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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十三章『迷宮武者修行』

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神のチカラ


 神になるとは、神になっていくとは、どういうことか。

 これまで当の迷宮達もあまりに無頓着でした。

 ただ単に強くなったり、自身の本体内部でなくとも力を引き出せるようになったり、そういう分かりやすい変化以外を意識しにくいという事情もあったにせよ。

 ついでに言えば、特に神でも何でもないのに何故か自分達と同じようなペースでグングン強くなっていく知り合いが身近にいたせいか『案外よくあることなのかも?』と錯覚しやすくなっていたにせよ。



「これまではまだまだ神としての成長度合いがそんなでもなかったから、そういう影響力みたいなものもほとんど無視できるくらいに微弱だったってことかな。で、最近になって力が増した影響で遅まきながらそれに気付いた。気付いた時にはもう実害が出かねないくらいになっていた、と。こらっ、ウル君ダメじゃないか。ちゃんと気を付けておかなきゃ」


『道理が通ってるようでいて微妙に釈然としないの! ていうか、毎日一緒にいたんだから節穴はお姉さんも同じなのよ?』


「はぁー? 張本人ほどじゃありませんけどぉー?」


『ぐぬぬ……!』



 レンリとウルの仲睦まじい様子はさておいて、そろそろ本格的に神として世界に君臨する準備を考える時期になったということなのかもしれません。

 以前に女神が言ったことを信じるなら、現在のこの世界は一柱によるワンオペ態勢でずっとやってきているわけですが、その業態に負担を感じた現担当者によって新たな神々を七柱ほど育成しているのが今の状況。そのために決して安くないコストも費やしています。焦りは禁物ですが、先任者の立場としては一日も早く一人前になって戦力として活躍してもらいたいところでしょう。



『そう考えてみると普通の商会やお役所みたいな話ね。神様になって何をするのか正直よく分かってないけど、女神様あるじさまの負担を減らすためにもバリバリ働かないと』


ヒナひーちゃんは偉いですねぇ。モモとしては職業選択の自由を認めてもらいたいとこなのですけど……』



 各々の思惑はさておき、その実戦投入の時期は彼女達が思っていたよりずっと早いのかもしれません。どれくらい神力が高まったら、という具体的な目安については不明ですが。



「ん? 待って」


「おお、ライムも気付いたか。その神の力とやらだが、力というからには筋力や魔力などと同じで自在に使いこなせて初めて意味があるものなのではないか?」



 使いこなせない力など凶器も同然。

 力が大きければ大きいほど、その危険は高まります。

 現在の生き物を引き寄せたり強めたりといった影響も、力を使いこなせていないがゆえの暴走と解釈すれば筋が通るのではないでしょうか。



『ふむ。たしかに現状我々の神力は元々迷宮の頃から持っていたスキルと、パワーやスピードなど基礎スペックの底上げに使うのみでしたからね。それらが無意味というわけではないにしても、神の力とまで言う割には芸がないというのは否定しにくいところです』


『同意。拡大。直近で覚醒した我としてもその意見には同意だね。我々はワンオペでやってた女神様と違って人数がいる分だけ、それぞれの得意分野に特化して、オールラウンダーではなくスペシャリストを目指すべきって設計思想はあったのかもだけど。でも現状では全員のできることを合わせたとしても、今あるスキルが今後更に強化されたとしても、世界全体の面倒を見るには役者不足の感が否めないかな』



 今のまま成長したとしても、世界の全てに常に気を配りつつ適切に介入して平穏を維持する、なんて真似は手に余るというのが迷宮達の正直な意見。

 世界全部を神々で等分して担当エリアを決めたり、分裂可能な人数に応じてそのエリアを調整したとしてもなお厳しいだろうというのが本音です。下手をすれば追加戦力どころか女神の足を引っ張ることにもなりかねません。


 神の“なりかけ”と正式な神との違いとは何か。

 それはきっと単なる力の総量の差だけではないのでしょう。


 何をどうすれば神の力をモノにできるのかは分かりません。

 今この場でウル達が女神に尋ねても、下手にアドバイスをして余計な先入観を与えては逆効果になりかねないとの返答が。できれば指針の一つくらいは欲しいところですが。



「そういえば」



 それについて、レンリは一つ思い当たる点がありました。



「ほら、神様がたまにやってる『奇跡』ってやつ? あのコスト次第で何でもありのアレさ、ウル君達は使えないの?」


『うーん……使ってみようと思ったことがないから分かんないのよ?』


「じゃあ試してみたらどうだい? もし願いが好きに叶えられるっていうなら、ぶっちゃけアイ君の上位互換みたいなものだろう? それでアイ君の現状や街に魔物が集まる状態も全部どうにかできるかもしれないし。応用性についてもバッチリだし、神様の仕事だって十分に務まるんじゃないかな?」


『そうね、駄目で元々。思い切って試してみるの! ……やり方が分かんないの!?』


「そこは感覚的に自然と分かるとかじゃないんだ。まあ神パワーのコントロールを覚えたら色々問題も解決するかもだし気合と根性で頑張りたまえ。研究もそうだけど、世の中大抵の物事は最終的に気合と根性で何とかするしかないわけだし?」



 論理的であることを信条とすべき研究者にあるまじき精神論ですが、事実として分からないのだから仕方ありません。それに迷宮達がどこか学都や他の人里から離れた場所で試行錯誤する分には魔物の被害なども抑えられます。

 アイの面倒についてはシモンやルカの負担が大きくなりそうですが、一人か二人なら迷宮達が近くにいても問題ないでしょうし、多分きっと何とかなるのではないでしょうか。



『というわけで、神様パワーを使いこなすために皆で修業をするの。とりあえず滝でも浴びたらいいのかしら?』



 効果があるのかは分かりませんが、何もせず座しているよりはマシでしょう。アイを除く迷宮達は再び学都を離れて適当な山奥で修業をすることにしました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 精神の修行良いですね。 とりあえず、滝から始めってマグマ渡り歩きに宇宙空間で精神を鍛えて…… >我より強い奴に会いにいくの! たぶん魔王さんなら修行相手になってくれそう 嫁さんには弱い…
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