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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十五章『新世界に至る道』

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嗚呼、懐かしきアイツとかコイツとか②


 前回、昨年秋頃の炎天一座の巡業では、街の南に広がる空き地に一座の生活拠点にして移動手段でもある劇場艇を泊めていたものですが、現在そこには急ピッチで完成に近付きつつある界港がドンと存在感を主張しています。

 まだ本格的な開業前とあって使われていないスペースも多いのですが、機密保持の観点からすると気前よく敷地内に泊めさせてあげるわけにもいきません。なにしろ建物そのものはほとんど完成していても、周囲から中を覗けないよう施設の外縁に目隠しの幕を張っているくらいなのです。


 まあ一座側としても、どうしてもそこに泊めたいわけではなし。

 以前の場所が埋まっているなら別の停泊場所を探してもいいですし、なんならずっと上空に浮遊しても問題はありません。それでも天候や風の具合によっては地上に降りねばならない時はありますし、遊びや仕事で団員達が街と行き来する際の不便もあるので、なるべく地上の移動に不便がない位置が望ましくはありましたが。



「だっはっは、あの小娘がいっぱしの座長たぁ大したモンだ!」


「ご活躍の噂は魔界にまで届いていますよ。どうです、そのうち魔界での凱旋ライブなど?」


「それもいいね! 最近帰ってないしさ、パーっとやろうか!」



 そんなこんなで劇場艇の停泊地として選ばれたのは、学都西部の新市街地区に位置する毎度お馴染みエスメラルダ大学校。もう間もなく初年度の入学式を迎える忙しい時期ではありますが、校庭の一角を借りるくらいなら職員や教授陣の邪魔にはなりません。もちろん無断ではなく正式に許可を取っているので大丈夫。

 座長であるフレイヤが元同僚たる魔王軍の重鎮、ガルガリオン氏とヘンドリック氏両名と久しぶりの再会を果たしたことで話が弾み、神聖なる学び舎で昼間っから大酒を酌み交わしていたりもするのですが、まあ多分きっと問題ないような気がしなくなくもないのではないでしょうか。



「にしても、世の中変わる時ってのはあっという間だなぁ。あのドン亀みてぇに腰が重かった先代がとうとう結婚したと思ったら、もう二人目のガキが産まれるってんだから。それによ、ニホンってなぁ確かリサ嬢ちゃんの国だっけか? ソコとココが繋がるとか、一昔前までは想像もできなかったぜ」


「それ、一応まだ機密扱いなので校庭のど真ん中で言うのはご遠慮願います。もう数日後には公にされる話とは聞いていますが」


「んもぅ、ガルさんってば呑みすぎじゃないのー? ちょっと会わないうちに弱くなったんじゃない?」



 フレイヤは「元」ではありますが、魔王軍の大幹部たる四天王……3/4(よんぶんのさん)天王だけあって、この三名は様々な機密事項を知ることのできる立場にいるのです。

 それがうっかり呑み過ぎた勢いで重大な秘密をポロっと漏らしでもしたら、方々に申し訳が立ちません。幸い、今の失言を聞いている者はいなかったようですが、そろそろ酔い覚ましを考えるべきタイミングでしょう。



「そうだなぁ、確かにせっかく遠出してきたってのに顔見知り相手に酒盛りばかりってのも芸がねぇ。母ちゃんへの土産も買わねぇとだし、なんか名物なり名所なり面白ぇモンはねぇもんかな?」


「ふむ、この街ならではと言うと、やはり神造迷宮でしょうか? 我々は完成時のお祝いに招かれて、それきりご無沙汰でしたが」


「いいんじゃない? 久しぶりにウルちゃん達とも遊びたいし。アタシが半年くらい前に会った時は、あの子めっちゃ強くなってたんだよね。あの時はちょっとじゃれ合うくらいだったけど、もうちょっと本格的に遊んでみたいなって思ってたんだ」



 この場合の「遊び」とは、当然おままごとやかくれんぼではありません。

 ウル達やシモンやライムも大好きな例の非言語式コミュニケーションです。昨年末にあのシモンと好勝負を繰り広げたガルガリオンとヘンドリック両氏、それと同等の実力を有するフレイヤであれば、先に挙げた彼女達の実力にどうにか付いていくこともできるでしょう。

 一時的に追い抜かれていたとしても、彼らほどの戦闘経験と才覚、そして負けず嫌いの気質があれば、相手の力や技を参考にして遠からず追いつくことができるはず。今回は実力を上げるための絶好のチャンスでもあるわけです。



「いいじゃねぇの、すっかりその気になっちまったぜ」


「ははは、肝心の仕事に差し障るほどの怪我だけはしないよう気を付けてくださいね。そうならない範囲であれば、いくらでもご自由に」


「それじゃあ善は急げ! 早速、出発だー!」



 目当ての相手の居場所は分かりませんが、どうせ神造迷宮に入って適当に呼べばそこらの地面から生えてきます。ついでに迷宮内であれば、ついつい戦闘規模が大きくなりすぎて滅多に本気を出せない彼らも思う存分戦えそうです。狭苦しい闘技場での場外や観客の巻き添えを気にしなくていいのなら、それだけで戦闘時の手札は何倍にもなるでしょう。


 こうして戦いに飢えた三馬鹿……3/4(よんぶんのさん)馬鹿は、お酒の勢いと何となくのノリに任せて意気揚々と迷宮に殴り込みをかけるのでした。



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― 新着の感想 ―
酒が進む。ウルちゃんの所に行こうと言い出さなければ ヘンドリックが人形で出来上がった虎を二匹連れ帰るか、ガルがリオンの居るかもしれない鬼嫁とラック兄さんが迎えに来るか。 良いねえ、これから毎日、ウル…
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