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結局彼は孤高に立つ  作者: ◾️
第一章 一学期
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第六話 入部

「━━━んで?結局、決めれなかったと?」


「は、はい……」



カチカチと時計の音が忙しなく鳴り響く。白い壁、青い絨毯、来賓用に綺麗に整えられたテーブル。あまり目にする事のないその光景に私は言葉を詰まらせる。ここは来賓用として設置された特別教室。本来なら入ることもできないのだが、今回だけは特別で中に入ることが許された。まぁ、いい意味ではないのは確かだが。



「私は確かに言ったはずだぞ?部活動には絶対参加、と。聞いていなかった、なんて事は君にはないだろうしな」


「その確信がどこから来たものなのかは、追求しません。はい、確かに聞きました。言い訳、と言は言えませんが、理由をお話しします」


「・・・・・」



話せ、と言わんべき目で朝倉先生は私の方を見る。彼女の目を見るに、私がこれからどう言うなんて察しているのだろう。なぜ、どうして、そんな疑問なんか聴く前からわかっている。けれど、私の口から言わなければ助ける事もこれからの事を考える事もあり得ない。一呼吸置いて、私は口を開いた。



「理由は色々ありますが、一つだけ全ての部に当てはまるモノがあるのでそれを話します。もし、私が部活動に入ったらその部活動は荒れ果てるでしょう。それも半分で分断するとか言ったものではなく、私対部員全員と言った苛烈な分かれ方で」


「ほう。それの根拠は?可能性はゼロではないって言葉があるのは知ってるだろ?もしかしたら運良くそうならない確率もあるんじゃないのか?」


「先生も私の出生と今の立場をわかっている筈です。その質問は愚問に過ぎないかと」


「……訳は聞いた。なら、どうする?君だけを特別扱いすることは無理だ。何か新しい部活動を作るか……それしか手はないか」



どの道に進もうと私はイジメに遭う。小学生の頃からそうだったし、今もそうなる運命だと思っている。私、本当は私の父だが彼の現在の立場、そして私の無駄な才能。その二つの要因が今も私を苦しめる。昔は後者だけだったのだが今は時期が悪い。



「新しい部活ですか。……………あ、いいの思いつきました!『帰宅部』ってどうですか?部活動としてはありですよね?」


「あぁ、えっと……その……あのだな」


「?」



何かを隠すように先生は言葉を濁した。学校の規則に引っかかるのか、それとも別の理由なのか。何にせよ、帰宅部がダメなら奉仕部で、奉仕部もダメなら隣人部で行こう。どれか一つは通るはずだ。朝倉先生は少し渋い顔をしながら顔を上げた。なぜか一気に疲れた顔になっていたが、彼女はため息とセットで濁した言葉を吐き出した。



「もう、その部活あるんだよ」


「えっ……?」


「えっと、だからその……その部活、もう作られてるんだよ」


「誰にですか?」


「それは会ってからのお楽しみに、だな。入部するか?」



唖然とした表情で、私は先生の方を見る。確かに彼女はその部活は存在する、と言った。だが学校のパンフレットにも説明時の時もそんな部活動が存在するとは聞かされていない。成績上位者のみ、とかそう言った類の決まりがあるからなのだろうか。私の頭は先生の一言で余計な考えで一杯一杯になった。



「あー多分、お前が思っているのとはチョット違うぞ。この部活はつい一昨日作られたんだ。それも一年生が、な。昔の先輩達も作ろうと躍起になってたが最後は学校から許可が降りなかったんだけど………奴は非道な手を使って成功させたんだよなぁ」


「その部活って今活動してますか?」


「……あぁ。帰宅部って名前だけど、他の部活と同じ時間までは学校にいる事になってるからな。まぁ付いてきたまえ」



彼女は立ち上がり教室の扉を開け外へと出て行った。まだ寒いと思える風が吹いてぬくぬくと温まっていた教室が段々と冷えて行く。私はソッと立ち上がって椅子を戻し、床に置いてあるカバンを拾って彼女の後を追った。













ーー



「ここで引き返すこともありだぞ?」



扉の前で朝倉先生は私にそう言った。多分、この後に起こる惨劇か、喜劇のどちらになろうとも自分の責任だと言わせたいのだろう。つくづく真面目な人だ、と感心する。だが、ここまで来たのに「やっぱやめます」は卑怯だろう。私とてそこまで屑な人間じゃない。だから無言で首を縦に振った。



扉が開き、教室の中がうっすらと露わになる。カーテンが春風に揺れてなびき、暖かそうな陽光が教室の半分あたりまでを照らす。そんな幻想的な風景の中に『彼』はいた。机を二つ並べた上に、堂々と仰向けに睡眠をとる彼が。




「大神、入部希望者だ」


「━━━━━こんなクソみたいな部活を選ぶとは、どんだけのクソ野郎なんだ?」




眠たそうな声で、彼はゆっくりと起き上がりそう問う。私は、私の高校生活が途轍もなく歪な高校生活になる予感が響き渡った。

はい!どうも!■です!


あー、またキチガイが暴れだしそうな予感しかしない。


次回は明後日の夜九時。お楽しみにー!

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