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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
八章『新生勇者伝説』

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刻み込め、勇者のソウル! さようなら、倫理


「いいかい? クローンっていうのはだね、かくかくしかじか……」


 もちろん、ルグやルカはクローンがどうのこうのと言われても、意味がさっぱり分かりません。なので、急遽レンリ先生による簡単な講義が始まりました。天下の往来でするようなことではありませんが。


 本来であればレンリが説明できることもおかしいのですが、以前地球を訪れた際に購入した書籍から学んだのでしょう。今回の主題であるクローン技術についてはレンリも大雑把な概要くらいしか把握していませんが、日本語の学習や書物の解読については順調に進んでいるようです。

 また科学技術由来のクローンとは違いますが、この世界にも錬金術によるホムンクルスや簡易的な使い魔を生成する魔法など、見方によっては近しい分野の技術もないではありません。そういった取っ掛かりもあって、説明を受けた皆もゴゴが何をしたのか大まかに理解することができました。



「ゴゴちゃん……か、勝手に、ルグくんとの……こ、子供とかっ……そういうの、良くないと、思いますっ」


「そうだぞ、ゴゴ。せめて始める前に俺達に一言断りをだな……いや、言えば良いってものでもないけど。言ってたら絶対止めたけど」


『はい、おっしゃる通りです。返す言葉もありません……』



 先程の説明、というか自白でも言っていましたが、ゴゴも途中から冷静さを取り戻してはいたのでしょう。ただ、その時点で計画が後戻りのできないところまで、具体的には、すでに一個の生命として成立する段階まで来ていたのです。かなり手遅れ気味ではありますが、常識や良識を取り戻したゴゴとしては廃棄することも憚られました。


 それに倫理面にさえ目を瞑れば、計画のコンセプト自体は完全に間違っているとも言えないのです。ルカの肉体的才能とルグの精神性を兼ね備えた人間が誕生すれば、その上で聖剣本来の能力で更なる強化や技術面の補正を施せば凄まじい戦士となることでしょう。

 元々、肉体的には常人のそれでしかなかった異世界の少女が、聖剣の使い手として選ばれた途端に勇者の名に相応しい力量を持つほどに聖剣の強化能力は大きいのです。ならば最初から強い人間が聖剣を持てばもっと強くなる、かもしれない。


 とはいえ、聖剣は誰にでも扱える物ではないのです。

 強力な能力以上に、極端に使い手を選ぶピーキーな性質も有しています。

 鍵穴にピッタリの鍵がなければ扉を開けないように、聖剣と相性ピッタリの相手、具体的には魂の形状が噛み合う人物でなければいけません。



『まあ、それについては裏技がないこともないんですけどね。我々の妹の一人に魂への干渉を得意とする子がいまして』



 鍵を失くした際に新たな合鍵を作るように、魂の性質を直接弄ってしまえば、聖剣を使えるようになる。まあもっとも、その方法も誰にでも同じようにできるわけではありませんが。



『生まれたての赤ん坊ならともかく、個としての人格を確立した後の魂に干渉したら、心身にどんな不具合が起こるか分かりませんから。逆に言えば、赤ん坊同然の無垢な魂であれば融通が利くのですけど』



 レンリ達はまだ会ったことがありませんが、そうした魂に関する能力を持つ迷宮がいるのだとか。この計画の初期段階でゴゴはその妹の協力を受け、望むような肉体・精神・魂を併せ持つ人間を生み出したというわけです。


 もっとも、そういった裏技を駆使してさえ楽な道程ではありませんでしたが。



『いや、なかなか大変でしたよ。ほら、同じ両親から生まれた兄弟姉妹でも個性は様々ですし。最高の結果を引き当てるまで何度もシミュレートして』



 たとえば理想と真逆で、ルカの気弱な精神とルグの平均以下の体格を併せ持つ子供が生まれる可能性もあったわけです。あるいは、両親のどちらとも大して似ていない子供が生まれる可能性もありました。

 二人の遺伝情報を掛け合わせた際の可能性を迷宮本体の演算能力で何億回もシミュレートして、最高のフィジカルとメンタルを兼ね備えた個体を選別。その上で聖剣を扱えるよう魂の形質に干渉。肉体年齢の全盛期までの成長促進及び固定。迷宮本体にデータとして記録された多種多様な知識や戦闘経験も刻み込み……。



「そうして出来上がったのが、わたし、らしいぞ?」


『はい、そういう次第でして。ええとですね、そのつまり……ごめんなさい』



 結果、スペックだけはやたら高いくせに世間知らずな、「ルグとルカの子供」や「勇者」を自称する怪人物が誕生することになったわけです。


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