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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』

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こんな時こそ落ち着いて


 生贄。

 復讐に続いて、これまた物騒な言葉が出てきました。

 運命剣の言葉を素直に信じるのなら、どうやら女神はこの世界の礎となるべく自ら犠牲になろうとしている、らしい。その結果、人類は素晴らしい理想の未来を手にすることができる、らしい。



『おっと! 自分で言っておいてなんだけど、具体的な証拠や神様の自白がない現段階で感情的になるのはオススメしないよ? まあ、信心深い人ほど平静ではいられない内容だとは思うけどさ』



 ショッキングな発言であることは運命剣も重々自覚しているのでしょう。なにしろ、それが真実であるのなら、これまで世界を見守ってきた女神の存在が永久に失われてしまうわけです。

 これが元々信仰心などないような不信心者であれば、大した葛藤もなく大喜びでメリットを享受することもできるかもしれません。ですが、神様の言うことには基本的に絶対服従の姿勢を取るような敬虔な信徒であればこそ、その神が自身を損なうような判断には受け入れがたいものを感じるでしょう。



『あ、女神様(あるじさま)、そんなの嘘なのよね!?』


『それは、その……』



 また信心の有無とは別に、迷宮達にとって女神はそれこそ実の母親にも等しい存在なわけです。どれほどの大義があろうとも、そんな相手が自殺を目論んでいるなどという話を聞いて落ち着いてはいられません。


 ウルも、ゴゴも、ヒナも、モモも、ネムも、ヨミも――流石に赤ん坊のアイだけは事情がよく分かっておらずキョトンとした表情を浮かべていますが――いつになく不安そうな顔で自分達の創造主を取り囲んでいます。下手をすれば、このまま感情的になった誰かが泣き出したりしても不思議はないでしょう。なので。


 ぱんっ、と。



「はい、注目! ここで神様を激詰めして、悪い方向に思い詰められでもしたら最悪だろう? 一気に情報を入れ過ぎて頭がパンクしそうな頃合いだし、ここらで一旦小休止を挟むのはどうかな?」



 人間のほうのレンリが拍手を打って注目を集め、そんな提案をしました。

 このまま先へ先へと話を進めて数多の疑問に対する解を知りたくはあれど、まずは冷静に話を聞くための下地を整えるべきではないか、と。

 人間も神々も感情が昂っていれば自然と視野が狭まってしまいますし、不安にせよ怒りにせよ、それをそのままぶつけたら相手が意固地になって強硬的な手段を取らせる原因になりかねません。



『そうだね、流石は人間のほうの私。どうせいつかは言わざるを得ないことではあったけど、もう少し慎重に聞き手側のメンタルを慮る必要はありそうだ。あと、ご年配の方をずっと立たせぱなしってのも悪いし、ここらでインターバルを挟んで聞きやすい態勢を整えてもらうのが良さそうかな?』


「ええと、誰か反対する人がいれば挙手をしてくれたまえ? いない? うん、ならここから三十分ほど小休憩ということで。私も喋りっぱなしで小腹が空いてきたし。ああ、分かってるとは思うけどヤケクソになった神様が目を盗んで早まった真似をできないように、シモン君と迷宮の皆は近くで見張っていてもらえるかな」


『おおっと、まだまだ剣の私が味方だという確証が持てたわけでもないだろう? 諸君らの立場からすると、油断せずにこっちの私も見守っておくべきだと忠告させてもらおう。あと、何か飲み食いするなら私の分もよろしく。ふふふ、実はこの私には味や香りを認識する機能を盛り込んであるのだよ』


「へえ、私もステラ君からの要望で研究してるけど、なかなか成功しないんだよね。剣がどんな風に飲食をするのか、実物を観察したら今後の参考にできるかな?」



 大勢の国家の重鎮がいるのに一人と一本のレンリが勝手に場を仕切る形になっていますが、特に反対意見などはない様子。歴史的な式典が完全にぶち壊しになったことに頭を抱える人々も少なくありませんが、ここらで一度頭の中を整理したり周りと意見交換をしたいという点では一致していたようです。



「じゃあ、シモン君。こき使うようで悪いけど、騎士団の人達に命令して椅子の並び替えとかよろしく。細かいところは任せるけど、この演台を中心に扇状に並べてもらうのが説明するには具合が良いかな? あとルー君は街までひとっ走り行って、何か美味しいもの買ってきてよ。まだまだ頭使いそうだし糖分たっぷりの甘いのがいいな」


『休憩明けの説明で色々必要だから、ついでにそっちの準備も騎士団に任せていいかい? それとルー君、私のはお肉系を多めでよろしく』


「じゃあ、準備の邪魔になってもいけないし、私達は界港の控え室にでも引っ込んでるとしようか。ああ、トイレが近そうな人は休憩中に行っておくのをオススメするよ」



 依然として世界の行く末が左右されかねない緊迫した状況下ではあるはずなのですが、これでは一息入れないわけにもいきません。そんなこんなで一同大いに戸惑いつつも、まさかまさかの休憩タイムが始まりました。



作品のあらすじを新しくしました。

一応、旧版のあらすじは活動報告に貼ってあります。

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― 新着の感想 ―
壮大な展開になった。とりあえず、コスモスに女神を暫く監視させた方が、万が一も起こらない。あの摩訶不思議の前には変な考えを辞める方向に持って行くはず、後は菓子の旦那を置いておけば、最悪、旦那だけで犠牲は…
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