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淫魔の巣窟で夏祭り  作者: サモナー系執筆者2名
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 朝、妙に早く目が覚めたネクロパ。ちょいと散歩に出ようと起き出し、部屋を出る。風の吹くままに移動する。その時に中庭に人影を見る。それはもちろんヴィルヘルミーナであった。


 ヴィルヘルミーナの今日の仮想敵は、この前共に行動した『偉大過ぎる帝国指導者閣下』の女体化した姿だ。右手に拳銃を握り、腰を落としたそれ。うかつに距離・間合いを取れば撃ち、近接したらば拳銃の銃把で打擲におよぶ。不意を突いても左腕を犠牲にして殺しに来るその容赦ない戦い方。自らの脇腹を撃ち抜いて後ろから迫ったものを倒した瞬間も見た。実際にこの想定での練習でも、想定上僅かなうちに5,6回は死んでいるだろうと確信する瞬間があった。だからこそこういった格闘の愉しみがある。全力を尽くして体を魅せつけつつ相手を倒すことの快感を、より強い相手にぶつけてみたい。全く自分がおかしいように感じるのは、こういった時なのだ。ここまで戦闘狂(バトルジャンキー)淫魔(サキュバス)はそう多くはあるまい。少なくともこの帝国には。血統だろうか。この一族の開祖は軍功を以って帝国貴族へ取り立てられた剣士であったというが、どちらかと言えば剣より徒手格闘を好んだともいうし。きっと血統だろう。


 ヴィルヘルミーナが水筒を手に取った時に、中庭に近い渡り廊下でこちらを見ているネクロパと目が合った。せっかくだからと手招きしてみると、戸惑ったようにしてやってくる。


「ねえ、何か格闘の心得とか、ある?」


目が輝いている。闘いたい、といったところか。


「いえ、何も。あまり闘うようなことも無かったので。」


目に見えて落ち込むヴィルヘルミーナ。顔文字で表現できそうなほどの典型的なショボーン顔、というやつである。だが、今度は何か思い直したようだ。ネクロパの手を取りつつ言ってのける。


「これまでなかったからと言ってこのあとにないとは限らない。教えてあげよう。」


王子様然とした言動。言っていることは半分以上支離滅裂とも見えるが、それを気にするものはここにいやしない。そして護身術として使える、格闘戦の基本的な部分の一部を教えてゆく。それは体を魅せつけることに特化した淫魔の格闘術がベースである、中々見ごたえがあるともいえよう。押しつけがましいような、無駄な動きの無い洗練された中にある美、それを引き出すような戦い方だ。

 ある程度基礎の型をやった時に、言いつかる。


「じゃあ、組手だ。」


「え。」


「こういうものは実際にやって体で覚えてゆくものだぞ。さあ、やろう。」


強引に組手にかかるヴィルヘルミーナ。戦闘狂の血には争えないのだ。何とか追随するも防戦一方になるネクロパ。当たり前だ、素人なのだから。


「ほらほら、どうした。かかってこないと勝てないぞ?」


狂ったようにかかる追連撃。白兵の基礎は相手が動けなくなるまでかかることだ。


 一星は中庭で行われている勝負に気が付いた。二人のほぼ一方的な攻撃。しかし、それを防ぎきって見せるネクロパはすごいと思った。少なくとも自分なら一瞬で叩きのめされるだろう。しかし、だ。なんと股間にクる様であろうか。二人ともその豊満な肉体のポテンシャルを一切隠すことなく打ち合せている。特に目が行くのは昨晩に「成長の余地がある」と言われたネクロパのお胸だ。つまり、『可能性』が詰まっているのだ。男ならばその『可能性』に夢を見るだろう。さらにはネクロパの肌のきめ細やかなこと。最初に出会った時は肌も髪も荒れた、飢えた有様であったが、それよりのちは折を見ては生気を与えてきた。もちろん昨晩もだ。そのかいあった。そうひとりごちていると、一瞬ネクロパと目が合った。刹那、恥ずかしさからか朱に染まる顔。照れ隠しに放たれた伸びやかな蹴り。その蹴りはおもったよりしっかりとヴィルヘルミーナを捕らえた。何とか受けて、さらに嗜虐的な笑みを浮かべるヴィルヘルミーナ。


「やるじゃぁ、ないか。さぁ、続けよう。」


結局、ネクロパが動けなくなるまで続くのであった。

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