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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
十章『恋愛武闘伝』

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ライム、弟子入りする


 結局、シモンはどこまで理解しているのやら。一旦人目のない場所に移動して解散してからも、ライムの胸の内にはモヤモヤとした物が残り続けていました。

 しかし、それでも昨日までよりは格段に気楽になっています。本当に言いたいこととは少し違いましたが、それでもシモンに伝えたいことを伝えて幾分スッキリしたおかげでしょう。



「ライムさん、あの……お話が」


「ん。なに?」


「えと……ここ、だと……ちょっと。二人で、話せる……場所に」



 さて、そんなライムに先程別れたばかりのルカが追い付いてきました。

 どうやら彼女一人のようです。

 周りにルグやレンリが隠れている様子もありません。

 言葉通り、何やら二人だけで話したい用件があるのでしょう。


 ライムとしても、ルカには礼を伝えておきたい気持ちがありました。

 なにしろルカが気を利かせてくれたおかげで、的外れな誤解で落ち込んでいたのだと分かったのです。それがなければ未だにウジウジと無意味な悩みを引きずっていたことでしょう。


 そんな流れでライム達は近場のカフェに二人で入ったのですけれど。


 

「ライムさんて、シモンさんの、こと……好き、ですよね?」


「ん、んっ!? ……けほっ、こほっ」


「あ、驚かせて……ごめんなさい。ハンカチ、どうぞ」



 いきなり確信を突いてきた言葉に驚いて、ライムは口に含んでいたお茶を盛大に噴き出しました。まさに先手必勝。不意打ちが見事にハマった形です。ルカにそんな意図はなかったので実質ただの自爆みたいなものですが。



「……そんなことは」


「そんなこと、って……違うんです、か?」



 それでも精一杯の精神力で平静を装って誤魔化そうとするライム。

 ですが彼女は嘘を吐くという行為がとても苦手でした。

 それはもう途轍もなく苦手でした。



「そそそそんなことは」



 どのくらい苦手かというと、このくらい。

 質問をしたルカが申し訳ない気分になってくるほどの正直者ぶり。ですが、これで騙されてくれないことはライムもよく分かっているのでしょう。



「そんなこと……ないん、ですか?」


「………………ある。好き」



 結局、最後にはしぶしぶ本心を白状することに。普段のポーカーフェイスを保つこともできないのか、恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で覆って隠してしまいました。



「ふふ、ライムさん……可愛いなぁ」



 一方のルカはというと、ほぼ間違いないという確信があったとはいえ予想が的中して安心した様子。恥ずかしがるライムの反応を楽しんでいました。


 ところで、ルカは何故ライムにこのような話を切り出したのか。

 それには当然ちゃんとした理由があります。



「あまり手持ちがないけど、これで」


「あの、ライムさん……このお金は?」


「口止め料」


「いえ、あの……それは、引っ込めてください……大丈夫なので」



 もちろん、ライムの秘密をネタに脅迫を企んでいたわけではありません。

 レンリやコスモスならともかく、そういうのはルカの芸風ではありません。ルカがわざわざライムと二人きりになってから話を切り出したのには、もっと合法的かつ前向きな理由があるのです。



「あの、わたし……協力、したくて」


「ん。協力?」


「はい、わたし……ライムさんには、すごく……お世話になってるから……シモンさんと、上手く行って、欲しくて」



 知り合ってからこれまでの間、ルカは色々な場面でライムの世話になってきました。彼女はこの機会にその恩返しができればと考えていたのです。



「いい子。ありがと」


「えへへ、いえいえ……それほど、でも」



 理由が分かればライムの反応も自然と違ってきます。

 ルカもライムに負けず劣らず嘘が吐けない人間です。

 彼女がこう言った以上、他意なく協力したいだけなのでしょう。

 ライムの警戒心もこれで一気に緩みました。



「わたしも、皆に……助けてもらって、心強かった、から」


「なるほど」



 それに恋愛面においてルカはライムの遥か先を行く実績があるのです。

 現状のまま一人で孤独な恋の戦いを続けるよりも、先達の協力を得て戦ったほうが何かと効果的な場面も少なくないでしょう。


 それに何より、相手はあのシモン。

 生半可な方法で攻略可能だとは思えません。

 使える手札は多いに越したことはないはずです。

 最初は戸惑っていたライムも前向きに申し出を受ける方向で考え始めました。



「こちらからお願い。お願いします」


「あ、いえ……そんな、頭を下げる、必要は」



 かつての師匠が今は弟子。前にルカがダイエットをした時にライムに弟子入りしたことがありましたが、今回はその反対です。



「よろしく、師匠。ラブ師匠」


「ラ……ラブ、師匠……?」


「ん。師匠はもう別にいるから、ラブ師匠」


「そ、その呼び方、は……ちょっと……イヤ、かも」



 こうして、ラブ師匠ルカと新弟子ライムの修業の日々が密かに幕を開けたのです。

 もっとも、『ラブ師匠』という恥ずかしい肩書きは即時却下となりましたが。



◆今回からしばらくはライムのターンです

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