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俺も人なり姫も人なり。⑧



〜30分後 金翼の若獅子 四階来賓エリア ホール〜


「ーー全く!無茶というか…無鉄砲というか……トモエ姫に向かって…『おい』って呼んだ時は心臓が停まるかと思った。心配で二人と一緒に立ち会ったけど一歩間違えば特権違反でその場で斬りかかられても文句は言えなかったんだよ」


「……」


「ましてや『…文句なら俺が聞いてやる。責任を取れって言うなら俺が取るぞ』とか『仮に納得出来ないなら腹を切って詫びてやる。先ずは黙って俺が鍛えた刀を見ろ』…?トモエ姫が依頼品を認めなかったらって考えただけでゾッとするよ。君はもう少し自分を大事に……ちゃんと聴いてる?」


「…はい。売り言葉に買い言葉でご心配お掛けしました。以後、気を付けます」


絶賛、説教を受けている最中だ。


「くくくっ…ラウラよ。そのぐらいにしておけ。万が一の事態に備え吾等は居たのではないか。仮にそうなった場合の策も考えてあっただろう」


「そうなの?」


「ああ。しかし、悠の行動や言動が無謀だったのに変わりない。…あの刀であれば自信があって当然だが周りを顧みるべきだったな」


…アジ・ダハーカにも言われたっけ。


「ん〜。結果おーらい。万事解決。ゆーはくーる。見てて豪快。聴いてて爽快。ちぇけら〜」


「……確かにルウラの言う通り溜飲が下がる思いだった。報酬金は要らないと親衛隊に対する悠の要求は本来なら僕がしなきゃいけない事だ。お陰で一つ問題が片付く。散々、口煩く言っちゃった後だけど…ありがとう」


「ユウよぉ。あん時はオレを庇って…ああ言ったんだろ?…心配したけど嬉しかったぜ。サンキューな」


「二人とも気にすんなって。俺が勝手にしたことだ」


ラウラがモミジに向き直り頭を下げた。


「モミジさん。冒険者ギルド総本部の副GMとして僕は貴女に謝らなくちゃいけない。…この度は『金翼の若獅子』の問題に『巌窟亭』を巻き込み申し訳なかった」


「…ふん。放浪癖のあるGM(ギルドマスター)のせーで運営が大変ってのは()()()わかるさ。今回はユウに免じて許してやるよ」


「心遣い感謝する。…ファーマン親方とも久しく話してないな」


「あ、そっか。お前は『灰獅子』だもんな。ジジイが昔、言ってたぜ。…『獅子族の中じゃ珍しく礼を弁えた見所のある子供ガキだ』って」


巌窟亭のGMとラウラは知り合いのようだ。


「…父と兄が迷惑を掛けたからね。未だに頭が上がらないよ」


うんうん…。仲良く話す二人を見て心が暖まる。


人と人が繋がる瞬間って良いよな。その手助けを出来たのが誇らしい。


「ゆー」


「どうした」


「ルウラにも武器を作って」


さっきも言ってたな。


「良いぞ。直ぐには無理だけど」


ひと段落して安心したせいか眠気が凄い。


「じゃあ明後日」


「…俺の話を聞いてた?」


「……ぷりんせすには直ぐ作ったのに…ルウラには作ってくれない。贔屓だ。すとらいきする」


ストライキしたいのはこっちだっつーの!


「あれは依頼であって」


「じゃあルウラも依頼する。…へい!オーガのおねーさん。『巌窟亭』に武器製作の依頼がしたい。職人はゆーを指名するからよろ〜」


「あン?…『舞獅子』か。依頼なら金を準備して手続きに来い。職人の指名は依頼料が割増だぞ」


「おっけー」


話を聞いてぇ!!


「…ルウラ。お金はあるのかい?」


「のーぷろぐれむ。いざとなったらツケで」


「来んな。無一文で来たら承知しねーぞ」


眉を顰めモミジが厳しく言い放つ。


「……ゆー」


裾を引っ張りルウラが上目遣いで俺を見上げる。


昔、流行った某CMの子犬みたいな目だ。


「…わかったよ。個人的に作ってやるから」


「いぇーい!ゆーだいすき!」


俺ってちょろい性格だよなぁ…。こう喜ばれると良かったって思っちゃうし。


「時間は掛かるぞ。その点は忘れるなよ」


「しかたない。我慢する」


仕方ない…え、仕方ないって。


もういいや。つっこむと面倒そう。


「…どんな武器が欲しいんだ?」


「武器呪文のすぺしゃるなうぇぽん。ぷりんせすの刀に負けない…ぶりんぶりんの逸品をおーだー。試されるルウラに対するゆーの真価。せいほー」


…トモエに負けず劣らず抽象的な依頼じゃねぇか!機嫌良く体を揺らすルウラを見て頭が痛くなる。


まぁ鍛治と紀章文字を彫る練習になるし…いっか。


「…『舞獅子』って変わってんだな。妹だろ?」


「……うん」


ラウラが恥ずかしそうに俯く。


「くくくっ。吾は正式に『巌窟亭』に依頼を出すぞ。…勿論、職人は悠を指名する。武器呪文が付与された突撃槍ランサーを頼みたい。時間と金は幾ら掛かっても構わん」


「エリザベートもか」


大人気だな。


「バフが付与された武器は中々、手に入らん。戦闘に携わる者なら欲しがって当然だ。悠が鍛えれるなら願ってもない話さ。…断りはしない筈。吾の胸を揉み」


「も、もちろん受けるよ!」


「……くくくっ。流石、吾の見込んだ男よ。では、依頼手続きが済んだら宜しくな」


そのネタを引っ張るのはずるい。


「大盛況じゃねぇーか。良かったな。お得意様ができたぞ」


「…は、はは」


「二人とも悠に無理ばっか言ったら駄目だよ」


見兼ねたラウラが口を挟む。天使ぃ…!


「ラウラは既に()()()()からな」


「いえす。自分ばっかずるい」


「はぁ…子供じゃないんだから…」


「へぇ。ラウラの武器はウェポンバフ付きなのか?」


「悠は知らないよね。今度、見せてあげるよ」


「ああ」


ラウラが儀礼服を見詰める。


「…それとその制服は」


「あ、正装を持ってなくてな。急遽、ギルド職員から借りたんだよ」


「そうだったのか。さっき見た時は吃驚したけど……ふふ!『金翼の若獅子』の制服も似合ってるし是非、所属を」


「洗って返すから心配しないでくれ」


「……」


仏頂面すんなよ。


「ルウラはいつものほーがいい」


「オレもそー思う。ユウらしくねぇーし」


「くくく。吾はもう少し派手な方が好みだな。髑髏と天使の刺繍があれば…ふむ」


「…僕は断然、こっちだよ」


…やれやれ。厳しいファッションチェックだぜ。


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