本祭4
「全くこの話の筋書きを作るのは大変だった。全きに突然山や谷が来る。君を困らせて見せ場を作れとばかりに。かくて神よ我を援けたまえ、とね。」
そう適当にのたまう筆者。全くシレッと自分には責任がないかのようにふるまう。これだから昔、無責任動物と呼ばれたのであろう。フラストレーションの限界に達したネクロパ。
「あ」
「あ?」
「ぁなたが元凶かぁ!」
一切の警告も無く、筆者の両の目を突いた。勢いによっては指が脳幹に達し即死させることすらあるがそこには至らず、また角度の問題か眼窩と眼球の間に入り、眼球こそ潰さなかったが血を流させ視界を完全に失わさせた。
「目が!目ェガァ!」
因果応報。滂沱の涙のごとく血を垂れ流しにしながらふらふらとどこかへ行ってしまった。ネクロパは血にまみれた指を水筒のお茶で洗い流しながらようやく我にかえる。あそこまでする必要があったのかと。結局、マァあれはそう簡単に死なないからいいや、と思い考えることをやめた。
祭りの楽しい時はまるで騎兵の突撃のようだ。それぞれが大きな衝撃を以って一挙に通過し粉砕する。本物の騎兵突撃と違うのは蹂躙がないことか。あっという間に過ぎてしまう。ヴィルヘルミーナは食い逃げの現行犯を追ってどこか行った。戦えるという歓喜に輝きながら。狂っている。
そうして花火の時が来たのだ。この花火の時に護符を川へ放擲するのである。いつからかそういうことになったもので、おそらく元々は流し雛のようなものであったのだろう。まあそれをそうと分析できるものはここにはいないのだが。
第一発が、がぅと天に花を咲かす。祭りの華だ。それを一星とネクロパはヴィルヘルミーナの言う穴場に居って眺めていた。ここには不思議と他に誰かも来ることがない。今度は、ひゃうと上がってだぅと光が散る。
「そう言えば、この花火が上がっているうちに昨日買った護符を川に投げるんだそうですよ?」
と、ネクロパ。その顔が花火の灯に映える事映える事。思わず息をのむ一星。動揺隠しきれず返す。
「お、おお。それじゃあ、せーので投げようか。」
せーの。
二人の放った護符はまるで睦合うように絡み合い流れてゆく。そして二人はどちらからという事もなく抱き合い―