あとがき
はーーー。やっと終われた…。ダラダラ書き続ける病気って、こじらせるともう治りませんね。
この話の元ネタは『捜神後記』ですが、色々な方の作品に影響を受けております。
何せ『孫魯班』『サロメ』『自らの腹を裂く尼僧』『八百比丘尼』等の諸要素が
作者も分類不能な程にごちゃ混ぜになって出来た話なので。だからこんなに長くなったんだ、うん。
私の頭を整理するためにも、影響されたモノを以下時系列順に。
まず、三国志に初めて触れたのは小2です。詳細は語れません、すみません。
その後、小3~4頃に父の本棚にあった岡野玲子氏の《陰陽師》に病みつきになりました。
エピソードの一つである《白比丘尼》で、『人魚の肉を食べると不老不死になる』『だが不老不死は死よりもっと苦しい』という知識を獲得(因みに父はこの《白比丘尼》のラストを特に気に入っていたようで、何時だったか年賀状に使用していた記憶がある)。
この《陰陽師》、当時は6~7巻ぐらいまで既刊だった記憶がありますが、まさかラスト近辺で比丘尼が(以下ネタバレ自粛)。
余談ですが私が一番好きなエピソードは《鬼のみちゆき》と《菅公、女房歌合わせを賭けて囲碁に敵らむ》です。
小6で、あたかも中二病の如く三国志でも呉末期にどっぷり嵌りました。
思えばこの頃から私は諸葛恪を興味深い存在として見ていました。
孫魯班もこの時期に詳しく知り、某所の『孫魯班が愛人の孫峻と共謀して(自分と仲の悪い孫和を皇帝にしようとしていた)諸葛恪を殺した』という説を当時から支持していました。
しかし、孫魯班の結末までは何故か知る事はありませんでした。
(もっとよく調べれば何処かのサイトにあったと思うのですが)
中1時、これも父の本棚にあった星野之宣氏の《妖女伝説》より《砂漠の女王》に衝撃を受けました(陰陽師と同時期に触れてもよさそうな感じですが、恐らく絵が怖かったので敬遠していたのだと思われ)。
私はこれでサロメやゼノビアを初めて知りました。
作中では『サロメ(クレオパトラの転生)はヨハネよりもイエスの方に興味があった』的な描写だったのでオスカー・ワイルド発の一般的な解釈(後述)を知った時はぶったまげました、ええ。
しかし、それよりも衝撃的だったのはラストの『転生の秘密と呪い』。
これも詳細は伏せますが、不死(不老とは言っていない)オチです。
当時は(絵の違いもあって)ゼノビアが一番好みでしたが、最近は前二人の毒々しさも気に入っています。
そして先ず『サロメ』と『不老不死』が脳内でリンクされました。
石巻から引っ越した後の中3。仙台の苛烈な受験勉強に疲れて世紀末美術に嵌り、其処でビアズリーの挿絵からオスカー・ワイルドの『サロメ』の世界に触れました。
『サロメが決して振り向かないヨハネに惚れて、その首を欲した』という解釈に『星野先生のもじゃもじゃヨハネなら兎も角、ビアズリーの綺麗なヨハネなら』と納得。
(ワイルドはビアズリーの絵には不満だったようですが)
ここでようやく聖書(両親がキリスト教の大学だったので複数あった)を参照するも、そのエピソードが見つからず。
もう一度注意深く調べ、サロメと言う名は聖書に出て来ない事を知り、古今の画家の想像力に感心しきり。
何とか志望校に受かり、引っ越しを機に物置から本棚に移っていた故・杉浦日向子氏の作品(ファンだった母が集めていた)に触れる日々。《百物語》より人魚関連の話で、次のような話が。
《猟師?が山中の池?みたいな所で尼僧が自らの腹を裂き、臓腑を洗っているのを見る。『あれは化け物でもあろうか』と言う猟師に、物知り爺様?が『その尼僧はきっと時々臓腑を洗わないと腹の中が腐れてしまうのじゃよ』『人魚の肉を喰らうとそうなるといわれているがの』と答える》
『そういえば、《陰陽師》でも比丘尼は三十年に一度、身体に溜まった禍蛇を祓って貰わないと鬼になってしまうという設定だったな』とここで『八百比丘尼』と『自らの腹を裂く尼僧』がリンク。
高校に入ると、今度は(以前から体調の悪かった)母方の祖母の病状が悪化し、入退院を繰り返すように。
お見舞い先の病院の売店にて、今回の底本?的な岡本綺堂氏の《中国怪奇小説集》に興味を持ち、購入。
《捜神後記》の《怪比丘尼》を読み、『ああ、杉浦氏のアレの元ネタはこれか』と思うと同時に『もしかしてこの尼さん自身が、過去に野心を持って皇帝並の権力を握ったことがあるんじゃ、そして何らかの理由で没落したのか』と盛大に誤読をかましました。
ここで今度は『八百比丘尼』と『かつての悪女』がリンク。
しかし尼僧の過去がどうにも想像できず、それ以上のイメージの連結は出来ず。
高校の部誌には孫呉を舞台とした小説を連載していたのですが(内容は…マジ黒歴史なので言うまい)、その資料集めの中で初めて『孫魯班は最終的に豫章(現在は一応省都になるぐらいの大都市らしいが)に流罪になり、その後は不明』と知り
(あれ?これもしかして桓温ビビらせた尼さんと同一人物という線もあり?)という謎のトンデモ説一直線。
しかし、(長江流域とはいえ内陸なのにどうやったら人魚の肉が入手できるんだか、そもそも人魚の肉食う程追いつめられる状況にあるべか)と思いつかずに当時はそのトンデモはお蔵入り。
大学入学後暫くして、仙台市中心部の某大手書店で塩野七生氏の『サロメの乳母の話』に興味を持ち、購入。
一人の女性の決断を描いた塩野版サロメが一番史実に近いのかな、とは思うんですが。
其処に『サロメは凍った川を渡ろうとしたら氷が割れて川に落ちて死んだ』という説を知り、色々検索してワイルド版サロメの結末は当初、『割れた氷がサロメの首を落とした(どうなったらそうなるのかはわかりませんが)』という設定だったと聞いて
『これだ』となりました。
しかし、誰が瀕死の孫魯班に人魚の肉を食わせたのか?と考えて思いついたのが
――――ええ。孫峻に夢の中で殴り掛かった、死人である筈の諸葛恪ですよ。
彼、結構怪異と絡んだエピソード多いからもしかするともしかしたりするのでは、と。
そしたら何故かサロメ=孫魯班に比してヨハネ=諸葛恪になっていたんだ。
孫魯班、明らかにサロメというよりヘロディアスだろwwバツ2のサロメとかないわーww
諸葛恪、預言者ヨハネにしてはやってることが黒すぎるやろww
そもそも戯曲のヨハネはケチのつけようのないイケメンの筈なんだがなあwww
『サロメの真似してそれ程頭のいい政敵の首を欲してみたら酷い事になりました』という話だよこりゃww
しかし、私は昔から『不老不死』をテーマにして書く事が多い、と感じましたね。
何なんだろこれ。別にそんな願望ないのに。
あれか。小さい頃に沢山親戚の葬儀や法事に出ていたのが切っ掛けか。
それとも歴史の生き証人に憧れているのか。
それにしてもろくでもない人物ばかり不老不死属性与えている私…。
桓温、本当に名前だけみたいな状態でごめんなさい。
でも、彼は本当の野心家ではなさそうな気がするんだ。
『断腸の思い』の話とか見ると、割と温かみのある人物に思えるのですよ。
それでは。
後書きが本編、みたいな事になってしまいましたらここまで読んでくれた人が居られましたら、
この場を借りて御礼申し上げます。
2017/08/29 はぐれイヌワシ