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結局彼は孤高に立つ  作者: ◾️
第一章 一学期
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第四話 野外活動二日目

アレから、班の空気は悪くなる一方だった。彼は班全員を敵に回し、堂々とした様子でこの後の行事にも参加した。あの後のオリエンテーリングでは、彼一人だけ無尽蔵な体力持ちでひたすら止まらず歩き回ったり、班でのバーベキューでは肉や野菜の焼き加減が絶妙過ぎて誰一人として文句を言えなかったり……と。正直に言って、特に関係のない私でも腹が立った。いろんな意味で。



そんなこんなで一日目が終了し、今日は二日目だ。やる事は鉄板ネタ、とだけ言えばわかるだろう。クラス対抗の運動(大縄)会である。約四十人もの人間が揃いも揃ってジャンプし、縄にひっかからないよう努力すると言う悪質な競技だ。何が悪質かなんてのは、体験した人ならよくわかる。例えば━━━



「暑い……」


「やる意味あんのかよ、コレ」



全員が全員、やる気に満ち溢れているわけではない。つまりやる気満々の運動系の人達と、動くのも嫌な非運動系の人達だ。だがこのクラス、ギネスに登録してもいいほどやる気に満ち溢れているのだ。もちろん、今隣で愚痴った彼と私以外だが。


今私の隣で愚痴った彼のようにこの場所は物凄く暑い。ひっかからないようにしようと思えば、必然的に真ん中に人が集まる。それは当たり前のことなんだが、私達がいる最前線でも暑いのだ。熱気、熱気、折暑苦しいヤツ。いっそのこと仮病を使って休みたいものだ。けれど、そんなズルを無視できない用に仕組まれているのも確かである。チラッと後ろを見ると、



「みんなぁー!頑張るぞぉ!!!」


「「「「おぉーー!!!」」」」



超熱血男君が、ひたすら音頭を取ってみんなの士気をガンガン上げていく。彼のそのリーダー能力?は素晴らしいモノなのだが、通用しない人からしたらうるさいゲテモノだ。そんな中、彼と私はボソボソと愚痴を溢す。



「鬱陶しい……」


「眠い……」



彼は完全にヤル気ゼロな上に周囲への悪態で、もはや完全に悪目立ちしている。そして、睡魔に襲われて今にも敗北を喫しそうなのは私だ。こう言う林間施設の寝具はなぜか寝にくい。寝心地も悪い上にあまり寝れてないというダブル攻撃で、私の苛立ちは彼と等しいほどに高まっているだろう。それでも尚、



「C組が一番を、取るぞぉぉおおお!!」


「「「ウェーイ!!」」」


「いや、取るのはA組じゃボケェ!」


「「「そうだそうだぁ!」」」


「何言うとんねん!!一番はウチらB組や!」


「「「せやせや!」」」


「ハッ!テメェらなんかゴミだな。一位を・・・」



最後まで聞く前に、手で耳を抑えてうるさい会話を遮断した。ここの人達は全員、燃えて燃えて燃え滾っているオーラを醸し出しているが、今私の隣にいる彼はその熱意を全て打ち負かすほどの冷たいオーラを出している。もしかしたら、彼は世界一熱い男にすらも勝てるのでは、と少し期待を感じる私がそこにいた。



「さて、言葉の前哨戦は済んだかね?今から大縄大会を始める。まずはA組からだ。B、C、Dクラスは少し離れてくれ」



その蒸し暑い空気を、冷たさではなく闘志に変える声が台の上から聞こえてきた。さっきまで騒いでいた彼らは黙り込み、大縄の準備をしているA組へ注意が向く。静かに鳴りを潜めた彼らを見て、ただただ私は感嘆するしかなかった。



「その熱意はどこからくるのやら……」


「早く引っかからないかな」


「・・・・・」



隣で本音が漏れている彼を二度見してしまい、やられた感が心の中に巣食う。そんな彼の悪巧みをストップさせるように、甲高い笛の音が鳴り響いた。



「「せーの!」」



一斉にA組が声を張り上げて、回数を数え始める制限時間は約三分と言った所で始まり、あっという間に過ぎた三分でA組の大縄は終了となった。回数は八回。中々の上出来だと思う。次にB組が準備につき、A組同様大きな声とともにスタートした。



そして、なんだかんだで私達C組の出番となった。私はど真ん中辺りに初めから居座って、何があろうともそこから移動せずに勝負の時を待った。そんな中、ふと彼の姿が見えないことに気がついた。二、三度しゅういを見渡すが、彼の存在が確認できない。もしやと思い、縄を回す人の方も見るが彼ではなかった。だが先生達もクラスの人もそんな事にも気付かず笛がなると同時に大縄が回り出した。



「「9ーー!10ーーー!!」」



現在一位であるA組の8回と言う記録を追い越し、全員の緊張が緩まった10回目で誰かが足を引っ掛けて失敗した。それと同時に終了を告げる笛が鳴り、一同は色々な声をあげながら元の場所へと戻って行った。そんな中で私は不意に見つけてしまった━━━━━



A組の塊の中にシレッと紛れ込んで座っている彼の姿を。


私は一瞬どうしようかと迷ったが、ここは敢えてスルーの方向をとった。わざわざ彼のサボりを言いふらす気もない上に、彼が何を考えていようが知ったことではないっと意を決したつもりだったのだが………。


やはりどうしても、違和感と好奇心が二度見を勧めてくる。あの真顔でこちらを見ている顔がどうしても頭から離れないのだ。ホントは宇宙人か何かなのではないだろうか、と思わせるような彼の異質感をどうにかして流したくて仕方がなかった。






ーー



「さて、それじゃあゆっくり休めよ……ってもうみんな寝てるか」



帰りのバスの中、朝倉先生がマイクを持って話そうとしたが、殆どの生徒が夢の彼方へと飛んで行っているのを見てため息とともにマイクの電源を切った。本来ならば私も疲れが溜まって今にも寝落ちしそうな所なのだが、無駄な好奇心に気圧されたせいか昼頃まであった睡魔はどこかへ行ってしまっていた。


だから一度見た景色を今度は逆から眺め直しを始める。バスの中と言うのは、雑念がなければ静かな空間だ。せわしなく移り行く景色を見て、今年も春が来たなぁと改めて実感しつつ肘を窓の枠に置いた。




早くゴールデンウィークにならないかなぁ〜っと叶わない願いを朧げに、青い空を見つめていた。

はい!どうも!■(クロ)です!


大縄大会?あんなクソみたいなヤツ、大神君がサボらないわけねぇだろぉ!因みにあかりんの運動能力は、平均より少し上ぐらいです。まぁ、色気ばかり気にしてるJKよりよっぽど良いですね!(爽やか笑顔)


さて次回は火曜日の夜九時です。お楽しみに!

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