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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十一章『迷宮大紀行』

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フカフカ、モフモフ、鳥エリア



「さっきのニワトリ、卵を守ってたのか。それであんなに気が立ってたんだな」


『うーん、悪いことしちゃったかしら?』


 巨大ニワトリを撃退した後のこと。

 ルグとヒナはすぐ近くの岩陰にいくつかの卵が隠されているのを見つけました。一つ一つが大玉のスイカの更に倍は優にありそうな特大サイズ。オムレツにしたら軽く百人分はありそうです。

 先程のニワトリがいきなり襲い掛かってきたのは、恐らくルグが推測したように卵を守るためだったのでしょう。そのニワトリはというとヒナに全身ドロドロに溶かされて、現在は薄ピンクの水溜まりとなって彼らの足下に広がっています。一見するとかなりグロテスクな死に方をしたようにも見えますが、

 


「いや、でも、先に手を出してきたのはあっちだしな。ここはお互い見逃して手打ちにするってことでいいんじゃないか」


『それもそうね。じゃあ、そういうことでいいかしら?』



 ヒナが能力を解除すると足下の水溜まりが集まって空中に持ち上がり、ほんの数秒で元のニワトリの姿を取り戻していました。もちろん死体ではありません。


 ヒナの持つ物質の液体化能力は、あくまで元の性質を保ったまま、生物であれば命や意識を保ったまま液体にするというもの。普通に考えたらそんな状態で生きられるはずがありませんし、ヒナ自身にもそのあたりの仕組みは完全に分かっていないのですが、実際できるものはできるのだから仕方ありません。

 根本的な生命としての構造や物理法則、世界の在り方そのものに対する限定的な改変とすら言っても過言ではない、まさしく神懸かり的な能力です。


 ところで、そうして元の姿を取り戻したニワトリはというと。



「ところで、さっきの状態でそのまま飲んだら意外と美味しかったりしないかな? ほら、材料は見ての通りだしチキンスープ的な感じで」


『あんまりオススメはしないわよ? 味がどうかは知らないけど、身体の中にいる雑菌とか老廃物も全部混ざってるから普通のヒトが口に入れたら変な病気になりそうだし』



 そんなレンリとヒナの会話が理解できたのでしょうか。

 あるいは野生の本能が絶対的強者に対する全面降伏を選択させたのか。

 液体から固体に戻った巨大ニワトリは、再び襲い掛かってくるでもなく恐怖でガタガタ震えていました。いきなりドロドロに溶かされたと思ったら、死ぬわけでもなく意識が残ったまま元に戻れるかも分からないという状況は、かなりの恐怖体験だったことでしょう。それでも遠くに逃げようとはせず卵の前から動かないのは、鳥類ながら天晴な親心と称えるべきかもしれません。



『ねえ、ニワトリさん、我が言ってること分かるかしら。そっちから手を出してこないなら、こっちから何かすることはないから通してくれる? 卵も取ったりしないから』


「えと……分かってくれた……の、かな?」



 ヒナの言葉が本当に分かったのかは定かではありませんが、もうニワトリが手を出してくる気配はありません。これで落ち着いてこのエリアの探索ができそうです。






 ◆◆◆






 最初のニワトリと遭遇した場所から歩くこと数分。

 レンリ達はこのエリアの特徴を大まかに把握しました。


 広さは先程までいた野菜エリアと比べると十倍以上。

 地面は剥き出しの土と、植物に覆われている場所の割合が半々。

 植物のサイズもやはり通常のものより巨大で、タンポポの花部分が人の頭ほどもあります。エリアの中央付近には清潔な水が流れている川や泉までありました。



「なるほど、ここは鳥類を集めたエリアのようだね。サイズがおかしいけど」



 ですが、やはり最大の特徴は先のニワトリのような巨大鳥類でしょう。

 ダチョウにペンギン、キーウィやクイナやペンギン、そしてペンギンなどの非常に多種多様な鳥類が、エリア内のあちこちでのんびりと暮らしている様子が窺えます。いずれもサイズは馬車並みか、大きいものだと二階建ての家屋ほどもありました。



「……いや、言うほど多様じゃなくないか?」


「ペンギン……多い、ね」


「ここは飛べない鳥縛りみたいだね。見た感じ天井もそこまで高くないし」



 このエリアは鳥は鳥でも飛べない鳥縛りのエリアなのでしょう。

 何故そんな縛りを設けているのかは不明ですが、子育て中などで警戒心が強くなっている個体に近寄らない限りは野菜エリアと同じく大きな危険はなさそうです。

 探索中、何羽かの鳥が一行に興味を持って近寄ってきましたが、危害を加えてくる様子もありません。特に丸々とした体形のキーウィは人懐っこい穏やかな性格のようで、レンリやヒナが触っても逃げたり怯えたりせず、のんびりとした態度を崩しません。



「わっ、ふかふか……えへ、やっぱり、ここ好きかも」



 最初は怖がっていたルカもそんな様子を見て興味を惹かれたのでしょう。

 最初は恐る恐る指先で触れるだけでしたが、安全だと分かってからは(絞め潰さないよう手加減した上で)抱きついて、全身で羽毛の感触を楽しんでいます。フカフカ、モフモフの柔らかい羽毛を存分に堪能し、巨大虫の件で消耗したメンタルを心ゆくまで癒すのでありました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] バトルしにくいエリア でかいキュウィが微笑ましい このエリアは大人しい子ばかりですね。 〉ただし猛禽類がいないとは言ってない [気になる点] たしか絶滅した古代の鷹に軽々と人間を鷲掴みす…
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