表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十章『恋愛武闘伝』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

599/1057

ライム、飽くなき向上心を燃やす


 一週間後。

 ライムは約束通りに『理想』装置の試用報告をしました。



「ふむふむ、好みの夢が見られる効果か。元々の予想とは違ったけど、それはそれで面白そうかな」


「うん、わたしも、使ってみたい……かも」



 何日かかけて検証した結果、装置の効果は好みの夢を見られるというもので間違いなさそうです。しいて言うなら「好みの夢」であって「好きな夢」ではないのが曲者ですが、まあ悪夢を見るよりはずっと良いでしょう。就寝前の数分間だけ結界の中に入ったら、あとは普通に床に就くだけ。使い方も実に簡単です。


 報告を受けたレンリやルカも興味深そうにしていました。元来の想定結果から外れてはいますが、これはこれで成功と言っても良いでしょう。



「それでライムさん、好みの夢って具体的にどんなのだい?」


「……ん。それは」



 会話の相手がルカだけならともかく、いえ、事情を知っているルカにでも、あの乙女趣味全開の夢を説明するのはライムの気が進みません。あまりにも恥ずかしすぎます。


 なので、ライムは別の夢の話でお茶を濁すことにしました。

 具体的には『何万、何億、何兆という無数の異世界から集まった猛者達と全時空統一格闘トーナメントなる大会に出場して、見事優勝の栄冠を勝ち取った』という灼熱アツい内容。例の新婚シチュの翌日に見た夢なのですが、こちらなら明かしても恥ずかしくありません。


 夢の後半にはどんどんと戦力のインフレが加速。ライムが毎秒一千億発放つジャブ一発一発の余波で対戦相手ごと宇宙が百兆個くらい消滅してから余剰エネルギーで大量発生したビッグバンで新たな宇宙が滅びた以上の数誕生するみたいな意味不明の展開になっていましたが、実際に夢を見ていた時のライムは特に疑問に思わず「そういうもの」として受け入れていたのだから不思議なものです。



「それはつまり、そのくらいの強さがライムさんが無意識に求めている理想の強さってことなのかもね?」


「ん。そうかも?」



 人は意外と自分自身について理解していないものです。

 表層意識には上らない深層心理。そんな心の奥底の部分にある自分の本当の望みを、あの装置は夢という形を通じて自覚させ得るのでしょう。



「早く夢に追いつけるように頑張る」


「ええと……ほどほど、に」



 向上心を持つのは良いことです。

 向上心を持つのはきっと良いことのはずです。

 ライムが否定するでもなく素直に頷いたことに対し、隣で聞いていたルカは軽い眩暈すら覚えましたが、まあ実際にそこまで強くなったらなった時に考えればいいでしょう。



「報告。以上」


「うん、ありがとう。参考にさせてもらうよ。早速、改良案を考えてみようかな。上手いこと小型化して剣に組み込めればいいんだけど。『寝る時に枕元に置いておくと良い夢が見られる魔剣』ってとこかな」


「えと……剣に、組み込む、意味は?」


「はっはっは。そりゃ、製作者わたしのモチベーションが上がるからさ」



 ともあれ、これでモニターに関しての用事は一段落。

 実験はひとまず終わりですが、例の装置に関してはわざわざ撤去するのも大変ですし、そのままライムの物にしてしまって構わないという約束になっています。

 初日こそ驚いて楽しむどころではありませんでしたが、ライムとしても少しは慣れて楽しめるようになってきたところです。実質、報酬として貰えるのは幸運でした。



 ですが、本日の用件はこれで終わりではありません。

 むしろ報告だけで済む話より、ここからが重要かもしれません。



「おーい、言われたの色々買ってきたぞ」


「あ、ありがと……おつかれさま」


 女子三人でお喋りをしていたところに、買い物に出ていたルグが戻ってきました。彼はおつかいを頼まれて街で色々な食材を買ってきたのです。



「ルカ君を通じてライムさんから特訓の協力を頼まれた時には驚いたけど、料理の特訓なら大歓迎さ!」



 まあつまりは先日ライムがルカと約束していた料理特訓です。

 この手の修業というのは、とにかく量をこなして成功と失敗の経験を積むのが重要なのですが、二人だけでは作る分にはともかく食べる量には限界があります。

 実際、何日か前にライムとルカだけで料理の練習をしてみたのですが、気合を入れすぎた反動で後半は作りすぎた料理を食べ切ることに必死になっていました。かといって、よほどの失敗作でもなければ捨てるのも気分が良くありません。


 そこで本当の理由は伏せた上で、レンリやルグに味見や買い出しを頼むことにしたのです。レンリの食欲ならば十人前や二十人前くらいは軽々片付けてくれるでしょう。



「ルー君が買い出しの協力、ルカ君が調理の協力、そして私が食べる協力。うんうん、助け合いの精神というのは実に美しいものだね」


「ん。よろしく」



 かくして秘密特訓の第二弾、ライムの料理修業が始まったのです。

 参加人数が増えて何が秘密なのかいよいよ分からなくなってきましたが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ぶれないレンリたぶん実家の自室は刃物で溢れかえりそうですね。 [気になる点] これでバトルジャンキー確定 漢女としての自分と乙女としての自分と葛藤する日々が( ̄▽ ̄;) つまり、回りか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ