表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Salome  作者: はぐれイヌワシ
13/14

終章

「それからは、こうして比丘尼の形をとって人々に水を分け与えておりますが、他人の闇や幸福なぞ私の知った事では御座いません。唯、あの男を私に屈伏させる為だけに私はこの世で咲き誇り、舞い続けるのです」


「では、女達の病は癒せるが、よもや邸の男達に―――」

「その様な事はございませぬ。邸の男達は、私が近づくだけで勝手に命が水を求め、奪い去ってゆくまでです―――最も、この邸に辿り着くまでにはその様な事もありましたがね」


「わしの、闇を除く事は出来ぬか。わしは、あなたの様な目には遭いたくないのだが、しかし帝に拝謁するたびに、玉座が目に入る度に、視界が揺らいでしょうがないのだ」


「どうぞ私の水をお飲みくださいませ。しかし貴方の闇は貴方がその生を懸けて向き合わなければなりませぬ。青史に善き名を残したければ、の話ですが」


尼僧の、桓温に何処かよく似た碧い瞳が、輝いた。


***


その翌日、尼僧の姿が桓温の邸から消えた。


風呂焚きにその行方を尋ねられた桓温は、「風呂の長いのを注意したら、『迷惑をかけすぎた』と言い残して荷物を纏めて出て行った」と説明した。


尼僧が消えても、桓温の野心は消えたわけではなかった。洛陽が再び夷狄の手に落ち、北伐で大敗しても江の南では最大の権力者であり続けた。

皇帝の首を挿げ替え、玉座を奪おうとしたがその前に病に倒れた。



病床で、桓温は『どうしてわしは善き名も悪しき名も後の世に遺そうとしなかったのだろう』と呟いたという。


桓温の跡は幼くしてその才能を愛された桓玄が継いだが、桓玄は玉座を奪うのを躊躇おうとしなかったが為に、その身を亡ぼした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ