表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
八章『新生勇者伝説』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

493/1051

わくわく人体実験! 現代では失われた古代魔法について

お待たせしました


 ある日の昼過ぎ。

 ルグとルカは呼び出しを受けて商業区のカフェを訪れました。

 二人で市内を歩いていたところ、レンリから小遣いを貰って伝言を頼まれたという子供達に声をかけられたのです。



「やあ、よく来てくれたね」



 二人が到着した時には既にレンリが待っていました。

 やや大きめのテーブル上には、お茶のポットやサンドイッチや甘味類が所狭しと並んでいます。恐らく、品書きに載っている全部のメニューを頼んでみたのでしょう。



「なあ、レン。俺達、なんで呼ばれたんだ?」


「ははは、まあ話は後でいいだろう。とりあえず、甘い物でもどうだい?」


「う、うん……?」



 ルグが用件を尋ねるも、何故だか答えをはぐらかされてしまいました。

 とはいえ、レンリの奇行はいつものこと。特にこれといった用事もなく暇潰しのための話し相手を求めていたという線もあり得ます。

 少々早めですが、お茶の時間にするのも悪くありません。ルグとルカは席に着き、勧められるがままに目の前に置かれたイチゴケーキにフォークを伸ばして口に運び、



「な、なんだこれ!?」


「甘さ、が……おいしく、ない……」



 そして、甘いケーキには似つかわしくない苦々しい表情を浮かべました。

 いえ、正しくは「甘いケーキ」ではないのですが。

 クリームや砂糖がふんだんに使われているはずのソレからは、一切の甘味が感じられなかったのです。ちなみに、提供した店やケーキ職人の失敗などではありません。



「あっはっは! ごめんごめん、こうも見事に引っ掛かってくれるとは」



 イタズラが成功したレンリはすっかり上機嫌です。



「レン、お前なぁ……で、これはどうやったんだよ?」 


「見た目、は……普通、だよね?」



 ルグはもう一口食べてみましたが、やはり甘味が感じられません。

 即座に吐き出すほどまずいわけでないにせよ、じっとり湿ったパンを齧ったような味と食感。お世辞にも美味しいとは言えないでしょう。



「ははは、それじゃあ種明かしといこう。今度はそのスプーンを舐めてみたまえ」


「スプーン? ……って」


「あ……甘くて、おいしい」



 見た目は何の変哲もない金属製のスプーン。

 しかし、その味は砂糖の塊を舐めているかのような甘さ。



「ケーキの『甘さ』を魔法で引き剥がして、そのスプーンに貼り付けておいたのさ。キミ達が来る直前にね」



 レンリが少し前に迷宮都市で習得してきた概念魔法。それによってケーキから『甘さ』を奪い、代わりにスプーンにその性質を与えたのです。



「へえ……すごい、ねっ」


「ははは。なに、それほどでもあるとも」


「ああ、魔法には詳しくないけどたしかにすごい。多分すごいことなんだろうけど……なあ、レン。俺達、なんで呼ばれたんだ?」



 ここに来てルグは先程と同じ問いをもう一度投げかけました。

 いえ、既に薄々感付いてはいたのですけれど。



「さっきのドッキリが上手く成功したら楽しそうだなぁ、とね。ほら、頑張って覚えた魔法だけど、現時点での習熟度だとあんまり使い道がなくてさ。でも、せっかく覚えたものだし、どうせなら使ってみたいだろ?」



 どうやら、本当にドッキリを仕掛けたい一心で呼び出したようです。

 極めれば幅広く応用でき、聖剣の作成にも用いられるという概念魔法ですが、レンリはまだ基礎となる部分を修めたばかり。

 学都に戻ってからも教わった通りに自主練習をしているようですが、今はまだちょっとしたイタズラくらいにしか使えません。だからこそ、その唯一の使い道で魔法の実践練習をしてみたという具合なのでしょう。



「それにしても、『現代では失われた古代魔法の使い手』なんて、ふふっ、我ながらちょっと格好いいと思わないかい?」


「うん、なんだか……格好いい、ね……すごい」


「いや、肩書きに比べて出来ることがショボすぎないか?」


「こらこら、ルー君や。もっとルカ君を見習って素直に私を褒め称えたまえ。本当のことを言って水を差してはいけない。ぶっちゃけ、諸君の一番大事な仕事は護衛ではなく私をチヤホヤ甘やかして良い気分にすることなのだよ?」


「ぶっちゃけすぎだろ……」



 ともあれ、これでレンリの用事は本当に終わりのようです。

 あとは注文した物を平らげながら、お茶の時間を楽しむのみ。

 味が変わっていたケーキも、レンリが術を解除すると元通りになりました。


 ルグとルカがそれぞれ一人分のお茶とケーキを口にする間に、テーブルの上に満載されていた大量の飲食物は全てレンリの胃袋に収まり、ルグとしては「正直その早食いのほうが魔法よりよっぽど不思議だ」などと考え……そして。



「あっ、そういえば俺も二人に相談したいことがあったんだ。この前、たまたま街でユーシャと会ったんだけど――――」



 そしてテーブルの上にあった物が綺麗に片付いた頃。

 ルグは心に引っ掛かっていたことを思い出しました。



一週間休んだおかげでメンタルもフィジカルも万全近くまで回復しました。

やはり調子悪い時は無理をせず素直に休むのが一番ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ