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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十四章『神様旅行記』

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炸裂! ジャンピング・ゴースト・ニー・キック


 殴る、避ける、殴る、避ける。

 ヨミの手で実体を得たルカの父は、真っ赤な赤髪と同じくらい顔を赤くしてルグに襲い掛かります。怒り心頭で周囲の声も聞こえていないようです。



『このっ、避けんな!』


「うっせぇ、いいから話聞けやオッサン!」



 興奮しているせいか狙いも単調になり、ルグも余裕を持って回避できていますが、このままでは説得も難しいでしょう。本当に危なくなったらヨミが実体化を解くでしょうが、それで根本的な問題が解決するわけでもありません。いくら故人とはいえ、ルグにとって目の前の暴漢は将来の義父であるわけで。このまま関係性が最悪の形で拗れたまま関わりを断ってそれでお終いというのは気分がよろしくありません。



「ったく」



 ルグは一瞬ルカに視線を向けました。

 ルカもその意を汲んで、困ったような表情でコクリと頷きました。

 何を話すにせよ、まず無理矢理にでも相手の動きを止めなければそれこそお話になりません。つまりは恋人の父親を動けなくなる程度に叩きのめす許可を得たというわけです。

 ルグとしても流石に刃物を持ち出す気はありませんが、興奮して動きが単調になっている素人相手なら身体強化した素手で十分。そもそも相手は死人なのですから、多少強めにやっても多分大丈夫、と。



『くたばれやオラァ!』


「うっせぇ! ちょっと大人しく……」



 拳を握り締めたルグは紙一重で相手のパンチをかわすと、カウンターの形でルカ父の鳩尾に向けて拳を突き出し――――。



『ぎゃ』


「え?」



 その拳が腹部に突き刺さるより先に、またもや突如現れた見知らぬ女性が華麗なる飛び膝蹴りをルカ父の顔面に叩きこんで強制的に大人しくさせたのです。






 ◆◆◆






「お、お母さん……久しぶり、だね」


『ええ、本当に。ルカったらこんな素敵な女の子になって』


 第二の闖入者の正体は、これまた故人であるルカの母。

 こちらも間違いなくヨミの仕業でしょう。

 父親は真っ赤な髪色でしたが、母親はルカと同じような薄紫の髪。前髪で目が隠れておらず、髪型が肩くらいまでの長さである以外はまさにそっくり。どうやらルカの容姿は母親似であるようです。ルカがあと十数年分ほど成長すれば、きっとこんな感じの美人に成長することでしょう。



「あの……お義母さん、でいいですか?」


『ええ、もちろん! 会えて嬉しいわ、ルグ君。ルカも好きな男の子を連れてくるような年になったのねぇ』



 ルグにとっては幸運なことに、ルカ母は娘の恋愛事情に寛容な性格である様子。

 先程までとは打って変わってあっさりと円満な関係性の構築に成功しました。



『あら、それじゃあその赤ちゃんはルカとルグ君のってわけじゃないのね? てっきり初孫かと思っちゃったわ』


「ええまあ、詳しく話すと長くなるんですけど、事情があってよその赤ん坊を預かってるみたいな感じです。仲間内で面倒を見てるんですけど、特にルカに懐いてて『ママ』呼びしてまして、はい」



 アイに関する誤解もこの通り解決。

 顔面を大きく凹ませダウンしていたルカ父も倒れたまま聞いていたようで、ルグに対する怒りもいくらかトーンダウンしたようです。



『なんでぇ、紛らわしい。最初からそう言えばいいじゃねぇか』


『……あなた?』


「……お父さん?」


『ひぃ、妻と娘が怖い!?』



 今度はルカも一緒になって父親を窘めました。

 最初からまともに話を聞こうともせず一方的に、それもよりによって静粛であるべき霊園で大暴れしていたのは、温和なルカとしても看過できない一線だったのでしょう。

 今のルカが殴れば人間大の物体など遥か宇宙の彼方まで飛んで行ってしまいます(もちろん手加減はするにせよ)。先程の飛び膝蹴りを見るにルカ母も相当に喧嘩慣れしている様子ですし、ルカ父に勝ち目はありません。



「あー……まぁまぁ、二人とも落ち着いて。この通り、お義父さんも反省していることだし」


『だから小僧にお義父さん呼ばわりされる筋合いは! あ、いえ、なんでも……はい……はい、すみません。私は大変反省しております』



 そこで間に入って女性陣を抑えたのがルグでした。

 一番苦労させられた彼としても文句の一つも言いたいところではありますが、流石に気の毒になってきたようです。ここで恩を売って態度の軟化を狙おうという打算も幾らかあったかもしれませんが。



『じゃあルグ君に免じて今回は許してあげます。いいわね?』


「次は……ないよ?」



 こうして、この件は無事に解決。

 最終的にルカ父からルグへの態度がどうなったかというと。



『べっ、別に、小僧に感謝なんてしてあげないんだからねっ』


「あ、そっすか」



 強面の中年男性が頬を赤らめながらツンデレ仕草をしてもただただ不気味なだけですが……まあ多分、大丈夫なのではないでしょうか。

 



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― 新着の感想 ―
[良い点] お茶目なおとんw 出だしなら勝ち目はおとんにあるが 既に超人になった婿と娘には勝てません。 >しかし、残念だったな。霊体である俺には物理攻撃は効かん! と言い張れば・・・いや、もう零体だろ…
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