表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/1047

アドバイス


「え? お、おお王子……様?」


「うむ。そういえば、まだ言っていなかったか?」


「言ってないですよ!?」


 『風の魚亭』での昼食の後。

 そのまま貴賓室でお茶を飲みつつ、軽く世間話などしていたのですが、いきなり軽くない事実が明かされました。

 先程のオーナー氏が、シモンのことを「殿下」と呼んでいたのが気になって尋ねてみたのですが、案の定、彼はやんごとなき身分のご令息だったのです。


 ルグとルカは王子と聞いても「すごく偉い人」くらいの認識で比較的驚きも少なかったようですが、他国の貴族家の一員であるレンリは、なまじその身分の持つ価値が正確に認識できてしまい、はっきり言ってちょっとビビッていました。



「少し前に兄上が王位を継いだから、今は正確には王弟だな。一応、王位継承権もあるぞ」



 シモンの父であるこの国の前王には二十人近くもの子供がいました。

 その内、他国の王家に嫁いだり婿養子に入ったり、あるいは自国の高位貴族の家に降嫁した者は諸々の都合上権利を放棄していますが、それ以外の王子や未婚の姫達は王位継承権を有しているのです。



「とはいえ、今はたしか優先権十五か十六位とかだったはずだし、実質お飾りみたいなものだがな。俺は別に要らんし返上してもいいのだが、一軍の長としての箔付けでそのままにしておけと国王陛下あにうえが言うものでな」



 権利があっても当のシモン本人は王座に関心などないようです。

 本当にちょっとした箔付け程度にしか思っていないのでしょう。


 まあ、戦時であればともかく、現在の平和な時代に彼の順番が回ってくる可能性はほぼ皆無ですし、そう思うのも無理はありません。このまま順当に行けば、シモンの甥である現王の長男が次代の王となるはずです。




「なに、公式の場でもなければ、王族だのなんだの一々気にする必要はない。先程までのように気楽に接してもらえたほうが俺も楽だしな」


「はあ。まあ、そのほうが私達もありがたいですけど」


「俺のともだ……いや、知り合いにも王をやっているのが一人おるが、そいつは仕事を部下に放り投げて、いつも遊んでばかりいるしな」



 一度、「友達」と言いかけてから「知り合い」に訂正していました。

 どうも、その人物に対して何かしらのわだかまりがあるようです。



「どこの国だか知りませんけど、よくそれでやっていけますね」


「うむ。あれで不思議と民には慕われているようなのだ」


「うん、いい人。本当はとっくに認めているんだから、シモンはもっと素直になるべき」


「む……まあ、悪い奴ではない」



 ライムに言われて、シモンは苦々しい表情を浮かべました。本気で嫌がっているわけではなさそうですが、彼にも色々と事情があるのでしょう。







 ◆◆◆







「そういえば、お二人はどこまで進んでるんですか?」


 レンリがシモンとライムに質問しました。

 ちなみに迷宮についての話です。他意はありません。



「ああ、俺は第五迷宮まで。確かライムも……ん、どうした?」


「……なんでもない」



 問われたのは、あくまで迷宮について。

 それは分かっていても、一瞬別の意味合いが頭をよぎったのでしょう。ライムは、(シモン以外には分からない微妙な変化ですが)何やらモジモジとした表情を浮かべました。



「ああ、トイレなら確か部屋を出て右だぞ。あまり我慢すると身体に悪いからさっさと出して……な、なんだ!? 何故俺の脇腹をつねる!?」


「……手が滑った」


「それ結構痛いから、俺以外には滑らないように気を付けろよ」


「善処する」



 ちなみに、身体強化込みでのライムの握力は生の青竹を軽く握り潰せるレベル。

 もし常人に同じことをしたら、そのゴリラ握力で内臓ごと肉が抉り取られてしまうかもしれません。もっとも、彼女がシモン以外に手を滑らせる可能性に関しては恐らく無用の心配でしょうが。



「あのー、それで迷宮のことなんですけど?」


「おお、すまんすまん。俺は第五まで進んでいて、ライムも確か同じだったな?」


「うん」



 神造迷宮は全部で七つ。

 二人は既にそのうちの五つ目まで攻略を進めているようです。これを早いと見るべきか、あるいはこの二人ですら簡単には行かないと見るべきかは、判断の難しいところですが。

 いずれにせよ、未だ最初の迷宮で躓いているレンリ達にとっては非常に頼りになる存在に違いありません。



「私達、第一の試練でこの前失敗しちゃいまして……いや、あれはそれ以前の問題だった気もするけど。それで、何かアドバイス的なものを頂けないかと思いまして」


「ほう、試練のアドバイスとな? そうだな……例えば、先程の訓練の時にそなたらも言っていたが……」



 シモンの助言は実に単純極まるもので、



「え、そんなのでいいんですか?」


「ああ、恐らくは問題ないであろう」



 レンリ達はキョトンとした表情で顔を見合わせました。



シモンの言う「知り合いの王様」達がこの頃にどうしているかも大まかには考えていますので、いつか何かしらの形で書いてみるのもいいかもしれませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ