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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十三章『迷宮武者修行』

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レンリ先生の短期特別講座


 先日のお祭りが終わってすぐ後のことでした。

 レンリの元に一通の手紙が届いたのです。


 貴人宛ての手紙らしい時候の挨拶から始まり、あまりに丁寧すぎてかえって本旨を読み取りにくい文面でしたが、大まかに要約すると以下のようなものでした。



・もうすぐ学都の新市街区に建てていた大学が正式に開校するよ。


・正式に新入生を迎え入れるのは翌春から。しかし、その前段階として各分野の有識者を招いて希望者向けの短期講座を開催する予定だよ。


・優秀な教育者・研究者を呼び寄せられるコネクションや交渉力が本校にあることを各方面にアピールして、入学希望者やパトロンを集めるのが狙いだよ。


・で、昨今各国の学会で話題の中心となっている概念魔法の発見者にして第一人者たるレンリさんに特別講師をお願いしたいなぁ?



 ……といった具合です。

 手紙の差出人は大学の学長、レンリとは面識のない人物でしたが、どうやら出資者であるエスメラルダ伯爵からの推薦もあったようです。時期的に逆算すると、話が出たのは先日お祭りの準備期間あたりでしょうか。



「うわぁ、面倒くさい!」



 正直、レンリとしては最初はあまり気乗りしませんでした。

 たしかに彼女の実家は、代々の当主が王族の教育係を務めている由緒正しい家系ですが、レンリ自身は人に何かを教えるのが特別に得意ということはありません。

 むしろ面倒な家業を面倒な当主の立場を、セットで姉に押し付けることができたと心底喜んでいたほどです。そうやって実家のコネや名声は都合良く使い、自分は好きな研究や遊びに没頭する人生を送りたい……と、そう考えていたのですが。



「しかし、まあ、あれだね。何かの分野の第一人者と呼ばれるのは、正直悪い気分じゃあないね。ていうか学会で話題にって、父様はどれだけ話を盛ったのやら」



 しかし面倒事は御免被るとしても、話題の研究分野の第一人者としてチヤホヤされるのは悪い気分ではない。むしろ、かなり嬉しい。


 そんな気持ちがあったのは否定できません。

 ウルと気が合うだけのことはあります。


 人から優しいとか思いやりがあるなどと言われると、途端に恥ずかしくなってフニャフニャに萎れてしまうレンリですが、能力面や研究成果に対する称賛を受けるのは大好きだという実に面倒くさい性格をしているのです。

 そして今回の講師としての招聘は、まさにその研究者としての成果を買われてのこと。つまり、人から褒められまくって良い気分になる絶好の機会というわけで。



「ふむふむ、短期講座は一コマ二時間で計五日間……聴講生からの評判と本人の希望次第では、そのまま本校の教授として……流石に就職までするのは重いけど、短期の講座くらいならやってあげてもいいかな? だとすると、実演を交えながら基礎中心に解説を……」



 いつの間にやら、話を受ける方向で講座内容を頭の中で組み立て始めていました。本格的に教職を志すつもりはなくとも、期間を区切った講座だけということであれば心理的な抵抗もさほどではありません。

 今件を引き受ければ学内の蔵書を自由に閲覧できるそうですし、講師として招かれた他の学者から有益な話を聞くこともできるでしょう。



「やれやれ、まあ心が広いのでお馴染みのレンリさんとしては、ここは一つ力を貸してあげなくてはね?」



 そんなわけで講師の仕事を引き受けたレンリは、世界各地を巡る迷宮達とは別行動しつつ短期講座の準備に掛かり切りになることになったというわけです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 講師レンリカオス講義の予感 [気になる点] レンリ〉魔術師なら、工房と金づ……もといスポンサーを集めればある程度課題はこなせる。 剣士はシモン騎士団長に鍛えてもらえ 盗賊はルかに実家の家族…
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