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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十四章『神様旅行記』

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爆走! レッツゴー、街道ランナーズ


 発展著しいルグの村を後にした一行は、またもやヒナに運んでもらって一旦学都まで戻ってきました。旅情云々についてはイマイチですが高空を超高速で飛べば一時間もかかりません。



「では、一旦解散ということで」



 まだA国の王都とルグの故郷に行っただけですが、お土産やら何やらの量はそれなりにありました。特に村では帰りがけにチーズやハムや野菜の漬物など大量に持たされたので、一度身軽になっておきたかったのです。


 単に手を空けるだけなら迷宮達の誰かの本体に収納する手もありますが、普段から付き合いのある友人知人、職場の部下に配ることも考えて、こうして帰ってきたというわけで。


 他にも旅行鞄に入れる服の交換や洗濯など、細々とした用事も色々と。そして特にシモンには本業に関わる大事な用件がありました。



「俺がいない間の職務ご苦労! で、王都まで同行するのはこれで全員か?」


「「「はっ!」」」



 引率、とでもいうことになるのでしょうか。

 次なる旅行の目的地はG国首都。

 そして、ここ学都から目的地までは学都方面軍の一部の人員、具体的には間もなく首都で開催される今年の武術大会の参加希望者も同行する予定なのです。


 昨年の武術大会にはG国内の東西南北に配置された各方面軍に加え、王城を守る近衛騎士団の精鋭からも、それぞれの威信を示すべく腕自慢が送り込まれてきていました。


 シモン個人としては威信がどうのこうのは正直あまり興味はないのですが、ここで学都騎士団の高い実力を示すことができれば部下達の士気も少なからず向上するだろう、と。団内から上がってきたそんな意見を受けて、シモンも今年は一人ではなく学都方面軍を率いる軍団長として参加することを決めたのです。



「俺を含めて全部で十名か。引き継ぎ等の漏れはないかな?」


「は! 昨日までに全て抜かりなく」


「よろしい。ならば存分に普段の訓練の成果を見せつけてやるとしよう」



 年末の帰省シーズンで平時よりはいくらか閑散としているとはいえ、治安維持に当たる騎士団業務の性質上、希望者全員が仕事を休んで首都まで遠出するのは難しい。そのため希望者同士で選抜試合を行い、より成績上位の九名が学都代表として出場することになっています。


 シモンを含めて総勢十名。

 国内外の強豪が集まる中で上位入賞する者がこの中から出れば、学都方面軍の名声はより揺るぎないものとなることでしょう。





 ◆◆◆





 学都から首都までは馬車での移動となります。

 天候や街道の混雑にも左右されますが、おおよそ片道三日から四日ほど。

 大型の馬車二台を丸々借り切っているのですが、なにしろ人数が多いのでこれでもギリギリ。もちろんシモンが一声かければ王城から豪華な馬車の迎えを寄越させることも可能なのですが、なにしろ見物だけのレンリ達に騎士団の人員を合わせると二十名を超える大所帯。


 馬車はいかにも力の強そうな大型馬が各二頭ずつで牽く大掛かりなものでしたが、それでも馬達の表情からするに楽々とはいかない様子。下手をすれば大会のエントリー締切に遅刻してしまいかねません。



「はっはっは、ならば仕方あるまい。総員、下車せよ! 駆け足よーい!」


「「「はっ」」」


「「「げぇっ!?」」」



 重すぎてスピードが出ないのなら、乗っている積み荷を減らせば良い。

 シモンの指示により突然の臨時トレーニングが始まりました。これならば馬達の負担を減らせる上に走り込みで体力強化もできて一石二鳥。一部の隙も無い完璧なアイデアです。

 一部の団員から優雅な馬車旅のアテが外れてガッカリしていた風な声が聞こえた気もしますが、団長への尊敬と忠誠心溢れる彼らがまさか訓練を厭うはずもなし。恐らくは空耳か何かの聞き間違いでしょう。というか団長であるシモンが率先して走っている状況で、無視してそのまま馬車に乗り続けられる反骨心と胆力のある部下はいません。



「えっほ、えっほ……ふぅ、たまには普段と違う場所を走るのも良いものだな! どれ、重力の負荷をもう百倍ほど増やしてみるか」


「ん。私も」


『我も一緒にジョギングするの!』


「えっと、じゃあ俺も一応」



 馬車との並走などシモンにとっては遅すぎてそのままでは鍛錬になりませんが、千倍超もの重力負荷をかけることで問題を克服。爽やかなジョギングを堪能しています。

 見ているうちに一緒に走りたくなってきたのか、ライムとウルとルグも一緒に馬車と並走。流石にここまで人数を減らしたことで、馬車のスピードも随分と上がっていました。これならば十分な余裕を持って大会に間に合うことでしょう。



「お、道端にデカい岩が転がっているぞ。担ぐか!」


「私も。木」


「ほう、ライムは倒木か。それも良い負荷がかけられそうだ。後で使わせてくれぬか?」


「ん。交換」



 魔法での負荷だけでは物足りなくなったのか、道中で見つけたアレコレを担いで更にトレーニングの負荷を強めています。街道を行き交う人々からは奇異の目を向けられたりもしましたが、まあ本人達が楽しそうなので良しとしておきましょう。



「ねえ、モモ君。思ったんだけどさ、わざわざ降りて走ったりしなくても、キミが馬を『強化』するとか、もしくはシモン君が重力を操って馬車の重量を軽くすれば別にそれで済むんじゃないかな?」


『素で気付いてないのです? それとも気付いた上でトレーニングの機会を逃すまいとわざと脳筋な解決法を提案してるんですかね?』


「たぶん後者だろうね」


『だと思うのです。まあ、モモは楽チンなので構わないのですけど』



 馬車の中で優雅に寛ぐレンリとモモがそんな会話をしていました。

 実際その通りではあるのですが、走っている本人達は楽しそうなので多分問題はないはずです。運動で汗を流すのもまた有意義な冬休みの使い方と言えましょう。





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― 新着の感想 ―
[良い点] シモンが段々筋肉モリモリマッチョマンの超人に なんか、兄王が訪ねてきたら、丸太片手で持って 話とか聞いていそう。 ※数秒後に部下やられて娘取り返すパパ展開はないですね。 [気になる点] 団…
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