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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
八章『新生勇者伝説』

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それは紛れもなくヤツさ


 てくてく。

 てくてく。

 ユーシャとゴゴは街の南側へと向けて歩きます。



『何か見つかりますかね?』


「うん、きっと何かあるぞ!」



 ユーシャは自信満々ですが、ゴゴは正直半信半疑。

 先程、わざわざ剣形態になったまでは良いものの、それでしたことと言えば地面に放り投げて進む方向を占っただけ。これなら聖剣でなくとも落ちている木の枝か何かで事足りるでしょう。


 そんな適当極まる方針にゴゴが特に反論もせず従っているのには、いくつかの理由があります。捜査そのものについても明確な手掛かりがないのだから、今はまず当てずっぽうだろうと動いてみる他ありません。

 それに事件とは関係のないゴゴの個人的感情も判断に影響しています。

 ようやく出来た自身の使い手と良好な関係を築きたいという打算だとか、あとはやはり身勝手な都合で生み出してしまった相手への負い目だとか。直接、そういった内心を明かすことはないにせよ、そうした心境ゆえゴゴからユーシャへの対応が甘くなる傾向は否定できないでしょう。



『ええと、そこは壁で突き当りですから迂回していきますか』


「うん、分かった!」



 とりあえずの目標を、あるいは方向を定めたとはいえ、野外ならともかく街中は大量の障害物で埋め尽くされています。民家や商店や通行人やその他諸々。その気になればピョンと跳んで屋根から屋根へと直線的に進むこともできるのですが、こうしてあえて迂回路を行くのも捜査の一環です。一応は。


 勇者は方向感覚も優れているのか、何度道を曲がっても最初に決めた方向を見失ったりはしないようです。右へ左へ、前へ後ろへ。

 時に遠回りになってしまいそうな道を選ぶこともありますが、それでもいつの間にやら街の南端近くにまで来ていました。ちょうど鉄道駅のすぐ前。騎士団の本部もここからすぐ近くです。



『街の外に出ても手掛かりは見つからないでしょうし、このあたりが頃合いですかね。帰る前に何か食べる物でも買っていきましょうか』



 結局はただの散歩のようになってしまいました。

 捜査には一切の進展がありませんが、元より始めたばかりでいきなり成果が出るほど簡単なものでもないでしょう。

 それに好奇心旺盛な上に体力があり余っているユーシャを止めないと、このまま大陸の端まで行きかねません。ゴゴはそう考えて迷宮に引き上げることを提案したのですが、その前に見知った顔を見つけました。見つけてしまいました。


 銀色の髪と瞳。

 人間にしては美しすぎて現実味がないほど整った容姿。

 スラっとした長身の美女が、駅舎の屋上で腰に手を当てて牛乳の一気飲みをしています。ゴゴとしては他人のフリをして早く立ち去りたいところでしたが。



「おや? おやおや、そこにいらっしゃるのはゴゴさまではありませんか」



 おっと、残念。

 目が合ってしまいました。 







 ◆◆◆







「はて? 勇者というのは乳がデカい女でないとなれない決まりでもあるのでしょうか。どう思いますか、ゴゴさま?」


 あえて説明するまでもなく、駅から出てきたのは迷宮都市にいるはずのコスモスでした。この台詞は、ユーシャを一目見るなり出てきたものです。



「そうなのか、ゴゴ?」


「どうなんですか、ゴゴさま?」


『いえ、そんなはずは……多分、ないと思いますけど』



 聞かれたゴゴも反応に困ります。

 確かにゴゴが知る勇者二名はどちらも立派なモノを持っていますが、バストサイズが勇者としての資質に影響するかどうかなど考えたこともありません。もし考えたことがあるとすれば、その人物は頭のおかしいド変態です。


 

『そ、そんなことよりっ! コスモスさんは、もう彼女のことはご存知なのですね』


「ええ、それはもう。珍しいゴゴさまのやらかしも含めて女神さまより伺っておりますとも。げらげらげら」


『ええまあ、その件に関しては全面的に我に非があるんですけど……』


「げらげらげら、ぷーくすくす、ひぃーひっひっひ、どぅふふふふふ、ぐへへへへ、ぷぎょぬわひるっぶきょきょきょーっ」


『流石にそこまで笑われるのはちょっと不本意です! というか、最後のほう本当に笑い声ですか!? どうやって発音してるんです、それ!?』



 ユーシャの出生について諸々の暴露をした時も、今から思えばあの場にいた面々は理性的かつ冷静な判断でかなり大目に見てくれていたのだなぁ、と。ゴゴは今更ながらに人間の出来た友人達へと感謝しました。


 

『それで、コスモスさんは何用でこちらに? シモンさんに会いに来たのでしたら、すぐそこの騎士団の建物にいると思いますよ』



 嫌いではなくとも、苦手。

 相性が悪いとでも言うのでしょうか。

 これまで一対一で話した経験はほとんどありませんでしたが、ゴゴはコスモス相手だとどうも調子が狂わされがちになってしまうようです。とはいえ、迷わずシモンを身代わりに捧げようとするあたり、ゴゴもなかなか良い性格をしていますが。



「いえいえ、今回こちらに来たのは個人的なビジネスの関係でして」



 残念ながら。

 あるいは幸いにして。

 今回のコスモスの来訪は友人オモチャを弄ぶことが目的ではないようで。



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― 新着の感想 ―
[良い点] さあコスモス思う存分現場をかき乱すのだ~ [一言] 更新お疲れ様です 犯人捜していたら、災厄な友人を見つけてしまいました もちろんエンカウントしたら逃げることもリセットも出来ません。ある…
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