第七話 帰宅部社畜説
「「・・・・・・」」
私と彼はお互いを見つめ合ったまま硬直する。私はなぜ彼がここにいると驚き、彼は来たのが私だと言うことに驚いている。空気が一瞬凍り、二人同時に朝倉先生の顔を見るが彼女は今にも吹き出しそうな顔で笑いを堪えていた。
「おいコラ、先生。次の授業は寝ても良いって言え」
「なら私は次回の課題を無しにしてもらうことで」
「ま、待てって!言ってなかったのは悪いと思うが、仕方のないことだろ?!言ったら大神は鍵閉めるだろうし、天宮は行かないって言うだろ?この部は私の仕事をしてもらう大事な部活なんだ!そう簡単に崩れては困る」
今この先生、とんでもない事を口走ったのではないだろうか?私の仕事をしてもらう、つまり先生の雑務を押し付けられるって事で解釈でいいよね?いや、それしかないだろう。
「あの、先生?先生の仕事をなぜ私達……私が手伝わないといけないのですか?」
「さりげに今俺の存在消したろお前」
「えっ……!?あっ!!天宮ッ?!いや!今のは違う!!」
「……先生、シラを切るのは構いませんがここに俺がいるって事を忘れないで下さいね?拷問しますよ?ほら、ここ人通りないし」
サーっと先生の顔が真っ青になり、体罰だ……とか言って精神崩壊的な状況に陥っている。それを呆れて見る私達の気持ちも察して欲しいものだ。だが彼女はすぐに立ち直り、胸を張って堂々と宣言した。
「そうだ!私は君達を使って私が楽できるようにしてもらう!!だから働け!誰でもなく私の為に!」
「カッコいい事言ってますけど、所詮は仕事を擦りつけてるだけですからね?」
「教育委員会に訴えてやる」
「待て待て待て!仕事って言ってもアレだからな!えっと、クラスの事とかだから!」
ビシィッと人差し指を向けて勝ち誇った顔で朝倉先生は言っているが、最後に『とか』が入っているから全く信用できない。それにクラス全員から目の敵にされてる彼と、一切の関わりを持っていない私の二人がクラスの為に頑張るとか失敗する未来しか見えない。
「これじゃあ逆に無理だろ……」
「一人は全校生に喧嘩売る人だし、もう一人は純粋無垢な人気美少女……あ、イケるんじゃない?」
「鏡見直してこい、テメェ」
「何?何か間違ってる?」
「純粋無垢って所と人気って所に異議を申し立てる」
「全校生に喧嘩を売る誰かさんよりは人気だと思うけど?」
「五十歩百歩だろそれ」
冷たい舌戦が繰り広げられる中、事の発端である朝倉先生はシレッと持って来ていた資料を広げていた。そんな事を傍目に私と彼は尚も続ける。
「聞いたわよ?テニス部だけじゃ飽き足らず、ソフトテニス、バドミントン、卓球、柔道、剣道その他諸々、この学校の殆どの部活の主将をフルボッコにしたって」
「あ、それ私も聞いた。全部完勝なんだってな。いやぁ、凄い奴もいるもんだ」
「その辺は俺のDNAにでも聞いてくれ。見ててイライラするんだよ」
「じゃあコレは?この学校の不良、全員を地面に埋めたって話」
「今年は人参が豊作だったらしいな」
もう何も言えない。いや、彼の頭がとんでもない方向へと飛び過ぎていて相手にできない。キチガイもここまで来れば伝説のスーパーキチガイだ。まぁ、ウチの担任も未だにセッセと準備しているから紛れもないキチガイなのだが。
「さっ、できた!」
「なんですか、コレ?家系図?」
「アホか。どう見たってトーナメント表だろ」
「どっちも違うんだけど……」
紙に書かれているのはトーナメント表にも家系図にも見えるモノが六つほど書かれているが、何を意味しているのかは全く見当がつかない。
「じゃあ何ですか?」
「クラス内の勢力図!!ウチのクラスの名前が書かれてるだろ?」
「いやわかるかよ」
「右に同じ」
「つか、何で勢力図なんてわかんだよ。まだ一学期始まって三週間しか経ってませんけど?」
「?私一応担任ですけど?」
「普通の担任ならそんな事できません」
Great teacherでも無理だと思う。と、言うよりここまで仕事を頑張ってる先生がクラスの事は丸投げって……仕事飽きたの?
「それで?これを見て私達に何をしろと?」
「よくぞ聞いて来れた!実はうちのクラスではもうイジメが始まってるんだよね。いやぁ、生徒の仕事も早いこって」
「余計自分でやれよ」
「本当はそうしたいんだけど、そう上手くはいかないのは二人ならわかってるでしょ?」
超超超簡単問題。
『イジメが起きてます。先生が「君達イジメをしているでしょ?」と注意します。さて、イジメをしている生徒達はなんと答えるでしょうか』
制限時間は三十秒。では、どうぞ!
答えがわかりましたか?
さて、正解の発表です。赤鉛筆を持ちましょう。
「知りませんって答えるだろうな」
「そう!その通り!そして他の生徒は私関係ないですよアピールで答えてくれない。だから、」
「スパイを送り込む、と?」
「ザッツライト!」
「やるかやらないかは後にして、そのイジメを受けている人とイジメているグループの面々を教えて下さい」
彼女は何か面白い物でも見ている顔をしながら紙のど真ん中、『本庄りえ』と書かれたグループとその下の方に書かれている『坂口 恵美』の名前を指差した。
「………やべぇ、誰なのか全くわからん」
「同じだから馬鹿にできない……」
「ま、やり方は君達に任せる。だからよろしく頼むよ」
「「勘弁して下さい」」
それが最後のネバリとなるが、朝倉先生は嬉しそうによろしく!っとだけ言って教室を去って行った。残された私と彼は━━━━━
「はぁ……しゃあねぇな」
「何をする気?」
「誰でもできるイジメの対処法ってヤツを教えてやるよ」
彼は自信ありげにそう言って、床に置いたカバンを取り教室から足早に出て行った。残された私は、ただ何も言わず勢力図が書かれた紙を見て、
自分の場所が隅の方にあることに嬉しく思った。
はい!どうも!■です!
社畜ー社畜ー♪日本は社畜...........
働きたくねぇぇええ!!もう土曜日が終わるよ、明日で休日ラストだ………。
これが先生と皆さん、あと僕の頭の中です(笑)
次回は火曜日の夜九時です!では!また!