「えぇ」
お礼なのに強いられてるぅ!
「ふぅー。…ちぃっとばっか目を瞑れ」
息を吐き気合を入れるモミジ。…気合いが必要なの?
取り敢えず殴られたくないし言われた通りにする。
「瞑ったぞ」
「…誰もいねぇな…。ぜ、絶対に目ぇ開けんなよ…」
フィオーネにプレゼントを渡した時を思い出すなぁ。
頰に柔らかい感触と息遣いを一瞬、感じる。
「…も、もう…いいぞ」
「なぁこれ……おいおい。顔が真っ赤だぞ。大丈」
「なんでもねぇーしっ!!」
「あ、ああ」
「か、帰んぞ…!」
異世界では目を瞑らせて礼をする習慣があるんだろうか。…考えても仕方ない。答えてくれない雰囲気だし。
…しかし、トモエ姫の一件は無事、片付いたが当面は忙しくなりそうだ。
キルカの卵の件に百合木の月24日にはSランク昇格依頼も控えてる。
ルウラとエリザベートの武器も鍛えなきゃいけない。
気合い入れて頑張らないとな。




