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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
八章『新生勇者伝説』

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透明化能力の解説と対策について


「ご存知ですか、ウルさま? 一口に透明化と言っても実際には色々なバリエーションがあるのですよ」


『そうなの?』


「はい、そうなのです」


 透明化の仕組みというのは大まかに三種類に分けられます。


 一つ、見た目を工夫して周辺環境に溶け込む。

 目立たない色合いや模様の衣服を身に纏う。

 あるいは肌に直接ペイントを施すなどして、見えにくくするというもの。

 野生動物や昆虫の擬態と同じと考えれば分かりやすいでしょうか。カメレオンやタコの仲間にも身体の色合いを変化させて外敵から身を隠す種類がいると知られています。

 迷彩柄の軍服や植物の枝葉を全身にくっつけたようなギリースーツなども、そういった工夫と発想から生まれた装備です。


 一つ、文字通りガラスや水のような外見を獲得する。

 陸上生物にはあまりいませんが、海中に住むクラゲや魚の中には体内の臓器が外から見えるほど透明に近い外観のモノがいます。気の遠くなるほど長い年月、数えきれないほどの世代を重ねてそういった形質を獲得したのでしょう。

 見えている、という時点で完全な透明化ではないのですが、それでも自然界の生存競争においては非常に有用な能力であることに間違いありません。それらの生物がこれまで絶滅しておらず生き残っているのが何よりの証左となっています。


 一つ、可視光線を捻じ曲げて物理的に見えない状況を作る。

 これは流石に普通の動植物には実現しようがありません。しかし魔力を操る人間や魔物、あるいは高度に発達した科学技術にかかれば、そんなことも決して不可能とは言い切れないのです。

 自然界の生存競争における優位性は先述の通りですし、人間同士の戦争や機密情報の偵察にも大いに有効。無論、誰でも簡単に習得できるような技術ではありませんが、苦労して獲得するだけの価値は間違いなくあります。


 そして、オマケに一つ。

 見えているのに見えない、違和感を感じさせないようにする。

 観測者の意識の空隙を縫うように動き、違和感を違和感として認識させない。

 すぐ手元にある文房具が何故だか目に入らず、部屋のあちこちを探し回ったような経験は誰にでも一度や二度はあるのではないでしょうか。

 要は、あの現象を意識的に再現するわけです。

 まだライムがレンリ達と出会ったばかりの頃に似たような技を見せていましたが、実際のところ彼我によほどの実力差がなければああ上手くいくものではありません。

 これは腕っぷしではなく観察力や集中力の問題。

 それに仕掛けを知っていれば効果も半減です。

 恐らく、現在のライムがレンリ達に同じことをやったら、多少見えにくいとは感じるにせよ、目の前にいながら完全に見失うようなことはないでしょう(あくまでフットワークや転移魔法を使わないという前提付きですが)。



「……と、まあ色々あるのですよ」


『へえ、勉強になったの。それで、そこの怪盗の人のはどれなのかしら?』


「そうですね。見えていないのを見た感じだと可視光線への干渉でしょうか。自動的に光が自分を避けて進む的な。あまり完璧にやりすぎると本人からも周囲が見えなくなってしまいますから、そこは何かしらの工夫があるのでしょう。怪盗を自称するだけあって頑張ってますな」


『うんうん、感心ね。まあ我の目を誤魔化せるほどじゃないけど。超音波の“はんきょー”で位置はマルっとお見通しなの。あれ、この場合だと誤魔化されないのは目じゃなくて耳かしら?』



 先程の屋敷を離れてから数分。

 別の屋敷に忍び込んだ怪盗の背後にコスモスとウルが迫りつつありました。


 透明化は完璧に機能しているのですが、なにしろ相手が悪すぎます。

 様々な生物の器官や能力を自在に再現できるウルは、コウモリやイルカのように超音波の反響で物体の位置を把握したり、生きている限り隠しようがない心音や血流の音を聞いたり、ヘビ類のようなピット器官を体内に作って体温を感知したり、視覚に関してもその気になれば紫外線やX線も見ることができるのです。


 捕まえようと思えば、もういつでも捕まえられます。

 それなのにあえて泳がせているのは、彼女達の目的が怪盗の捕縛ではなく、怪盗という称号そのものの奪取にあるからこそ。


 二人は異常に上手い忍び歩きで怪盗の真後ろに近寄ると、



「『わっ!』」


「っ!?」



 ――ドッキリ大成功。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 透明化見破る どこぞの狩りの上手い宇宙戦闘民族を見つけた時みたいに 「いたぞぉぉぉぉぉっ!」 とか言わなくてよかった [気になる点] 光学迷彩みたいな魔法か…… まさか怪盗さんも変…
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