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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
八章『新生勇者伝説』

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作戦開始の少し前


 本日のメインイベント。

 勇者グッズの競売は順調に進んでいました。


 すでに二十品近い商品が登場し、いずれもかなりの高額で落札されていきました。

 会場を借りるレンタル料などの諸経費も少なからずかかっていますし、全額がコスモスの懐に入るわけではありませんが、それでも推定利益は金貨数千枚。立派なお屋敷が建つくらいの金額になっているはずです。



 ホール内の熱気は、しかし、まだまだ加熱する一方。

 直接その様子が見えない舞台裏であっても、その勢いは伝わってきます。



「さて、次は大物っすね。もう大体想像はつくけど……何すか、これ?」


『ええと、こっちの目録によると「勇者リサ様が泊まった宿屋の部屋に置いてあったベッド」って書いてあるの』



 舞台裏では、ウルとバーネットが次に出す品物の準備をしていました。



「うへぇ……二人がかりでも持ち上げられるっすかね?」


『ああ、それは大丈夫なの。我は力持ちだから一人でも余裕なのよ』



 基本的には大して難しい仕事ではありません。

 用意された品物が目録の内容通りであることを確認して、適切な大きさの手押しワゴンに乗せるだけ。ウルがそれをステージ上まで運んだら、あとはコスモスが上手いこと繋いでくれます。

 中には重たい物もありますが、今のウルは自分の迷宮外でも強い力を発揮できるようになっています。最大でも劇場の床が抜けない程度の重量であれば何も問題はないでしょう。



「はぁ……」


『溜め息なんて吐いてどうかしたの? 疲れちゃった?』


「いや、何ていうか……お金ってある所にはあるもんすねぇ。地道にコツコツ働いてる世間の皆さんに申し訳なくなってくるっすよ。いやまあ、怪盗なんてやってる自分が言える筋合いはないだろうけど」



 重量物の運搬に関してはウルが担当していますし、それ以外の作業も肉体的な疲労を覚えるようなものではありません。それにも関わずバーネットが深い心労を感じているのは、やはりホールのほうから時折聞こえてくる金額を告げる声のせいでしょうか。


 本日のイベントが特殊な趣味人の集いだとは彼女も聞いていますし、一見するとゴミにしか見えないような品物に目玉が飛び出るような値が付く理屈も理解してはいるのですが、心情的な納得と理解はまた別物です。事情を把握した上で改めて品物を見ても、やっぱりゴミにしか見えません。そんなゴミ同然の品物に、下手をすれば一般的な役人の年収以上の値段が付くのですから、これはもう世の無常や理不尽を感じないでいるのが無理というものでしょう。


 もっとも、バーネットの心労の原因はそれだけではありませんが。



「で、本当にやるんすよね? 自分としては別に手伝いのバイト代だけ貰ってお終いでもいいというか、むしろそっちのほうが嬉しいというか……」


『当たり前なの。もう、怪盗団のボスがそんなに消極的じゃいけないのよ?』


「ボス扱いするなら、もっと発言権が欲しいんすけど……」



 本日の目的は競売会を成功させることだけではありません。

 その裏で怪盗団としての使命も果たさねばならないのです。

 既に犯行計画は練り上がっています。

 そもそも盗む必要がないという点にさえ目を瞑れば、まさに完璧。

 ウルがわざわざ勇者の格好をしているのも、その作戦を成功させるため。成功すれば大勢の観客の目の前で堂々盗みを成功させつつ、しかし、誰もそれに気付かないという状況が生まれるはずです。



『名付けて、お芝居大作戦、なの!』



 作戦開始まで、あと僅か。



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― 新着の感想 ―
[良い点] バーネットに発言権無し もう、コスモスが怪盗団のボスでいいんじゃないかな? だって、被害ゼロで盗み達成しそうだし [気になる点] くるぞ…… バーサーカーエルフ少女が…… しかし、彼女…
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