風呂
ここはパッツェンデール伯爵家の風呂場。大浴場である。流石は伯爵家、贅を凝らした壮麗な浴場だ。そんなところでヘチマたわし(これしか垢すり道具はない)で体を洗うネクロパ。その時いきなり後ろから現れた女の腕。それはネクロパのお胸をわしづかみにして、揉みしだく。
「ちょ、止めっ…!♡」
制止する声は、絶妙な刺激をする手に啼かされて言葉として成立しない。気が付けば片方の手は腹を伝い、臍へ、さらに下へと滑ってゆく。その時、扉が開いて、入ってきたのは一星であった。
「おや、遅かったじゃないか、婿殿。」
そう言っておどけて見せるのはネクロパをいじって楽しんでいるヴィルヘルミーナ。流石に下に向けて滑らせていた手はやめて胸に戻っているが。
「何やっているんですか、ヴィルヘルミーナさん!?」
「ヴィル」
「は?」
「ヴィルと呼んでくれと言ったぞ。」
そういいながらネクロパの銀色にきらめく髪を口に含む。金と銀の淫魔の絡み合いは一方的ながら、絵とするならばこれほど美しいものはあるまい。淫靡に過ぎるが。ところで、妙にネクロパは静かである。啼きもしなくなった。完全にのぼせ上がって、くたぁりとした浜に打ち上げられて二日目の魚のような反応しか返せなくなっているのだった。それに気がついて、容赦なく放り出す。べちゃという音を残して洗い場に横たわり動かなくなるネクロパ。死んではいない、あくまで体がいうことを聞かないくらいの快楽をたたき込まれただけだ。真っ赤にのぼせた顔もまたかわいいな、とヴィルヘルミーナは思った。
「さて、一星くん。喜べ。ネクロパ嬢のお胸にはまだ成長の余地があるぞ。」
どう反応してよいのかわからず表情がこわばる。当たり前だろう。
「まあ、何だ。とっとと体を洗え。それとも、私に洗ってほしいか?」
総挑発的に言う。これに反応しない男はめったにいない。第一その為の生き物である。それに体をうずめたらきっと極楽だろうヴィルヘルミーナの胸が、羽二重ですら及ばないだろう肌のすべやかさと確かな質量を持って迫って来る。思わず身体が出そうになる、その瞬間。
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
淫魔ゆえの快楽耐性からか、思ったよりは早く復活したネクロパが全力を以って一星の顔面に風呂桶をたたき込んだのである、ショギョームジョ!風呂桶の鉄でできた箍は一星の意識を刈り取るには十分すぎる役割を果たした。