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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十三・五章『迷宮武者修行 ~Extra Round~』

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Round3 ~飛ぶ鳥落としまくり~


 そして、またまた違う世界。

 今度は陸地のほとんどが砂漠に覆われた砂の惑星で。



「ヒャッハァー! 水だぁー!」


「すげぇ、本当に出やがった!」



 カラカラに乾いた大地から噴き出した水を前に、現地の人々が大喜びしていました。ごく限られた水場の近くでしか生存できない、その水場も一部の権力者が使用権を独占しているような世界では、まさに夢のような光景でしょう。



『すごい喜びようねぇ。コスモスさん、この調子でどんどん掘っていけばいいわけ?』


「ええ、ヒナ様。その調子でお願いします。井戸として継続的に利用するための整備はゴゴ様にお任せしますので。水汲みポンプの製造法と利用法については私からお伝えします」



 この乾いた世界にもまだ生きた水脈はあったのです。

 ただし場所が地下数百メートル以下では、スコップやツルハシといった道具による手掘りで掘り当てるのは現実的ではなかったのでしょう。そもそもボーリング検査などしようもない文明レベルの世界では、水がそこにあると知ることも不可能だったでしょうが。


 しかし今のヒナにかかれば、そんな水脈の一部を地上まで引っ張ってくるなど造作もないことです。考え無しに持ってきすぎて大本が涸れてしまっては元も子もないので加減は必要ですが、付近の人々の飲料水であったり家畜や畑を増やすのに必要な程度なら特に問題はなさそうです。



「ありがてぇ、ありがてぇ……お嬢ちゃんらは村の救世主だ!」


「何かお礼をしたいけど、大したモンがなくてなぁ……」


『いいのよ、そんな気にしなくて……じゃなかったわね。コスモスさん、アレを。えっと、この像を家に飾って毎日一回こんな風に手を合わせてくれればそれでいいわ』


「そりゃ構わんけども、そんなことがお礼になんのかい?」


『うん、なるなる。じゃあコスモスさん、次の集落に行きましょ』



 たとえ違う世界であっても、こうして信仰されれば問題なく届くことは実証済み。寂れた集落の一つや二つから得られるエネルギーなど微々たるものでしょうが、あちこちの世界でコツコツ人助けを続けていけば馬鹿にできない量になるはずです。

 問題があるとすれば、元々その世界を治める神とのトラブルにならないかという点でしょうか。本来そちらに流れるべきエネルギーをよその世界の神が掠め取ったと判断されれば、最悪複数の世界を巻き込んだ神々の諍いへと発展しかねません。



「まあ、だからこそ慎重に手を出す世界は選んでいるわけですが。ヒナ様」


『ええ、この世界、神様の気配が全然しないもの。最初からいなかったのか、それとも何かの原因でいなくなっちゃったのかまでは分からないけど』



 そこでコスモスが考えたのは、そもそも神のいない世界に手を出す方法。なにしろ治める神がいないのだからクレームが付くはずもありません。

 場合によっては、そのまま自分達の縄張り(シマ)にしてしまってもいいでしょう。たまに顔を出して今回のように水や不足した資源を与えたり外敵から守るなどすれば、現地の人々にとっても利があるはずです。



『でも、コスモスさん。よくそんなにいくつも我たちに都合が良い世界を探してこれるわね? いや、おかげで助かってるけど』


「ああ、何ということはありません。ほら、地球でも最近は異世界開発に力を入れてる国が増えているでしょう? そのデータを少々閲覧させていただいてるだけで」


『へえ、そうなんだ……それって合法的に? 最近コンプラとか厳しいっていうわよ?』


「ふふふ、もちろん合法ですとも。脱法というわけでもなく」



 魔王達が何やかんやした影響で、地球でも違う世界の存在や魔法という未知の技術体系の存在が公のものとなって随分経ちました。

 まだまだ課題は多いものの、なにしろ有用な資源が豊富に存在する世界を新たに発見すればそれが丸々自国の手に入るかもしれないのだから、各国とも大いに力を入れています。具体的には、魔法関係含む技術者の早急な育成や人材交流などなど。

 特定の国だけに肩入れしすぎないようバランスに気を遣う必要はありますが、コスモスも様々な国の技術顧問として新規発見した世界のデータなどを自由かつ合法的に閲覧できる立場にいるのです。



「特に皆様喜ばれるのは、資源だけは山ほどあるのに知的生命が存在しないパターンですな。面倒な交渉事を丸々スキップできますので。まあ、そこまで都合の良い世界はそうそう見つかりませんが。あとは大気の成分が地球の方々に有害だとか、文明レベルに開きがありすぎるのはアウトということになっています。他にもセーフ・アウトの基準は細々とたくさんあるのですが」



 未知の世界を発見したら大気や土壌のサンプルをまず入手。

 それから静音性に優れたドローンや魔法による小型ゴーレム、あるいはドローンをゴーレム化したハイブリッドなども使われますが、それらによる徹底した現地調査。この段階で新しく発見された世界の半分以上はアウト側に振り分けられます。いくら資源がたくさんあっても空気が毒ガス同然では絵に描いた餅と変わりません。


 知的生命体が存在した場合、その調査も重要です。

 原始人のような生活をしているところに、いきなり二十一世紀の地球文明が介入してもロクな結果にならないでしょうし、逆にサイボーグやら恒星間航行が実現している高度すぎる世界に存在を知られるのも怖いモノがあります。

 他にも条件は多々あり、最低でも貨幣経済が存在する程度の文明レベルに自力で達しており、知的生命体が過度に好戦的だったり排他的だったりせず、世界滅亡に繋がるような大きなトラブルを抱え込んでいない、など。新たな世界を発見するまではそう難しくもないのですが、その中から条件全てをクリアする世界を探すとなると並大抵の苦労ではありません。


 普通であれば横着を決め込む国も出てきそうなものですが、なにしろ根幹となる技術を異世界人であるコスモス達が握っているワケで。地球の中では国力に任せてあれこれヤンチャをしてきた国々も、面倒でもしっかり手順を守っているようです。少なくとも今のところは。

 低い文明レベルの世界が相手だからと軍隊を送り込んで暴力的な侵略など仕掛けたら、その時点で全ての手を引き以後一切の協力をしないと、技術を提供している全ての国々と契約を結んでいるのです。内心渋々であっても他国との競争を考えたら従わないわけにはいきません。


 ここまでの条件を全てクリアしたら今度はその世界における有力国家のトップ層、場合によってはそこを治める神々へと内密にコンタクトを取って平和的な交流が可能かどうかの検討を依頼する段階へ。

 それも問題なくクリアしたらようやく公の場での交渉が始まり、貿易や人の行き来に関するルールを制定。それから平和条約やら通商条約やら何やらを締結し、そこでようやく本格的な異世界交流のスタートとなるわけです。


 そこまで漕ぎ着けられる世界は、それまで見つかった世界の総数からすると恐らく1%を割るでしょう。そこまで低確率でありながら、当たりを引き当てた時のリターンがあまりに大きいがゆえに各国とも予算と人手をジャブジャブ注ぎ込んでいるわけですが。



「この世界も、先日ウル様やゴゴ様と訪れた世界も、いずれもアウト側のデータに振り分けられていた側ですな。とはいえ、アウトにも種類というものがありまして」


『あ、そういうことね。抱えてる問題を解決すれば元はアウトだった世界がセーフ側になるかもってこと?』


Exactlyそのとおりでございます。先の二世界は情勢の変化を鑑みての再検討が始まっていますし、この世界にも実は事前調査の段階で大型の油田が見つかっておりまして。あと数年もして世情が安定すれば採掘権の交渉を始められるのではないかと。これで顧問としての私の株も一段と上がるというものです」


『我たちも信仰でパワーアップできるし、この世界の人も助かるし。コスモスさんのお手柄にもなって、地球の人達もお金儲けができて……一石二鳥じゃなくて一石三鳥でもなくて、もう一石何鳥なのかもよく分からないわねぇ』


「実に大猟ですな。さ、次の集落は先程のより大きいようですね。お昼は鳥料理が食べられるお店でも探してみましょうか」



 コスモス達は飛ぶ鳥を落とす勢いで活動範囲を広げていきました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] コスモスの外異世界投資 でもいつか、メンインブラックなエージェントに脅威認定の誤認で付きまとわれそうな(;^_^A [気になる点] この世界の神様って既に地上に見切りをつけているか それ…
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