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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十五章『新世界に至る道』

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時間無制限食べ放題! ほれゆけ、ゴッドイーターズ


 恐るべきは『悪神666同盟』!

 その正体は、様々な世界の悪しき神々が手を組んだ悪夢のドリームチーム!

 果たして、レンリや仲間達は無事に世界を守り抜けるのか……!


 今、かつてない規模の戦いが始まろうとしていました。





 ◆◆◆





 そして、かつてない規模の戦いは八割方終わりつつありました。



「うーん、やっぱり私が食べても特にこれといって力が湧いてくる感じはしないかな。普通の焼き鳥って感じ」


『ふっふっふ、お姉さんはお子様舌なの。この味が分からないなんて可哀想ね!』



 現在レンリやウル達がいるのは、件の『悪神666同盟』の本拠地。

 なんと敵はウルや姉妹達に対抗するための前線基地として、わざわざ一つの世界を創造。単純な面積だけでも地球の十倍ほどもある惑星に666億の軍勢を集結させ、侵攻の準備を整えているところ、だったそうです。


 ちなみに情報の出どころは尖兵として攪乱工作に従事していたものの、運悪くライムに遭遇して捕虜となった悪魔氏。ライムによって心の奥底にまで刻みつけられたトラウマと、悪魔以上に悪魔らしいレンリの尋問術によって、本拠地の場所や移動手段、知る限りの幹部や戦力についての情報などを洗いざらい吐いてくれました。



「トリ型の神様の肉はさっきので最後だっけ? あとは確かイノシシ型とかウシ型とかもいたよね。どんどん煮るなり焼くなりして持ってきてよ」


『悪魔のお兄さん、意外と料理上手だったのね。元の雇い主はもうすぐいなくなっちゃうと思うし、次の就職先を探すなら地獄神殿の料理人とかどうかしら? 今ならコック長の席が空いてるのよ』


『あ、はい、どうも。考えておきます』



 もうお分かりでしょうが、先程からレンリやウルが食べているのは仲間達が仕留めた悪い神様の肉。もちろん只人が食べても神の力を得たりはしませんし、迷宮達が食べた時ほど美味しく感じられるわけではないのですが、それでも食べればちゃんとお腹は膨れます。

 捕虜兼案内人の悪魔氏をついでに料理人にも任命して調理を任せ、優雅なランチタイムと洒落込んでいました。神を神とも思わぬ所業には、悪魔氏も内心大いに引いています。



「ふぅ、ちょっと休憩だ。また肉のおかわりを持ってきたぞ」


「やあ、シモン君ご苦労さま。また手の空いた時に下ごしらえを頼むよ」



 神を調理するに当たって欠かせないのが下ごしらえ。

 なにしろ神様というのは不死身なのがデフォルト。

 以前に戦った破壊神など、化石同然の状態から見事に復活したほどです。あの時のゴゴのように、格下の神が(正確には当時のゴゴはまだ神として覚醒していなかったのが原因として大きいのですが)何かの拍子にうっかり格上の神を食べてしまうと、逆に内側から侵食されて肉体の主導権を乗っ取られてしまいかねません。神ならぬ人間であればなおさら。

 今の迷宮達なら大抵の悪神は素材のままイッても問題なさそうですが、生食用として売られている牡蠣だって当たることはあります。更なるリスクの低減を見込める手段があるのなら、食あたり回避のために人事を尽くす姿勢が食の安全には肝要です。



「俺も少し食事休憩といくか。そこの悪魔よ、ビフテキをミディアムで頼む。ライスと汁物と、あと酸味のある漬物があればそれも付けてくれ。では、用意ができるまでの間にさっさと済ませてしまおうか。ここに積んであるのが新しい追加分だな?」



 そこでシモンの異能が大いに活躍することとなりました。

 バラバラの肉片にまで切り刻まれても生きていて、条件次第ではそこからの復活も十分にあり得る悪神達。恐らくは挽き肉状にまで細かくしても、意識を失うことはないはずですが……。



「こらこら、大人しくせよ。ブロック肉の状態で逃げようとするでない。暴れなければ、なるべく痛くしないでやるから」


『許して……許して……』


『もうしません……ごめんなさい……』



 お肉屋さんの店先に並んでいそうな姿になっても、なおしぶとく逃げようとする肉達を、シモンが流星剣の切っ先で軽く突きました。そうして『自我』を切断された肉はそれきりピクリとも動かなくなり、調理待ちの棚へと移されるという流れです。

 シモンの概念斬りの技量も習得当初に比べたら随分と上がってきたようで、斬ったモノが一定時間後に自然回復するように斬るか、それとも二度と元に戻らないよう完全破壊するかを選んで加減できるようになりました。今回はもちろん後者の斬り方です。



「ん。おかわり追加」


「やあ、ライムさんもご苦労さま……ああ、そっちのタイプか。流石の私もちょっと食べる気は起きないから、ゴゴ君のところまで運んでおいて」


「うん」



 神様といえど、トリ型なら普通のチキンのような、ウシ型なら普通のビーフに近い味がします。だからこそレンリや人間の仲間達もこうしてモグモグ食べているわけですが、例外として始末に困るのがヒト型の神様です。

 いくら食い意地の張ったレンリといえど、こればかりは食べる気にはなれません。ルカなど、この基地に来て早々に五体をバラバラにされたヒト型ゴッドを見て気分を悪くし、それから何時間もずっと横になって寝込んでいるほど。戦闘に高揚するあまり配慮に欠けていたと、戦闘好きの皆もこれには大いに反省しました。


 とはいえ、せっかくの貴重な神力をそのまま放置するのも下策。敵方の神々に食われて戦力の増強をされたり、蘇生されて同じ相手と何度も戦う羽目になっても面倒です。



『おや、ライムさん。例のタイプの追加ですね。シモンさんの下処理はお済みで?』


「ん。開けて」


『ええ、そのまま機械に放り込んでくれれば後はこちらで』



 そこで、なるべくグロテスクにも無駄にもならぬよう急遽でっち上げたのが、ゴゴ謹製の加工工場。あまり食欲をそそらない例の神肉を加熱、粉砕、撹拌、圧縮などの工程を経て、最終的に錠菓の形へと加工されます。これならルカが目にしても、さほどのショックは受けないでしょう。


 この工場は元々一部の悪神が自身の縄張りとする世界へ流通させる錠剤薬品、極めて依存性の高い麻薬を製造するのに使っていたようなのですが、管理者と思しき神をゴゴが粉微塵にまでバラバラにして倒した際にその一部が機械に混入。

 その悲惨な末路自体は因果応報なのでどうでもいいとして、本来想定されていなかった不純物が混入しても機械が故障して止まることはなく生産が続けられていました。腐っても神が管理していたということか、なかなか高性能の装置なのでしょう。その話を聞いたレンリの発案で神力入りタブレットの生産用に流用するアイデアが出てきたという流れです。



『運の良いことに、あちこちの世界からかき集めたらしい食料倉庫も近くにありましたからね。ブドウ糖やら香料やらを混ぜてラムネ菓子っぽい味と形にもできましたし。まさか、コンビニ菓子の成分表示表をなんとなく眺めていたのが役に立つとは』



 もちろん再稼働前に入念に洗浄しましたし、ゴゴが新たに生成した機械類を追加したり、既存の装置を改造したりもしています。

 そうして完成したのが神力入りのラムネ菓子。

 材料は『悪神666同盟』の倉庫から奪ったものがいくらでもあるので、今は飽きが来ないようにレモン味やイチゴ味などの味変にもチャレンジしているところ。これをポリポリ食べているだけで、迷宮達は更にどんどんと強くなるというわけです。



『ふふ、お菓子作りもやってみると案外楽しいものですね。そうだ、今度魔王様に教わってケーキやクッキーでも焼いてみましょうか。いえ、今度と言わず今すぐにでも。ラムネも美味しいですけど、こればかりだと飽きがきそうですし』



 工場での大量生産とはまた別ジャンルな気もしますが、まあチャレンジして悪いということもないでしょう。そうとなれば善は急げ。専門家に尋ねるのも大事ですが、自力で試行錯誤する姿勢も大切です。



『食料があったということは、それを調理する役割の方々もいたはずですよね。まだ生き残っている悪魔なり鬼なりがいたら脅し……おっと、間違えました。人道的に命を保証するのと引き換えに、ちょっとレシピを教えてもらうとしましょう』



 脅迫してレシピを聞き出すのが自力での試行錯誤に含まれるのかは怪しいところですが、スマホやタブレットでネット環境に接続できない現状では知っている者に直接聞くのが最短かつ最高効率。

 なにしろ総勢666億もいる『悪神666同盟』なのだから、お菓子のレシピと引き換えに投降を促せば応じてくる下っ端悪魔の一億や二億くらいはいるでしょう。



『それにしても、我、なんだかレンリさんの影響を受けているような気が……』



 自分がレンリ流の思考に染まりつつあることに密かな危惧を覚えつつも、ゴゴは鼻歌まじりの軽い足取りで条件を満たす捕虜を調達しに出かけました。




 ◆◆◆◆◆◆




≪おまけ・ルカ(髪型アレンジ)≫


挿絵(By みてみん)



以下、軽く設定語り。

ちょっと前までのルカは髪の毛が硬すぎて整えるたびにハサミを何本もダメにしてましたが、今は身体強化のコントロールが完璧になったおかげで髪のアレンジを気軽にできるようになってたりします。

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― 新着の感想 ―
今さら気が付くウル 君も後千年すればレンリ二世になってるよ(笑)
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