解明なれど未解決。さすれば選ぶは先送り
なるほど。
どうやら、この女性がルグとルカの子供というのは本当らしい。
そして聖剣の使い手であるというなら、同時に勇者でもあるらしい。少なくとも、その資質は備えているようである。
説明を聞いた皆は、当人の主張通りに納得しました。
しかし、それはイコール心情的な理解をも意味するわけではありません。
「まあ、あれだ。お前は何も悪くない」
「どうした、お父さん? たしかに、わたしは良い子だけど」
「でも、だからって、いきなり『お父さん』はなぁ……」
「う、うん……心の、準備が……」
経緯を考えれば、自称娘の彼女に一切の責任はありません。
責を問うとすればゴゴと、あとは精々、立場上恐らくこの件を知っていただろうに面倒事が起きるより前に立ち去った神様くらいのものでしょうか。よくよく考えれば、列車の時間が……という退席の口実も怪しいものがあります。
とはいえ、責任を問うといっても何をどうすれば良いのやら?
形はどうあれ一度生まれた命を、まさか闇に葬るわけにもいきません。ゴゴが関係者に対して金銭での慰謝料を支払ったりするのも、いささか的外れというものでしょう。
問題の解明は済んだのに、一切解決はしていない。
そもそも、どこが問題のゴールかも分かりません。
発端のゴゴが早々に責任を認めて謝罪しているにも関わらず、困ったことに責任の取りよう、取らせようがないのです。
加えて、本質的な責任とは別に、当面の生活をどうするかという問題もあります。いくら強靭なフィジカルとメンタルを備えているにせよ、生後一日のある意味赤ん坊のような人物に、野晒し雨晒しの生活をさせるわけにはいきません。
「住む場所? わたしは、お父さんの家に一緒でもいいぞ?」
「それは却下だ。俺の部屋は、ほら、狭いから」
「うん……それは……だ、ダメ……」
「そうか、まあ狭いなら仕方ないな」
いくら親子とはいえ、見た目二十歳ほどの女性をルグの部屋に泊めるのは色々と問題があります。込み入った事情を考えると、ご近所さんに釈明することもできません。
また、ルカの家に住む案も却下。
こちらは部屋は余っているものの、口下手なルカが家族を上手く誤魔化せるとは思えません。下手をすれば、そこから迷宮や神様関係の秘密までバレてしまう恐れがあります。秘密が漏れたから即どうなるという話ではありませんが、あえて無用のリスクを抱えにいく必要もないでしょう。
「とりあえず、ゴゴ。そいつの衣食住に関しては責任持って面倒見てやれよ」
『ええ、それはもちろん』
これについては、ルグに言われるまでもなくゴゴも元々そのつもりだったようです。ゴゴに任せるということは当面の住処は迷宮ということになりますが、迷宮住まいに関してはライムという先駆者もいますし、守護者であれば内部の構造や魔物の発生に関してもコントロール可能。少なくとも衣食住の住についての不自由はしないはずです。
ゴゴは趣味の食べ歩きに使うための金銭も溜め込んでいるようですし(自分の迷宮内に発生した宝箱の中身をたまに街で換金しているのです)、お金さえあれば衣と食についても大体なんとかなることでしょう。
問題の解決とはいかないまでも先送りには成功し、もう日も暮れていたこともあって、本日はここでお開きということになりました。
「じゃあ、お父さん。お母さんも。また明日な」
「あ、ああ、またな」
「ま……また、ね」
小さな子供のようにゴゴに手を引かれ、ブンブンと大きく手を振って去っていく「娘」の姿を、ルグとルカは大層疲れた面持ちで見送るのでありました。
◆新しい宣伝ツール?とかいうのを入れてみました。
多分これでちゃんと表示されてるはず。
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