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集大成を見せよう!〜龍神の水郷〜②



〜15分後 龍神の水郷 名も無き浮島〜


広い浮島に案内される。周りに遮る物は何もない。


戦うには好都合の場所だ。中央に対峙する俺とウェールズを龍達が囲んで見守っている。


「決着は降伏か両名が戦闘不能となるまでとする。…良いな?」


アジ・ダハーカが問う。


「ああ」


ーー…降伏する間も無く此奴の死で決着です。


ウェールズが食い殺さんと血走った片目で睨む。


「周囲には妾が結界を張る。遠慮せず存分にやり合うのじゃ。…互いに名乗りを上げよ」


ーー私の名は炎陽龍ウェールズ。…貴様の骸を無念の死を遂げ黄泉にいる我が友…ルイーナに捧げよう。


「俺は黒永悠。ミコトの契約者だ」


名乗ると同時に金色の結界が展開する。


「頼んだぞ」


去り際にアジ・ダハーカが囁く。返事はせず小さく頷いて応えた。


元より何とかするつもりだからな。


離れた位置に仁王立ちしたアジ・ダハーカが叫ぶ。



「では始め!!」



ウェールズは開始の合図と共に威嚇し吠える。


…威嚇か。なら俺も。


感情を込め魔力を体中に巡らせる。


ーーォォオオ…ォ…な、んだそれは…?


正面で絶句し言葉を失う。


理由は分かる。


今の俺が全力で魔圧を行うとミコトの幻影が背後に必ず現れるからな。


「どうした。びびったのか?」


ーーほ、ほざけぇぇぇ!!


激しく燃え盛る炎がウェールズの周囲に揺らめく。


ーー灼熱に身を焦がし息絶えるがいい…。


炎が俺に迫るが遅い。ステップで躱し続ける。


ーー……小癪な。この一撃は避けれんぞ。


頭上で収束し炎の塊が膨らむ。まるで小さな太陽。


ーー炎陽日蝕(サン・フレア)ァ!!


塊が爆発し熱風と衝撃が発生した。


地面を焦がし空気を焼く灼熱の炎が迫る。


「淵嚼蛇」


…以前の俺ならヤバかったな。


右腕に纏う黒蛇を体に覆わせる。黒蛇は炎を遮断し一切のダメージを通さない。


武器に纏わせたり攻撃するだけが手段じゃない。


稽古を通じ学んだ淵嚼蛇の活用方法。


ーー…無傷だと…?


「次は俺の番だ」


魔槌・屠を頭上高く掲げる。…アジ・ダハーカと幾度もの稽古を得て習得した簒奪技が一つ。


魔力を通わせ金属音が鳴った。



「極煌斬・断崖」



振り下ろし衝撃波に併せ引き金を引く事で全方位に巻き起こる大爆発がウェールズを襲った。


ーー…ぐうっ…!私が…い、一撃で…ここまでHPを削られるだと!?


「いくぞ」


地面を蹴り目の前まで駆ける。


ーーは、速ぶおぁ…!!


屠で腹を殴打する。


龍鱗の防御を簡単に突破し血飛沫が宙に舞った。


…武器はもう要らないな。


ーー…ぅあああああああ゛あああッ!!!…わ、私がぁ…人に負けるなぞ…あり得るかぁぁ!


ウェールズが宙に飛ぶ。


ーー…塵も残さんッ!我が血に宿る炎よ!灰燼と化す息吹となれ…この業火を受けるがい!?


攻撃動作の途中で淵嚼蛇を伸ばし全身を拘束した。


「よいしょっと!」


そのまま地面に引き摺り下ろす。


ーーあ、ぐ…!?…何故、振り解けん…!


逃げ出そうとすればする程、足掻けば足掻く程、蛇は絡んで体を締め上げる。


「……」


ーーく、来るな…。


一歩一歩、近付き眼前に立つ。


ーーあ…あ…ぁ…。


怯えた隻眼の瞳で俺を見上げた。


「…まだ戦うか?」


ーー……うぅぅ!!


ウェールズは泣いていた。隻眼から涙が零れる。


ーー……友の仇も討てず…わ、私は…私は…人に負け…怯えた。…殺せ…友の元へ…逝かせてくれっ!!


「……」


淵嚼蛇を解除する。


ーー……な、何の…つもりだ…?。


「……負けを認めたら止めてくれ」


ーー……は…?


「……」


ナイフを右手に持つ。…覚悟を決めろよ。大丈夫だ。不死耐性もあるし死ぬ事は無い。


ナイフで腹を刺した。


「んぐぅ!!」


…い、痛い。痛い。めっちゃ痛い。根元まで刺し過ぎた。


ーーき、貴様…な、何を…!


ナイフを抜くと腹から血が溢れた。


「……友達を殺されて…辛かったろ。…無念だよな…?憎みたくなる…気持ちも…わかるよ」


ーー……。


「…でもさ……人間だって悪い奴ばっかじゃないんだ…色んな事情が…ある奴もいる。…分かってくれ…なんて……言えないが…」


ーー………。


「…あんたの友達が……苦しんだ分…俺も…痛みを味わうよ…それで…気が晴れるなら…さ」


ーー……。


「だから…アジ…ダハーカを悲しま…せないで…くれ…あいつ…には…笑って欲しい…んだ」


ーーお、前…。


「ごほ!!…鱗を剥がされたって言ってたよな…?」


頰にナイフを当てる。


やれ。一気にやれ。躊躇するな。


ナイフを引こうとしたその瞬間だった。


ーー止めろ!


ウェールズが叫ぶ。


ーー…もういい…お前の誠意が分かった。…アジ・ダハーカ様の言っていた意味も……理解したよ。


「…そ、っか…」


ーー…貴様は…私が制止しなかったら…死ぬつもりだったのか…?


「いや…死ぬつもりなんて…ない。…ただ、友達の為に…あんな風に怒れるなら……本当は優しい奴なんだ…って思っただけだ……」


それを聞いたウェールズは目を閉じた。


ーー…最初から敵う筈がなかったのだな。…私の完敗だ…。


静かな降伏宣言を聞き手からナイフが落ちる。


「…ありがとう」


駄目だ。もう立ってられない。


そのまま地面に倒れる。


不死耐性で傷が塞がっていくのが腹部の熱さと血の躍動で分かった。


自分でも無茶をしたと思う。行き当たりばったりの考え無しの行為だったが何とかなった。


結界を解きアジ・ダハーカとオルド達がこっちに向かって来るのが見える。


「は、はは…」


……あの顔から察するに滅茶苦茶、怒られそうだな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで楽しく読んでいました [気になる点] 自分と関係ないことで腹を刺す自己陶酔としか思えない行動で脱落しました [一言] これからも頑張ってください
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