表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
九章『信じる心があなたを救うと信じて』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

556/1058

第三迷宮リターンズ


「さあ冒険だ、冒険をしよう」


 新聞の取材という予定外の出来事に時間を取られてしまいましたが、取材を終えた翌日からレンリ達は迷宮の攻略を再開しました。


 目標は第三迷宮『天穹海』。

 天空に広がる立体海域。その海に点在する島々を巡り、設置された謎を解いていくという流れ……の、はずだったのですが。



「なんだかしばらく来ないうちに、ええと、なにこれ観光地?」


「なんか普通に店もあるな。かき氷にジュースに魚介の網焼き……」


「釣り、してる……人も、いっぱい」



 久々に訪れた第三迷宮は、すっかり海沿いのビーチリゾートといった風情になっていました。砂浜では親子連れが砂遊びや潮干狩りに精を出し、釣り人は浜辺や海に浮かべた小舟から釣り糸を垂らし、飲食物の販売や釣り竿、釣り船のレンタルをする屋台まで。


 いえ、こうなった理由はレンリ達にも分かります。

 というか、理由の大半はレンリにありました。


 『女神像』を始めとした迷宮の運営方針の変更。

 第一のみならず第二第三の迷宮への入場を可能とした条件の緩和。

 魔物の出現する危険なエリアとそれ以外とを明確に区分けしたことによる安全地帯の大幅拡大。これらが大きく影響しているのは明らかです。



「果物や魚介は取り放題。ヒナ君が制御してるから気候が大きく荒れる心配もないし、この辺には魔物もいない。外の季節とも関係ない常夏の迷宮。それが誰でも自由に入れるようになったんだから……なるほど、それは当然こうもなるか」


『ええ、まあ、我はイヤじゃないから別にいいんだけど』



 レンリの独り言に、いつの間にか隣に立っていたヒナが返事をしました。

 この迷宮の中は彼女の体内も同然。

 レンリ達が入ってきた瞬間には、もう存在を感知していたのでしょう。



『こんにちは。今日は冒険かしら? それともバカンス?』


「一応、冒険のつもりだったんだけどね。この様子を見て、正直ちょっと気が抜けた感はあるかも」


『そう。まあ、どっちでもいいけど気を緩めすぎて怪我しないでね。ちなみに食べ物屋さんなら、この島の反対側に屋台を出してる貝焼きがオススメよ。焼いただけの魚介類なんてすっかり食べ飽きたと思ってたけど、火加減と調味料でずいぶん違ってくるものね』


「うんうん、ヒナ君も状況を楽しんでるようで何よりだよ」



 よく見てみればヒナは右手に焼きイカの串、左手にかき氷のカップを持った二刀流。言うまでもなく周りの屋台で買った物でしょう。オマケに麦わら帽子にサンダル履きという完全装備です。


 口調こそ落ち着いたものですが、どう見ても気を緩めるなと言った彼女自身が一番バカンス気分を満喫しています。先程の言から察するに、今に限ったことではなく日頃から迷宮内で商売をしている店の食べ歩きなどもしているようです。


 レンリ達としても食べ物や海遊びに興味がないわけではありません。

 むしろ大いに関心があるのですが、



『じゃあ、気を付けてね。遭難しても我を呼べば助けてあげるから』


「それは頼もしいね。なるべく、お世話にならないように善処するよ」



 今日のところはグッと我慢。

 断腸の思いで平和なビーチを後にしました。


 その後は近くにあった『女神像』のワープ機能を使って以前到達した小島に移動。

 しばらく放ったらかしになっていた愛船『デストロイ号』(大量の鋼板や刃やトゲで武装した凶悪な手漕ぎ式ボート)のサビ落としや点検にこの日一日を全部使う羽目になったりもしましたが、翌日以降はとても順調な道行きとなりました。


 ルカのパワーで船を漕げば海の魔物もなんのその。

 はね飛ばしたり、切り裂いたり、圧し潰したり。

 たまたま進路上にいた魔物にとっては不幸なことに、あらゆる障害物を物ともせずに三人の乗った『デストロイ号』は突き進みました。


 迷宮の試練に関しても問題はありません。

 第三迷宮の試練はヒナの設置したクイズやなぞなぞを合計百問解けば合格というものですが、そういう方面には滅法強いレンリがいれば大半の問題は楽勝です。


 あまり活躍の機会がないルグも、やれ喉が渇いただの小腹が空いただのとワガママを言うレンリにすぐ水筒やお菓子を差し出して、なるべく雇用主のやる気を保たせるよう努めていました。ある意味、最重要の役割です。

 例の『氷雪の魔剣』を借り出して、アイスクリームや氷入りドリンクを迷宮に持ち込む機転は特に見事なものでした。彼の働きがなければ、この迷宮の攻略にかかる時間は倍では収まらなかったことでしょう。


 と、このように第三迷宮の攻略はいつになく順調。

 まるで腕利きの冒険者になったかのようなスムーズさです。

 この三人にしてはとても珍しいことに、それから半月ほどの間は途中でヘンテコな事件に巻き込まれたり、まだ見ぬ奇人変人が現れて邪魔をされるようなこともありませんでした。





 そう、直接巻き込まれたわけではありません。

 だからこそ気付くのが遅れてしまったのでしょう。直接の関わりはなかったものの、ヘンテコな事件そのものは既に起こりつつあったのです。


 いよいよ百問到達も見えてきた頃のこと。

 レンリ達は新聞を読んで初めてその事件について知りました。



◆ヒナは海底の貝の中にある真珠やサンゴなどを街で換金することで現金を得ています。

あと、レンリ達は取り放題だと勘違いしていましたが、実際には元々漁や果物の販売で生計を立てている人々が困らないように迷宮内で収穫可能な量をヒナが調整していたりします。


◆ポイント評価してくれた方ありがとうございました。

引き続き、面白いと思ったらお願いします。

ちなみに評価フォームは後書きの下にありますので。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全迷宮リゾート化計画 あとはホテルやコテージ作るだけですね! 迷宮とは一体……うごごごご [気になる点] 珊瑚や貝はかなり儲けますね でも、カキやサザエなどの養殖とか大型魚類のトロー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ