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Salome  作者: はぐれイヌワシ
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奸智の男

やがて、疲れ果てた父にも最期の時がやってきました。

最後に立てた末弟の母を皇后に立てたのですが、その母は皇太后になる前に父に先立って縊り殺されました。

余りに野心を前面に押し出し過ぎたが為に、父の世話に疲れて眠り込んでいたところを宮女達に襲われたのです。


冷たくなった母に取りすがる太子を引き剥がし、代わりに自らの胸へ抱き寄せたのは、他ならぬあの男。

太傅とは幼帝を補佐するのが本業ですから、可笑しくはないのでしょうが、彼が太子にかけた言葉を、母の時代からの老女官から聞きました。


『今の内に声を上げてお泣きなさい。玉座に登った後は、涙も自由に流せなくなりますから』


あの傲慢の権化の如き男が、こんな言葉を吐けるとは。


***


父が崩じ、幼帝が即位したその日、もう一つ、男の首が掲げられていました。

太傅を殺そうとして、味方に引き込んだ筈の男に背かれ、逆に太傅に討たれた男でした。


幼帝は、先帝の様に後宮から宮中、更には国までも大火に巻き込まない様に、早々と后をあてがいました。

全一族の娘です。

既に二番目の夫は世を去り、私も再婚出来る様な年齢では御座いませんでした。

先帝の血を引く私が、全氏を率いる者として、呉国の一端を担う事になったのです。


***


という風にはなりませんでした。

父の死を聞きつけた魏が、今こそ好機とばかりに攻め込み、奇襲によって敗れました。


その戦の総指揮を執った太傅が軍事の全権を握り、更には丞相まで加冠されたのです。

最早、呉国に丞相と呼ばれるようになった男と肩を並べられる者などおりませんでした。


しかし、丞相はその身に恐ろしい謀を蓄えておいででした。

私が東宮から追い出した弟の妻は、丞相の妹の娘、要するに丞相の姪でした。

その姪からの使者に


『妃にお伝えを、間も無く彼らよりも上の座にお立て致しましょう、と』


と語ったと聞かされました。


明くる年、丞相は北に反攻をかけようと企て、江を越えました。

しかし、諸将の意思を十分に掌握しないままの遠征が成果を得られる筈も無く、疫もあって兵の大半を失って帰りました。


彼もまた敵兵によって負傷したといい、逃げ帰っても参内しようとはしません。

只、己がこれ以上失うのを恐れるように、都の官位を改め、一掃しようとしました。


そのとばっちりを食らった男が、一人存在しました。

武衛将軍として、都の守備を一手に任されていた、父の伯父の系統の皇族でした。

丞相は、近衛軍の編成にも手を付けようとしたため、危機感を強めていたのです。


男は、頭はそれ程では御座いませんが、武勇に優れ、顔立ちも整っていました。

更に、好色であり、女にとっては最も操りやすい仕様の男で御座いました。


二つの東宮が潰される時に、利害が合致して、一度談義した事があります。

その時も、男は私に魅了されている事を憚る様子もなく、視線を私に向けていたのでした。


男は、私よりも十歳近く年下だったのですよ?


***


全家は、南方との貿易を行っていました。

南方から美しい衣装や宝石が集められ、それがまた更に他国との貿易に使われていたのです。


運ばれてくるのは珍品ばかりではなく、奴隷やその伽話も含まれておりました。

ある商人が語って聞かせた、三百年ほど前の遥か西方の話です。



父が死ぬと思ったら、母がいきなり殺されて、孫亮の精神はもうボロボロ。

宮城谷昌光版の『三国志』でこのシーンの描写があるのですが、諸葛恪が潘夫人(遺体)の胸を開けて締め後を

確認してしまった事よりも、

(ああ、諸葛恪は乳母が来るまでの間思うように泣けない孫亮を抱きしめていたのかなぁ)

と妄想しきり。


でも諸葛恪の本心は孫和(というかその延長線上の亡き孫登)にあり。

孫亮は外見が孫登に似ているだけあって、『違い』が鼻についたらしい。


孫峻は容姿と武勇『だけ』は一流であって欲しい。


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